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子連れワンオペ・サバティカル(1)計画の始まり

※この記事を書いている時点で、サバティカルで海外に来てすでに一か月近くが経っていますが、1年前に遡ったところから記事を書いていきます。


サバティカルを申請しようと思うまで

大学教員にはサバティカルという制度がある。大学教員にはなじみのある言葉だが、世間的にはあまり知られていないかもしれない。高卒の両親に話したときも、きょとんとしていた。

サバティカル。大学教員が授業や学内業務を免除される期間のことだ。

「仕事をしないで給料だけもらうのか」

うちの親はこんなかんじの反応だったけれど、仕事をしないわけではない。大学教員の仕事は授業・学内業務・研究の三つから成っていて、このうち研究だけに専念する期間がサバティカルだ。大学教員は研究者でもあるので、研究に集中する期間をときどきとることで、研究者として先端に居続けられるようにするというわけだ。私の勤める大学では、正式な制度名は「特別研究期間」という。

冒頭で「大学教員にはサバティカルという制度がある」と書いたが、実際にはどの大学にもあるというわけではない。私の勤める大学にはある。でも、サバティカル制度を設けていない大学も結構ある。妻もまた大学教員なのだが、妻が昨年まで勤めていた大学には、サバティカルの制度はなかった。

サバティカルの制度を持つ大学において、教員は何年か(あるいは何十年か? ――これは大学による)に一度、サバティカルをとるチャンスがある。期間は半年だったり一年だったりする。その間に、所属する大学から離れて国内外の他の大学・研究機関に身をおく人もいれば、どこにも行かず普段の場所で研究に専念する人もいる。

私は今の大学にきて十年以上が経っていて、サバティカルを申請する資格はだいぶ前からあったはずだが、申請しないでいた。それは、妻と同時にサバティカルをとる機会をうかがってたからだ。上にも書いたように、妻のいた大学にはサバティカルの制度はなかったのだが、妻は大学をうつることを考えていた。

あちこちの大学に何年も応募し続けて、ようやく妻が大学をうつることができたのは、2024年春のことだった。そして、うつってみてわかったのは、その大学にはサバティカル制度があること、ただし取得できるのはだいぶ先になりそうだということだった。それならば、夫婦で同時期にサバティカルをとることは諦めて、私だけサバティカルをとろう・・・そう夫婦で話し合った。

どこに行くか

上にも書いたように、サバティカルをとったとして、どこに身をおくかについては、いくつかの選択肢がある。どこにも行かず普段の場所で研究に専念するか、どこか別のところに行くか。

それぞれにメリットデメリットがある。普段とは異なる場所に滞在すれば、視野やネットワークを広げることができるかもしれない。一方で、慣れない土地では落ち着くまでに時間がかかるだろう。そういうことは理解しつつ、私としてはどこか別のところ、特に海外に行きたかった。ポスドクの頃にも海外(韓国とスコットランド)にいたことがあり、その経験はその後に生かされていると感じていたので、今回もまたどこか海外での経験がしたかったのだ。(もちろん、海外で苦労もたくさんしたけれど。)

私の専門は主として韓国語なので、海外というと順当にいけば韓国だ。専門面だけではなく、プライベートな面でも韓国とは結びつきが強い。なにしろ韓国は妻の故郷であり、妻の家族・親戚が住んでいる土地なのだ。私自身、大学院時代とポスドク時代に、韓国に住んだことがある。

ただ、今回は英語圏に行きたかった。韓国語研究に直接的にかかわるところよりも、より俯瞰的な視点を得られるようなところに身をおきたかった。

ちなみに断っておくと、英語には自信がない。高校の頃は英語が主要科目の中で最も苦手な科目だったし、苦手意識は今も変わらない。聞き取れなかったり、話したいことがうまく言えなかったりということはしょっちゅうだが、そんなときは「自分は韓国語研究者だから」と開き直ることにしている。(ちなみに、韓国語で詰まったときは、「自分は音声学者だから」と開き直ることにしている。)

英語圏の中で具体的にどの国に行くか、どの大学に行くかについては、この時点ではまだ決めていない。これについては、後でじっくり検討することにした。

子どもたちをどうするかという問題

うちには二人の小学生の子どもがいる。その子どもたちをどうするかという問題もあった。

「海外に連れて行こう」

そう提案したのは私からだった。もちろん、ワンオペになる(つまり私が一人で子どもたちの面倒をみる)ことは覚悟の上だ。

だいたい、子どもたちを海外に連れていくにせよ、日本に残らせるにせよ、私か妻かどちらかがワンオペになるのだ。海外に連れて行けば、子どもたちにとって良い経験になるだろうと思った。うちの子たちは小学生(この時点で小5と小3)で、海外に行くとしたら良いタイミングだ。ワンオペはなんとかなるだろう。そう思った。

もちろん子どもたちの気持ちも大切だが、子どもたちに話すと、特に嫌がらなかった。うちの子がもともとインターナショナルスクールに通っていたせいもあるだろう。(うちの子たちがインターナショナルスクールに通ううことになった経緯ついては、以前にこんな記事を書いた。)

海外に行くかもしれないという話をした翌日、上の子はさっそく、学校で友だちに、アメリカとイギリスとどっちがいいか聞きまわったりしたようだ。なぜ海外に行くかについては、こう言ったらしい。

「お父さんとサバイバルに行く」

いや、「サバイバル」じゃなくて「サバティカル」・・・。でも確かに、父親と小学生二人で海外に行くのはサバイバルかもしれない。

我が家のサバイバル・・・じゃなくてサバティカル計画は、このようにして始まった。


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