「ねぇちゃんも一緒だよ」から始まった話|知識ゼロの家族だったわたしが、福祉の支援員になるまで~うるてぃの、隣で考える話②~
小さな町の心療内科の、広いような狭いような、よくわからない診察室の中で、「適応障害ですね」と言われました。頭が真っ白になって、これからどうなるんだろうって、正直かなり怖かったんですよね。
その日の夜、同居していた姉に背中をさすってもらいながら、こう言ってもらいました。
「ねぇちゃんも一緒だよ。大丈夫だよ。」
正直に言うと、うすうす気づいてはいたんです。姉が何かを抱えているんだろうな、って。でも、なんだか怖くて、ちゃんと知ろうとしてこなかったんですよね。家族なのに、なんとなく「たまに体調を崩す人」くらいの認識で止めてしまっていて。
でも、あの一言がきっかけで、わたしは初めて姉のことをちゃんと知ろうとし始めました。それが、今の仕事につながっていくとは、当時は思ってもいませんでした。
「パニック障害=運転できない」の誤解。診断名だけでは見えなかったリアル
姉の障害を知ろうとして、まず出てきたのが「パニック障害」という診断名でした。でも、正直それだけ聞いても、生活の中で何がどう困るのか、全然イメージが湧かなかったんですよね。
そんな中知ったのが、姉が車の免許を取れないという話でした。医師から「取得は難しい」と言われているらしくて。てっきり、パニック障害だと法律で免許自体がもらえないのかと思っていたんです。
でも調べてみると、そうではありませんでした。
道路交通法で「免許の取得時に申告しなければいけない病気」として決められているのは、てんかんや統合失調症、躁うつ病などで、パニック障害はそこには入っていないんですよね(出典:警視庁)。
じゃあなんで、という話なんですが、理由は診断名そのものではなく、飲んでいる「薬」の方にあったんです。
抗不安薬や抗うつ薬には「自動車の運転など、危険を伴う機械の操作をさせないこと」という注意書きがついていることが多くて、そこを踏まえて医師が「運転は控えたほうがいい」と判断することがあるみたいです。
診断名がついたら、それで全部説明がつくと思っていたんですよね。でも実際は、診断名の向こう側に、薬のこと、生活の制限のこと、法律の細かい仕組みのことが、いくつも重なっていました。
【ここからの気づき】
診断名はあくまで「ラベル」に過ぎないんだな、と。本当に向き合うべきなのは、その向こう側にある「日常の些細な生きづらさや制度の壁」なんだと、このとき初めて知りました。
姉は、「免許、取れないんだよね。頼ってばっかりでごめんね」と言っていました。責任感が強くて、優しい人なんですよね、昔から。
「障害福祉サービス」という言葉を、わたしはそのとき初めて知った
姉のことを知ろうとしていたころ、わたし自身も適応障害の診断を受けていました。
初めてお世話になった心療内科の先生は、診察時間の中であまり多くを話してくれるタイプではなくて、「こういう制度がありますよ」と教えてくれることもありませんでした。だから、精神障害や利用できる支援について知りたいことは、ほとんど自分でインターネットを使って調べるしかなかったんですよね。
そうやって調べていくなかで出会ったのが、「障害福祉サービス」という言葉でした。
恥ずかしながら、それまで自分の生活とは無関係な言葉だと思っていたんです。障害というと、もっと遠くにある誰かの話だと、どこかで線を引いていたのかもしれません。
でも調べていくと、姉が利用していたのは「B型」と呼ばれる就労継続支援事業所で、そこからステップアップして今は「A型」という形で働いていること。そこに至るまでにいろんな支援や制度が関わっていたことを、少しずつ知っていきました。
もともと一般就労で働いていた経験もある姉が、そうやって形を変えながら、今も働き続けていることを知ったとき、素直に嬉しかったんですよね。
同時に、「なんでこの制度のこと、もっと早く知らなかったんだろう」とも思いました。制度って、向こうから歩み寄ってきてはくれないんですよね。“知っている人だけが助かる仕組み”になっているのかもしれない、という現実を知って、正直、少しぞっとしたのを覚えています。
