ガット弦を使っています。〜 弦の話 その1
みなさん、こんにちは。名古屋を拠点に、音楽活動をしているヴィオラ弾き、竹内賢司です。
今年の日本も猛暑に襲われています。
私が活動の拠点にしている名古屋も、全国ニュースでは猛暑で有名な場所です。このところ毎日のように予想最高気温が40度近く。7月23日は最高気温39.9°Cを記録しました。あくまでも、百葉箱の中が、39.9°Cということですから、アスファルトの路上は40°をはるかに超える気温でしょう。

この季節、高温多湿の日本の夏は弦楽器奏者の大敵です。
とりわけ、ガット弦を使っている奏者は、梅雨の季節と真夏には悩まされます。
私もガット弦を使っています。
梅雨から夏にかけてのこの時期、楽器のケースを開けるたび、弦が切れていないかドキドキします。
今日はその、弦について書きます。
ガット弦とは
弦楽器に詳しい人には釈迦に説法ですが、まずはガット弦の紹介から。
弦とはこのパーツですね。

ヴァイオリン属には普通、4本の弦が張ってあります。
たまに、5本のものもあります。
元々、この弦は、動物の腸、主に羊の腸から作られていました。これをガット弦と言います。
ガット弦は、
• 切れやすい
• 音程が安定しにくい
といった理由で、20世紀の途中で他の材質の弦に取って代わられるようになりました。
現代では、ナイロン弦やスチール弦を使うのが普通です。
しかし、扱いが面倒くさいにもかかわらず、豊かな音を求めてガット弦を使う奏者も一定数います。
ヴィオラを始めたころ、使った弦。
私が最初にヴィオラを弾くようになったのは、アンサンブルの中でした。
ヴィオラは当時ヴァイオリンを習っていた、大澤美木先生から借りていました。弓は自分のヴァイオリン用のものを流用。
その楽器に貼られていた弦は、4本とも全てドミナント。ナイロン製の弦でした。

特に考えもなく、そういうものだと思って、弦が切れたら同じドミナントの弦を買って使っていました。
東ドイツ演奏旅行に参加したころ。
自己紹介に書いたように、高校生の時、鈴木メソードの弦楽オーケストラで東ドイツでのコンサートツアーに参加する機会がありました。
その際、あるヴァイオリンの先生から「弦はドミナントでいいけど、A線だけはヤーガーにしたほうがいい」と言われました。
ヤーガーはスチール弦。A線は、ヴィオラの一番音が高い弦です。

ちなみに、弦楽器奏者は弦を、ドイツ語の発音で呼んでいます。だからA線は「えーせん」ではなく、「あーせん」と言います。「えーせん」というと、ヴァイオリンで使うE線を弦楽器奏者は思い浮かべます。
特に考えもなく、勧められるままにヤーガーのA線の弦を買って張りました(私も、ちょっとは考えたほうがいい)。
セルジュ・コローに薦められた弦。
社会人になりました。
自己紹介に書いたように、フランスのヴィオリスト、セルジュ・コローのレッスンを受けるため、草津のアカデミーを受講するようになりました。
ある受講生のレッスンの際、コロー先生は「弦はガットにしたほうがいい」と言いました。
その受講生は、「どのガット弦を使ったらいいですか」と質問しました。
コロー先生は、「どの弦でもいいが、とにかくガット弦がいい」と答えました。
それを聞いた私は山を降りると(=草津から名古屋に帰ったら)、弦をガット弦に変えました。
たしか、ピラストロ社のオリーブという弦を張ったと思います。

ガット弦には、慣れていた。
実は、私はヴァイオリン時代(いやいや、今でもヴァイオリンは弾きます)にガット弦を使っていました。
理由は単純。大澤先生がガット弦を使っていたからです。
なので、ガット弦にはなじみがありました。
ピラストロ社のオイドクサという弦でした。

E線だけは、ゴールドブロカットというスチール弦を使っていました。

E線は一番高い音がする弦で、細くて張りが強い。ガット弦だと切れやすいので、ピラストロ社もオイドクサのガットのE線は作っておらず、同じオイドクサの名前がついていても、E線はスチール製でした。
オイドクサに帰る。
オリーブは、ピラストロ社のガット弦の中でも高級な弦。ソリスト向きの華やかさがあります。
一方、オイドクサは室内楽やオーケストラ奏者用に開発された弦だとか。張りがゆるやかで、豊かな音色が特徴です。
私は若い時、いつもヴィオラが他の楽器の影に隠れているのが嫌でした。
弦楽四重奏などで同じメロディを順番に弾くと、ヴィオラだけよく聞こえない。音もくすんでると言われたりします(ほめ言葉だったりする場合もあるのですが)。
それが嫌で、ブリブリ弾いていました。だから、ヴァイオリン時代からなじみあるオイドクサより、華やかな音がするオリーブが合っていたのでしょう。
時は流れ、私は華やかな音よりも、ヴィオラ特有の深く豊かな音色を出したいと思うようになっていました。
ある時、私は楽器屋さんでオリーブではなく、オイドクサを買いました。
それ以来、基本的にオイドクサを使っています。

どちらかというと、流されるように弦を選んできた、弦にこだわりのない私。
ところが、ガット弦を弾いてきたことは、自分でも気づかないうちに思わぬ恵みを与えてくれていたのでした。
長くなりました。続きは次回!
最後までお読みくださり、ありがとうございました。
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