見出し画像

【ギリシア哲学】『ソクラテス』①

【はじめに】

哲学は最初、
世界の材料や構造を考える学問でした。

しかしある人物が、
哲学の向きを根本から変えます。

自然から人間へ。

「人はどう生きるべきか」を
初めて中心に据えた哲学者。

それが――
ソクラテスです。

本記事ではまず
「ソクラテスとは何者か」を
紹介します。

第1回:ソクラテスとは何者か←今回
第2回:無知の知
第3回:問答法と魂の哲学
第4回:裁判と死
第5回:ソクラテスの影響

アクロポリス丘 パルテノン神殿

① 生涯 ――本を書かなかった哲学者

ソクラテス(前469頃–前399)

• 出身:アテネ
• 職業:市民(父は石工と伝承)
• 著作:なし
• 活動:対話
• 最期:裁判で死刑

彼の最大の特徴は
著作を残していないことです。

思想はすべて
弟子の記録から知られます。

主な記録者

• プラトン
• クセノフォン

ソクラテスは
アテネの広場で人々と対話し、

• 徳とは何か
• 正義とは何か
• 善とは何か

を問い続けました。

アゴラで喧々諤々(けんけんがくがく)の議論

② 時代背景 ――民主政アテネとソフィスト

ソクラテスの時代のアテネは

• 民主政治が発達
• 弁論が重要
• 教養教育が流行

という社会でした。

この環境で活躍したのが
ソフィストと呼ばれる知識人です。

特徴

• 弁論術を教える
• 説得の技術
• 相対的真理

つまり

「勝てる議論」が重視された時代です。
ソクラテスはここで問い直します。
本当に正しいとは何か

アテネのアゴラ遺跡(古代市場広場)

③ ソクラテス問題 ――本当の姿が分からない

ソクラテスは本を書いていません。

そのため人物像は
他者の記録に依存します。

しかし記録ごとに
描かれる人物が違います。

• プラトン:哲学者
• クセノフォン:道徳家
• 喜劇:詭弁家

このズレから生じる研究課題を
ソクラテス問題と呼びます。

(=歴史上の実像はどれか)



④ 哲学史での転換点 ――自然から倫理へ

ソクラテス以前の哲学は主に

• 世界の構造
• 宇宙の原理
• 存在の説明

を扱いました。

ソクラテスは焦点を変えます。
人間はいかに生きるべきか

哲学の主題が

• 宇宙 → 人間
• 自然 → 倫理
• 存在 → 生き方

へ移行します。
彼は哲学を
魂と徳の探求へ転換しました。



⑤ なぜ哲学史の中心人物なのか

ソクラテスは

• 問答法
• 徳中心思想
• 魂の重視

を確立しました。

そして死後、

• プラトン
• ソクラテス派諸学派

を生みます。

そのため彼は
西洋哲学の出発点
と位置づけられます。

【歴史的位置】

活動地域:アテネ(アテナイ)

【哲学者データ】

■ 名前 ソクラテス(Socrates)
■ 生没年 前469頃 – 前399
■ 師匠 アルケラオス(著ゴルギアスより)
■ 父  石工のソフロニスコス
 母  助産師のパイナレテ  
■ 弟子 プラトン
    クセノフォン
    アンティステネス
    アリスティッポス
    アイスキネス
    パイドン
    エウクレイデス
    アポロドロス
    シミアス
    ケベス など
■ 地域 アテナイ(アテネ)アロペケ区
■ 系統 ソクラテス系
■ 学派 なし(※私塾を持たず)
■ 立場 徳は知である(倫理知性主義)
■ 職業 石工として彫刻も作る。
■ 戦歴 重装歩兵として、
    北ギリシアのポテイダイアの戦役
    デリオンの戦闘
    アンフィポリスの戦闘 等

■ 主要概念

• 無知の知
• 問答法(対話で真理を探す方法)
• 徳は知である
• 魂の世話(生き方の反省)
• 善く生きることが最重要



■ 哲学史的位置

自然の原理を探した哲学を転換し、
人間の生き方・倫理・知の問題へ哲学を向けた転換点の哲学者。

自然哲学 → 人間哲学への転回を担った中心人物。



■ 歴史的重要性

倫理を理性で探究する哲学を創始。
対話による批判的思考の方法を確立。
プラトン・アリストテレスへ直結する西洋哲学の源流。



まとめ(要点)

ソクラテスは「自然」から「人間」へ哲学の対象を転換した人物。
対話によって真理を探す方法と倫理哲学の基礎を築いた。
西洋哲学の出発点とされる決定的存在。

【次の記事】

【前回の記事】

■参考文献

プラトン『ソクラテスの弁明』岩波文庫

プラトン『パイドン』岩波文庫

クセノフォン『ソクラテスの思い出』岩波文庫

ディオゲネス・ラエルティオス『ギリシア哲学者列伝』岩波文庫

ギリシア哲学30講 人類の原初の思索から(上)――「存在の故郷」を求めて

いいなと思ったら応援しよう!

この記事が参加している募集