「特にない」を人生のお守りにして(2026年になって藤井風と出会ってしまった人の話)
2026年6月13日に行われた「MUSIC AWARDS JAPAN」の配信を見てから藤井風のことしか考えられなくなってしまった
式を締めくくるにふさわしい華やかなPremaの歌唱・演奏が素晴らしかったのはもちろんなのだが、彼の立ち振る舞いのすべてが美しく魅力的だった
美しいという理由だけでその後に正式にアップされたYouTubeの動画を何時間も繰り返し見続けた
Babe, I got your numberの後の横顔が脳裏に焼き着くほどに
まさか自分が藤井風にこんなに夢中になるなんて
知っている、彼のファーストアルバムが出た頃に友達の弟(当時高校生)が熱心に藤井風の曲を聴いていたこと、憧れの存在としてキラキラとした目で見ていたこと
なるほどね、そうなのね、若い人に流行ってるのね、と20代後半のわたしは自分の人生に必死でまだ藤井風の音楽に辿り着いていなかった
それどころかもう長いこと60-80年代の古い音楽ばかり聴いている自分には、リアルタイムの音楽というもの自体あまり縁がなく過ごしてきたのだった
でも今のわたしだから辿り着けたのかもしれない、きっとそういうことだ、という直感めいたものが
自分が知らずに過ごしていた期間の彼をあますことなく知りたいという気持ちを加速させた
そこで思い出した、紅白の満ちてゆく、見てたじゃん自分、いい曲だなとは思ってそのままだった
その時の自分に魂を宿すように動画を探したがもうどこにもなく落胆した
いま、今すぐにそれを見たかった
そんなことを思っていると、翌日には藤井風関連のサジェストだらけになったわたしのタイムラインで紅白の映像がApple Musicで見られるようになったという情報があがっていた
夢かと思った
まだ彼のことを何も知らなくて動揺している
別に素顔を知りたいとかそういうことは思わなかったし、まだアルバム1枚聴くことにさえ向き合えてはいなかった
いつもの自分だったら、1曲気に入れば真っ先にすべてのアルバムを聴きにいくのに
自分で自分にもったいぶっていた
どれくらいの深さかわからない海にもぐっていたいし、次に水面から顔を出したとき藤井風の未来を待たなければいけない自分に直面するのも怖かった
そんなことは杞憂に終わるのだけど
藤井風の動いているところが見たい、どうしても、お願いしますという明らかに様子がおかしい自分を待ち構えるかのように
YouTubeの公式アカウントにあがっている
Fujii Kaze Stadium Live "Feelin' Good" [day1]という日産スタジアムでのライヴを丸ごと配信した動画に出会う
MAJで見た完璧で隙のない彼とは違って、水彩画のような透明感をまとい柔らかな風を受ける彼がそこにはいた
生活していると何かと淀んでしまう心を洗い流してくれるような空間だった
"まつり"の演奏で彼があっさりと元気よく去っていっても、演奏の余韻で閉じることでこんなにも満たされた気持ちになるのかという新しい発見もあった
あの終わり方がほんとうに大好きだ
小さい頃行った地元商店街での夏祭りで、もうそろそろ終わりが近づいていて屋台も畳み始めたのでそろぼち帰ろうかというところで提灯に照らされた明るい景色のなか友達とバイバーイと言い合って楽しい気分のまま父親へのお土産で焼きそばを買って帰るみたいな記憶が蘇った
藤井風の音楽がようやく心に近づいてきた
犬のように髪の毛をパタパタさせながら
Fujii Kaze "Feelin' Go(o)d"🌈[Q&A]
という動画の8:47あたりで
「どうしてそんなにかっこいいのですか?」という質問に以下のように答えている
自信ですかね。
だからかっこ悪い時もいっぱいあります。自信がない時ですね。だから一緒に かっこよくなりましょうよ。
なんか 深いところにあるなんか
深いところから生まれる自信みたいなのをなんか頑張って身につけようぜって感じ。
ダンスを含めたエンターテインメントの魅せ方を模索したことを経て、MAJの揺るぎない自信に溢れたパフォーマンスがあるのだと納得した
日産スタジアムの動画を、何度も何度も何度も見ている途中で、ライヴ音源をまとめたアルバムがサブスクにあることもわかった
その日はPremaのCDを注文してAmazonのロッカーで受け取る予定になっていた
