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精神科の待合室で、私は世の中を少し知った
アルツハイマー型認知症の母を介護していた頃、私は精神科の待合室で長い時間をすごした。
病院独特の消毒液の匂いが漂い、テレビの音が小さく流れている。
診察を待つ人たちは、それぞれの時間を過ごしていた。
待合室の長椅子でいびきをかいて寝ている人。
窓口でお小遣いを受け取っている入院患者さん。
診察室のドアが開くなり、先生に「や、ひさしぶり」と第一声を発する人。
診察中、一方的に話をする人。
声が大きいので待合室まで聞こえる。
私はその光景を眺めながら、どこか不思議な気持ちで座っていた。
それまでの私は、風邪をひいた時や歯医者に行く時くらいしか病院に縁がなかった。
母の付き添いがなければ、こういう世界があるのを知らずにいたと思う。
窓から差し込む光の中で、私はぼんやりと考えていた。
世の中には本当にいろいろな人がいる。
元気に働ける人もいる。
多少の無理なら乗り越えられる人もいる。
その一方で、朝起きることさえ難しい人もいる。
人と話すことに大きな力を使う人もいる。
それは考えてみれば当たり前のことなのだが、
私はその待合室で少しずつ実感として知っていった。
母は私の隣で静かに座っている。
目の前の光景を母はどのように受け止めているのか心配になった。
私はその横顔を見ながら思う。
世の中は、強い人だけでできているわけではないのだ、と。
だからこそ、
少し疲れた人や弱った人が、
肩の力を抜いて過ごせる場所がもっとあってもいい。
頑張れない日があってもいいと思える場所が、
もう少し増えてほしい。
あの待合室で過ごした時間を思い出すたびに、
そんなことを静かに考える。
精神科の待合室で、私は世の中を少し知った
毎日note連続投稿2608日目
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※優谷美和さんの画像をお借りしました。
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