【禍話リライト】死んだ人の押し入れ
地方色が見える話は別の怖さがある。
これは、数え歌の片鱗が見える話。
※いじめの表現が出てきますので、苦手、不快な方へはお勧めしません。
【死んだ人の押し入れ】
現在50代のAさんは、若いころ内臓の疾患で、体育の授業などは見学していた。それが目立ったのか、中学校の頃いじめられていたのだという。
そんな中、クラスの素行の悪いグループから、「お前は付きあいが悪いから、夜にちょっと付きあえ」と呼び出されたのだという。内心『カツアゲにでも遭うのではないか』と思うものの、断ることはできなかった。
指定された場所に行くと、メンバーの一人の兄らしき人が、車を出して待っており、無理矢理宣言された。
「〇〇廃屋へ行くぞ」
町内のはずれにある、有名な心霊スポットだった。
老夫婦が住んでいたが、老婆がなくなった後、一人暮らしの老爺の家の使っていない和室に全然知らない人が忍び込んで、押し入れの中で自分で命を絶ったーーとまことしやかにささやかれている場所だった。
老爺はほどなくして施設に引き取られ、住人を亡くした家の裏口が開いていて入ることができるのだという。
そのまま、廃屋になだれ込んだ。ドライバーのお兄さん以外に無理やり連れられてきた形だ。ただ、家の中の部屋はすべて和室で押し入れがある。正直どの部屋がお目当ての部屋なのかは分からない。
「この部屋だ!」
おそらく確証はないまま、それらしき部屋に連れていかれた。肝試しに付き合わされているのかと思っていたら、「押し入れに入れ」と言われた。正直、上の段か下の段なのかも分からないまま、下の段に無理矢理押し込められた。
ただでさえ暗い家の中、押し入れの中は漆黒の闇だ。正直、自分の手がどこにあるのかもわからない。パニックに陥りながらAさんが叫ぶ。
「開けて! 開けて!」
障子に手をかけて力を入れるも、その辺りにあった枝切れをつっかえ棒にしているのか、まったく動かない。
外からは皆がゲラゲラと笑う声が聞こえる。
「やめて。怖い怖い怖い!」
「お化けが出てくるまでは開けねぇよ」
グループの中の一人が言い放つ。冷静に考えると、おかしな言いがかりだが、怖がっている様子が面白かったのだろう。
ただ、真っ暗すぎてそうしたものが出てきても不思議ではない気分にさせられる。
大声で叫ぶも、外からは笑い声が聞こえるばかり。また、誰かがつっかえ棒を押さえているのだろう、木と紙でできているはずの障子戸も全く動かない。
「開けてよ!」
「まだだ、そろそろお化けが出たか?」
後に考えれば、古い木と紙なのだから、体当たりするなり破るなりすれば出れたのだろうが、あまりの恐怖にそんな判断力もない。
「やめて! やめてよ!」
すると、自分たちを笑っている4人の後ろくらいから声がした。
「せっせっせー」
子どもの声だ。男の子か女の子かは判然としない。
数え歌か何かの冒頭だ。
もう一人別の人が居たのか。しかし、そうだとしても、後ろから別の人が来たとしたら、何らかの反応があってしかるべきなのだが、それが全くない。それどころか、その声が聞こえた後、まったくの無音だ。
「ちょっと、ねぇ! 面白くないよ!」
先ほどまでの笑い声もしない。外に出たら驚かされるのかとも思ったが、ここまでネタバレしていては、驚かしようもないだろう。
そうして頑張っていたら、つっかえ棒が外れて襖があいた。
目の前には、自分をいじめていた4人が耳をふさいでしゃがみこんでいる。
「何これ!?」
周りを見渡すも、知らない人も、先ほどの声の主である子どもも見当たらない。廊下などは、もうボロボロだから音を立てずにここを去るのは不可能に近い。
部屋には何もおかしいものはいないのに、皆耳に手を当て、目をつぶってしゃがみこんでいる。三猿でいうと、「聞かザル」の状態だ。
「ちょっとちょっと」と揺さぶったり、叩いたり、しまいには蹴ったりもしたのだが、どうにも反応がない。
どうしようもなくて、Aさん一人で車に向かう。
運転席に残っていたお兄さんに、驚きながらも「他の連中は?」と聞かれた。
「中で、顔を上げてくれないです」
屋内に戻るのは嫌なので、Aさんが助手席で待っていると、廃屋の中に入ったお兄さんが皆を連れて戻ってきた。皆、必死で耳を押さえており、中には「あ~~」と声を出している人もいる。周りで物音などしないにもかかわらず。
結局ドライバーのお兄さんが一番年長なので、無理矢理車に詰め込み、家に送ってもらうことになった。道中、再度状況を問われたのでAさんが答えた。
「みんなでふざけていたら、子どものものと思われるような声がして」
「えー!」
「信じないと思いますけど」
「いや、違う違う」
お兄さんによると、待っている間あまりに暇なので、廃屋の近くまで行ってみたのだそうだ。すると、一人だけ飛びぬけてはしゃいでいる声がする。近くにも家があるので、あまりにテンションの高い声を出すとクレームが入りかねない。『あんまりはしゃぐのやめろよ』と思っていると、どうも声の主は、他の4人とは別の場所をぐるぐる回っているような様子だったという。
『誰だアイツは』と思う。声の様子からすると、かなり年下だ。『そんな奴いたかな』と気にはなったものの、確かめに入るほどの度胸はなかった。
「じゃぁ声の主は、それと同じ奴だ」
ドライバーのお兄さんの言葉に、「うわ、怖い」とAさんは悲鳴を上げた。
車内の他の連中は、耳を押さえて青ざめているばかりなので、車内が無音になる。すると、お兄さんがボソっと続けた。
「噂の一つに、押し入れで自殺したのは子どもだったというのがあったんだけど、確率的には低いだろうと言われてきてたんだ。こうなってくると、死んだのは子どもだったのかなって」
結局そのまま家まで送ってもらった。
翌日からどうなるのか、かなり不安な夜を過ごしたのだという。
はたして、翌日からいじめはなくなった。
同じグループではつるんでいるものの、目に余るような暴力や悪さはしなくなった。それどころか、比較的甘い先生の授業中の私語もしなくなったという。
先生たちにとってはいいことなので、「あの子たち急に、おとなしくなったわね」と噂されるほどだった。
中には放課後に図書館に集まるようになったことから、真面目に進学を考え始めたのではないかということに落ち着いた。
ただ、クラスの委員長がこの説に異を唱えた。
「いや私、図書館で一緒になったんだけど、変な事やってたよ。近くの席だったから聞こえてきたの。『この数え歌、地域によって正解が違う』って話してた。変なことにハマってるんじゃない?」
一人だけ意味が分かったAさんは、ゾッとしたそうだ。
その後、興味があってAさんは数え歌について調べたそうなのだが、結局聞いた数え歌の詳細までは分からなかったそうだ。「せっせっせーのよいよいよい」の伝承が地域や世代について細かく異なるといったことについてはかなり詳しくなったそうだが。
〈了〉
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出典
禍話フロムビヨンド 第22夜(2024年12月14日配信)
41:00〜
※FEAR飯による著作権フリー&無料配信の怖い話ツイキャス「禍話」にて上記日時に配信されたものを、リライトしたものです。
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