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レーモン・クノー『地下鉄のザジ』登場人物

AIまとめ


全編を通じて見ると、『地下鉄のザジ』の人物はかなり多いのですが、実際には ①ザジと家族、②ガブリエル周辺の生活圏、③正体を変え続ける謎の男、④一時的に騒動へ加わる人々 の四群に分けると整理しやすいです。

①主要人物

ザジ(Zazie) 主人公
地方からパリへ来た少女。地下鉄に乗ることだけを楽しみにしている。口が悪く、好奇心旺盛で、大人の矛盾を容赦なく突く。大人たちの性、職業、言葉、権威について質問を繰り返し、物語の秩序を崩す存在。

ガブリエル(Gabriel) ザジの叔父
巨漢。香水、マニキュアなどを好み、夜は女装して「ガブリエラ」として踊るダンサー。ザジを預かる保護者だが、むしろザジに振り回される。哲学めいた大演説をし、外国人観光客から名ガイドと勘違いされる。

マルスリーヌ(Marceline) ガブリエルの配偶者
穏やかで物静か。謎の男に迫られるが、言葉遊びと機転で逃げる。

ジャンヌ・ラロシェール(Jeanne Lalochère)ザジの母
恋人と過ごすため、ザジをガブリエルに預ける。ザジの父親を斧で殺した過去が語られる。

ザジの父 故人
酒に酔いザジに性的に迫ろうとし、ジャンヌに斧で殺されたとザジが語る。現在の物語には登場しないが、ザジの異常なほど早熟な「大人への不信」の背景。

②ガブリエルの周囲

シャルル 
ガブリエルの友人でタクシー運転手
比較的常識人的だが、エッフェル塔でザジから性や結婚について質問攻めにされ、耐えきれず逃げてしまう。恋愛には臆病で新聞の恋人募集欄などを読んでいたが、最終的にはマド・プチピエに求婚する。

マド・プチピエ(小足のマド)/マドレーヌ 
テュランドの店で働く女性
以前からシャルルに好意を持っている。シャルルの求婚を受け入れる。彼女とシャルルの恋愛は、作中で珍しく比較的まともに成立する男女関係。

テュランド 
ガブリエルの家の階下のカフェ「ラ・カーヴ」の主人で家主
ザジの粗暴さを嫌うが、結局は一連の騒動に巻き込まれ、終盤の大乱闘にも参加する。オウムのラヴェルデュールの飼い主でもある。

グリドゥー 
近所の靴屋
やや観察者的な位置にいて、謎の男と会話し、その人物が名前も年齢もはっきりしないことを引き出す。終盤では乱闘にも積極的に参加し、最後は地下鉄でエトワール方面へ逃げる。

ラヴェルデュール(〈緑〉)
テュランドのオウム
基本的な台詞は、「お前はしゃべる、しゃべる、それしかできない」(喋れ、喋れ、それだけ取り柄さ)

③謎の男――最重要人物の一人

この人物は名前を次々に変えます。

ペドロ=シュルプリュス(Pedro-surplus)
→ トルスカイヨン(Trouscaillon)
→ ベルタン・ポワレ(Bertin Poirée)
→ アルーン・アラシッド(Aroun Arachide)

と変化します。

最初は、地下鉄に乗れず泣いているザジに声をかける怪しい男。蚤の市でザジにジーンズを買い、ガブリエルの家までついてきます。警官なのか、変質者なのか、商人なのか判然としません。

その後、トルスカイヨンという警官として再登場し、ムアック夫人と恋愛関係になります。しかし本人は警察の制服を着て遊ぶのが好きだとも語り、本当に警官なのか分からなくなる。

さらにマルスリーヌの家へ侵入した際には、ベルタン・ポワレ警部と名乗ります。そして「ペドロ=シュルプリュス」はその場で作った名前にすぎないと自分で認めます。

最終局面では、武装集団を率いてアルーン・アラシッドとして登場し、「自分こそ、お前たちが何度も見たのに正しく認識できなかった人物だ」と宣言します。自らを「不確実性」と「誤謬」の姿をまとって世界を歩く存在のように語ります。

④一時的に騒動へ加わる人々

ムアック夫人

エッフェル塔の後でザジとガブリエルに絡んでくる未亡人。
最初はガブリエルにも多少興味を示しますが、警官姿のトルスカイヨンに一目惚れし、すっかり夢中になります。ザジからは徹底的に馬鹿にされます。

フェドール・バラノヴィッチ

外国人観光客を乗せた観光バスの運転手兼ガイドで、ガブリエルの知人。
ガブリエルを「ガブリエラ」と呼び、彼が女装ダンサーであることを平気でばらします。また外国人観光客をどう楽しませ、どう余分に金を払わせるかという商売人的な計算にも長けています。

外国人観光客たち

固有名をほとんど与えられない集団。
ガブリエルのデタラメな演説を名ガイドの説明だと思い込み、彼を熱狂的に崇拝し、ついには「誘拐」してサント=シャペルへ連れていきます。その後ガブリエルの女装ショーまで見に行きます。

その他の人物

サン=モントロンから来た男は、ザジたちがサント=シャペルを追跡するときに乗る車の運転手。ザジの母ジャンヌを知っています。地方とパリをつなぐ人物ですが、重要人物ではありません。

モン=ド=ピエテの従業員たちは、スコットランド風の衣装などで働くナイトクラブの店員。ガブリエルの「芸術」が実際にはかなり猥雑な夜の娯楽産業の中にあることを示します。

「オ・ニクタロープ」の店員たちは終盤の大乱闘の相手です。ガブリエル、グリドゥー、テュランド、ザジ、ムアック夫人らと店内で大喧嘩になります。

警官たちも多数出てきますが、クノーは彼らをほとんど交換可能な存在として扱っています。トルスカイヨンが警官なのか偽物なのかさえ確定しないため、「制服を着ているから警官」という制度的アイデンティティそのものが笑いの対象になります。


人物関係を最も単純に図式化すると、こうなります。

ザジ
→ 母:ジャンヌ
→ 叔父:ガブリエル
→ ガブリエルの配偶者:マルスリーヌ/マルセル

ガブリエルの友人・近隣
→ シャルル ─ 恋愛・婚約 → マド
→ テュランド ─ 飼い主 → ラヴェルデュール
→ グリドゥー
→ フェドール・バラノヴィッチ

ザジたちの周囲を徘徊する謎の存在
→ ペドロ=シュルプリュス
= トルスカイヨン
= ベルタン・ポワレ
= アルーン・アラシッド
→ 恋愛対象として一時的にムアック夫人

人物配置で特に面白いのは、ザジ自身は名前も人格も非常に安定しているのに、周囲の大人ほどアイデンティティが揺らぐことです。

ガブリエルは叔父/「叔母」/ガブリエラ/男/女装ダンサー、マルスリーヌは最後にマルセルとなり、謎の男は名前も職業も次々に変わります。そこへ「しゃべっているだけだ」と繰り返すオウムがいる。

そのためこの小説の人物は、普通の小説のように「性格の一貫した人物たち」というより、言葉を与えられるたびに別の役割へ変身する存在として作られている、と捉えると全体がかなり見通しよくなると思います。

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