手を合わせる時、心に浮かぶもの
仏壇の前に座り、鉦を三つ鳴らす。
リーンと澄んだ音が部屋の隅々まで広がり、静けさを深めていく。
その音に包まれながら手を合わせると、不思議と昔のことが浮かんでくる。
懐かしい顔、声、仕草。共に過ごした人たちのぬくもりが、心の奥にそっとよみがえってくるのだ。
私は跡取りとして、弟、父、独り身の伯母、母、そして夫を見送ってきた。
弟だけは病室の白い光の中で闘病生活を送ったが、他の人たちはまるで風が止むように、突然、旅立っていった。
その時の空気は、不思議なほど静かで、時計の針の音だけが胸に刺さるように響いていた。
「その時」は、前触れもなく訪れるものなのだ。
人はいつか、この世を去る。
その瞬間、私は何を思うのだろうか。
「あれもこれもやっておけばよかった」
「仕事ばかりせず、もっと家庭を大事にすればよかった」
「夫にもっと優しくすればよかった」
「行きたいところへ、みんなで行っておけばよかった」
そんな後悔が胸を締めつけるのだろうか。
それとも、夕暮れの川面のように静かな気持ちで、
「良い人生だった」と、そっと心に浮かべられるのだろうか。
死に際の後悔や満足によって、天国や地獄のカードが渡されるのか。
あるいは、生まれた時からすでにそのカードは用意されているのか。
そんな問いがふと頭をよぎり、時に苦く、時に可笑しくも思えてくる。
これまで私は、多くの経験をしてきた。
小さな成功を積み重ねてきたが、その何倍も失敗をし、やり直したい後悔も数えきれないほどある。
それでも、振り返ればどれもが私の人生であり、ひとつひとつが宝物のように輝いて見える。
まるで、雨に濡れた石ころが夕陽を受けて虹色にきらめくように。
それでも、命の終わりの瞬間に、私はやはり後悔するのだろうか。
たった一度きりの「その時」。
私はどんな「瞬間」を迎えるのだろうか。
願わくば、誰かの手のぬくもりを感じながら旅立ちたい。
その温かさに包まれるだけで、心はきっとやわらかくほどけていくかもしれないから。
そして最後に、微笑んで
「ありがとう」と言えたなら、それだけで十分なのだ。
手を合わせる時、心に浮かぶもの
毎日note連続投稿2340日目!
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※優谷美和さんの画像をお借りしました。
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