支援員になった今のわたしが、あの頃の自分に思うこと
今、わたしは就労移行支援事業所で、支援員として働いています。制度のことを説明したり、就職活動のサポートをするのが、日々の仕事です。
姉のことがきっかけで福祉サービスという存在を知ったわたしが、まさか自分がその制度を説明する側になるとは、正直思っていませんでした。
でも、支援員になったからといって、あのころの戸惑いがきれいに消えたわけではないんですよね。
制度の名前や仕組みは、仕事を通じてたくさん覚えました。
でも「知らなかったことが、実はすごく多かった」というあの心細さそのものは、今も自分の中に残っています。
姉が「頼ってばっかりでごめんね」と言ったとき、わたしはうまく返事ができませんでした。今の仕事をしていても、あの時なんて言えばよかったのか、正直まだわからないままです。
支援する側になったからといって、全部がわかるようになるわけじゃないんですよね。でもだからこそ、「何も知らなくて不安な人」の気持ちに、少しは寄り添えるんじゃないかな、と思ってます。
同じように、何も知らないところから始めているあなたへ
日本には、精神障害のある人が約615万人いると言われています。国民のおよそ9.2%が、何らかの障害を持っている計算になるそうです(出典:内閣府)。
この数字を知ったとき、姉とわたしの話は、決して特別な話ではなかったんだな、と思いました。
同じように、自分や家族の不調をきっかけに、制度のことを何も知らないまま途方に暮れながら調べ始めている人が、きっとどこかにいるはずなんですよね。
でも、ネットの比較記事や役所のパンフレットをどれだけ読んでも、頭の中がごちゃごちゃになって「結局、わたし/わたしの家族にはどれが合うの?」とモヤモヤしていませんか。
「A型は雇用契約あり、B型はなし」という一般的な表向きの説明は載っていても、体力や生活リズム、離職理由、対人面の得意不得意といった「自分自身のリアルな状況」とどう照らし合わせればいいのかは、誰も教えてくれなかったりします。
かつて適応障害で休職して、退職して、アルバイトを転々として迷っていた過去のわたし。
そして今、支援員として面談の現場でお一人おひとりの悩みに向き合っている現在のわたし。
その両方の視点があるからこそ、制度の表面的な説明ではなく「現場で実際に行われている判断の組み立て方」を、ちゃんと言葉にしてみたいと思ったんです。
一人で悩み、遠回りしないために
暗闇の中で一人で調べている人が、これ以上遠回りせずに「自分に合う一歩」を選べたらいいなと思って、支援員目線での実践ガイドをまとめてみました。今のあなたの状況に合わせて、気になるものから見てもらえたらと思います。
【ガイド①】まずは「どれが自分に合うか」を迷わず選びたい方へ
パンフレットを何冊読んでも分からなかった「選び方の軸」を整理してみました。
就労移行・A型・B型を分ける本当の基準(雇用契約や就職率などの数字の裏側)や、見学期限・利用期限の落とし穴まで、できるだけ言葉にしています。スマホのメモ帳で今すぐ使える「3つの自己分析ワーク」と、見学時にそのまま見せられる「質問・確認チェックリスト」もまとめてあります。

【ガイド②】サービスは決まったけれど、手続き手順がわからない」という方へ
障害福祉サービスを利用するために避けて通れないのが「受給者証」の取得なんですよね。
ただ、手続きの流れは自治体窓口でしか聞けないことが多くて、情報も断片的なので、「体力が残っていない中で何から手をつければいいのか分からない」と止まってしまいがちだったりします。そんな方向けに、取得までの通しの手順と注意点を、なるべくわかりやすく解説してみるつもりです。(近日公開予定です)
【有料記事②】※後日公開予定です。
障害福祉サービスの受給者証を取得するまでの手順
選んだ場所が、ずっと正解じゃなくてもいいと思ってます。体調に合わせて、少しずつ調整していけばいいんじゃないかなと。
まずは「今の自分にとって、無理のない一歩」を見つけるところから、一緒に始めていきましょう。