なんでCDを買おうと思ったかというとライナーノーツを湯川れい子さんが担当したという動画を見たのと、対訳がついていることを知ったからだ
自分もCD全盛期の世代だったことを思い出してハッとした
20時過ぎ、ちょっとコンビニに行くつもりでライヴ音源を聴きはじめたところなんだか涙が止まらなくなってしまった
Every time you clap, every time you snap, please just imagine that you let go of all the negativity inside of you all those unnecessary things that's in your life. Just let go. This song is called "Tokuninai"
https://fujiikaze.com/music/fujii_kaze_stadium_live_feelin_good_blu-ray/
せっかくだから、だから、みんなが抱えとるモヤモヤした気持ちとか
ネガティブな感情を全部この日産stadiumの空に飛ばして欲しいんやけど
次の曲は手拍子or指パッチンする曲なんですよ
だからみんなが手拍子orスナップする度に、そのモヤモヤした感情、ネガティヴな感情が空に飛んでいっていくっていうイメージをもって
やって欲しいんです
https://fujiikaze.com/music/fujii_kaze_stadium_live_feelin_good_blu-ray/
「特にない」という曲が好きだ
頭ではカラッとしていて、心ではグチャっとするような矛盾した状態を身体性を伴って寄り添ってくれる気がする
セルフライナーノーツ:Lo-Fi Hip-hopの心地よさ、暖かさを意識したアルバムの折り返し地点となる1曲。日本語と英語のセクションが混在した歌詞で、足るを知るの精神を淡々とかつ切々と歌っている。
センチメンタルでノスタルジーなサウンドが、ゆったりと歩く時のリズムにぴったり合うことでひどく感情をゆさぶられてしまった
歌詞でも、「期待せずに歩く」、「囚われずに歩く」と歌われることで変わっていく自分が前に進んでいくようなイメージが頭の中で広がる
「特にない」と反復することで、「満たされている」自分に気が付くことができるのだ
曲に励まされるというよりは、セルフヒーリングに近いものを感じた
特にない
望みなどない
わたし期待せずに歩く
歌詞だけにフォーカスするとすごくドライなのだが、実際の曲を聴いてみると曲間に「あ~~~あ~あ~あ~」と叫びに近いパートが挿入され何やら感情の渦が巻く
うめき声といってもサウンド的にもとても美しく、色んな思考の宇宙に投げ出されて漂っているような感覚になる
この表現が曲の芯を支えているようにさえ思う
くわえて、“Feelin’ Good”ライヴでの演奏ではバックの音にCD再生機器で巻き戻し/早送りを長押ししたときのような不思議な音が鳴っていて没入感がより高まっている
そしてそのあとすぐにFujii Kaze Stadium Live “Feelin’ Good”の[LIVE Album CD]を購入することとなる
届いてからわかったのは、サブスク配信版とCDでは曲数が異なることだ
これはCDに収められる時間に制限があるためのようだが、逆にうまいこと2度美味しい内容になっているなと感じた
たとえば配信版ではライヴの流れそのままに、着替えの時間に挟まれる最高にクールな曲"CASTING CALL"を聴くことができる
だが、これと他にも数曲CDには収録されていない
それにより再構築されたひとつのアルバムとして最初から最後までスーッと駆け抜けるさわやかな構成になっている
こんなにもCDを買ってよかったと思えたのはいつぶりだろう
藤井風という存在に人生のどのタイミングで「出会ってしまって」も、楽曲はもちろん、彼の人間性、そしてチームとしての信念に深く触れることができるように彼らが準備してくれているのだなということを毎日実感している
もともと自分は誰かに何かを強く伝えたい広めたいと思うような人間ではなくて、ここにきてなんでこんな長い文章を書いているのかわからない
彼の考えや信じる心が、彼自身を守ってくれますように
わたしは「特にない」を人生のお守りにして、
