120. ワールドカップ中継の「予選リーグ」に引っかかる

サッカーワールドカップのテレビ中継を見ていて、試合内容とは別のところで少し引っかかることがあります。

それは、日本のテレビ中継で使われる言葉です。どのチームが強いとか、日本代表がどう戦うべきかという話ではなく、実況や画面表示で出てくる言葉の話です。

サッカーを見ていると、試合そのものだけでなく、それをどう伝えるかにも、その国の文化や昔からの名残が出るのだと思います。今回のワールドカップを見ながら、改めてそんなことを考えていました。

「予選リーグ」という言葉への違和感

以前からどうにも引っかかる言葉があります。

それが「予選リーグ」です。

今は以前ほど聞かなくなったかもしれませんが、日本のマスコミでは昔、ワールドカップ本大会のグループでの戦いを「予選リーグ」と呼ぶことがありました。

もちろん、意味は分かります。本大会の中で、次のステージに進むためのリーグ戦。つまり、決勝トーナメントに進むための予選という意味なのでしょう。その理屈は理解できます。

ただ、サッカーを見ている側の感覚としては、やはり少し引っかかります。

なぜなら、予選はもう終わっているからです。

日本代表はアジア予選を戦い、そこを勝ち抜いて、ワールドカップ本大会に出場しています。そこまで来ているのに、本大会に入ってからまた「予選リーグ」と呼ばれると、「いや、どっちの予選なんだ」と思ってしまうのです。

ワールドカップに出るための予選と、本大会の中で行われるグループの戦いは、分けて考えたいところです。

予選を突破して、本大会に出る。そして本大会では、グループステージを戦う。この方が、言葉としてはすっきりします。

「予選リーグ」と言われると、本大会に来ているのに、まだ予選をやっているように聞こえてしまう。そこが、どうにも気持ち悪いのです。

「一次リーグ」と言われると、二次リーグを探してしまう

似たような違和感として、「一次リーグ」という言い方もあります。

これも日本のテレビ中継では、今でも耳にすることがあります。本大会の最初の段階、各グループで戦うところを指しているのだということは分かります。

ただ、「一次リーグ」と言われると、どうしても「では二次リーグがあるのか」と思ってしまいます。

昔のワールドカップには、一次リーグ、二次リーグという形式の大会もありました。だから、その時代の表現としては自然だったのだと思います。

でも、今のワールドカップはそういう形ではありません。最初にグループごとの試合があり、そのあと勝ち残り方式のステージに入っていきます。一次リーグのあとに二次リーグがあるわけではありません。

そう考えると、「一次リーグ」という言葉も、今の大会形式そのものを表しているというより、昔から残っている中継用語のように感じます。

私はもともと、チャンピオンズリーグなどを見ている感覚もあって、「グループリーグ」という言い方がしっくり来ていました。グループに分かれて、リーグ戦形式で戦う。だからグループリーグ。日本語としても分かりやすいですし、サッカーを見ている人にはかなり馴染みのある言葉だと思います。

ただ、改めて確認してみると、FIFA公式の英語表現では「Group Stage」、つまり「グループステージ」が基本です。

そして、そのあとに続く段階も、日本語ではよく「決勝トーナメント」と言いますが、公式表現としては「Knockout Stage」、つまり「ノックアウトステージ」です。

これを知ると、自分の中の言葉も少し整理されました。

日本語として馴染みがあるのは、グループリーグ。でも、公式に近い表現としては、グループステージ。そして、その後はトーナメントというより、ノックアウトステージ。

こう考えると、「予選リーグ」や「一次リーグ」という言葉は、意味は通じるけれど、今の大会形式を正確に表す言葉としては少しズレているように感じます。

「後半22分」は分かるけど、頭の中では67分に変換している

もう一つ、日本の中継で気になる表現があります。

それが試合時間の表記です。

地上波中継では、「前半20分」とか「後半22分」という言い方をします。これはもちろん間違いではありません。サッカーは前半45分、後半45分で行われるので、前半何分、後半何分という表現は普通に成り立ちます。

普段サッカーを見ない人にとっては、その方が分かりやすいのかもしれません。今が前半なのか後半なのか、試合のどのあたりなのかを直感的に伝えるという意味では、前後半表記は親切です。

ただ、サッカーを見慣れてくると、私は90分通算表記の方がしっくり来ます。

海外の記事や公式記録では、得点時間はだいたい、12分、45+2分、67分、90+5分というように、試合開始からの通算時間で表されます。

例えば、日本の中継で「後半22分」と言われたとします。意味は分かります。でも私の頭の中では、すぐに変換が始まります。

後半22分ということは、45分に22分を足して、67分か。

試合を見ながら、ちょっとした暗算をしているわけです。

サッカー観戦に、地味な計算問題を混ぜてこないでほしい。そんなことを思ってしまいます。

もちろん、これも日本のテレビ中継なりの分かりやすさなのだと思います。ワールドカップのときだけサッカーを見る人も多いでしょう。そういう人にとっては、「67分」と表示されるより、「後半22分」と出る方が分かりやすいのかもしれません。

だから、テレビ局が間違っているという話ではありません。むしろ、日本の視聴者に向けて分かりやすく伝えようとしてきた結果なのだと思います。

ただ、ワールドカップという国際大会を見ていると、そこに少しズレを感じるのです。

日本の中継文化と、世界標準のあいだ

公式に近い表現では、グループステージ。その次はノックアウトステージ。試合時間は90分通算で記録される。

でも日本の中継では、予選リーグ、一次リーグ、後半22分。

どれも意味は通じます。ただ、世界標準のサッカーの言葉づかいとは、少し違う。そこに、私の中で小さな違和感が生まれます。

これはたぶん、サッカーそのものの話というより、日本の中継文化の話なのだと思います。

日本のテレビ中継には、日本のテレビ中継らしい親切さがあります。サッカーを普段見ない人にも分かるようにする。専門用語に寄せすぎない。前半、後半という言葉で試合の流れを伝える。それは大事なことです。

一方で、サッカーを見る側の感覚も変わってきています。

海外サッカーを見る機会も増えました。チャンピオンズリーグを見る人も増えました。FIFAや海外メディアの表現に触れることも増えました。

そうなると、昔からの日本語表現に、少しずつ引っかかるようになるのだと思います。

昔は、私もそこまで気にしていなかったかもしれません。予選リーグでも、一次リーグでも、普通に聞き流していたと思います。

でも今は引っかかる。

それは、サッカーの見方が変わったというより、自分の中の言葉の解像度が少し上がったということなのかもしれません。

言葉が変わると、見え方も変わる

たかが言葉です。

でも、言葉が変わると、見え方も少し変わります。

「予選リーグ」と言うと、本大会なのにまだ予選をしているように聞こえます。「グループステージ」と言うと、大会の最初の段階を戦っている感じになります。

「決勝トーナメント」と言うと、日本のスポーツ中継らしい響きになります。「ノックアウトステージ」と言うと、負けたら終わりの国際大会らしい緊張感が出ます。

言葉の選び方だけで、見えている大会の形が少し変わるのです。

ワールドカップを見ていると、試合そのものだけでなく、こういう中継の言葉にも時代の名残があるのだと感じます。

サッカーは世界中で同じルールで行われているはずなのに、それをどう伝えるかには、その国の文化が出ます。

日本の中継には、日本の中継らしい分かりやすさがある。でも、サッカーを長く見ている側からすると、そこに少し古さやズレも感じる。

ワールドカップは、試合だけでなく、言葉の違和感まで楽しめる。

そんなことを思いながら、今日もテレビの前でサッカーを見ています。


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