vol.634『サッカー日本代表に学ぶ、脱・属人化のための2つの仕組み』(2026年6月25日配信)
「個」に依存しない強さ――サッカー日本代表から学ぶ組織論
サッカーW杯北中米大会、日本代表強いですね。これから先、とても楽しみです。
今回のチームは、主力選手が4人もいません。三苫、南野、遠藤、そして久保選手です。それでも評論家たちが絶賛する戦い方ができたのは、ひとえに選手層が厚く、特定の誰かに依存していない証です。
例えば初戦で久保選手が務めたシャドーと呼ばれるポジションに、第2戦では鎌田選手が入りました。企業に置き換えれば、鎌田選手は多能工で、見事にシャドーの役割を果たしました。
特定の誰かに依存しない脱・属人化した組織。エースに頼らなくても勝てる組織。これは、スポーツでも企業でも絶対の強みです。
なぜ「脱・属人化」が中小企業の最重要課題なのか
人が異動や退職でいなくなれば、最も影響を受けるのがアウトプット品質です。品質が低下したら、お客様は確実に去っていきます。
脱属人化した組織は、その穴ができないのですから、取引は安定します。また、同業他社が同じ要因で品質問題を起こしたら、それを機に成長することができます。そのため脱・属人化は中小企業の最重要課題のひとつです。
ところが、それがなかなか進みません。主な理由は2つあります。
第一は、エース社員の影響力です。エースが異動すると、一時的に業務が停滞します。経営者は業績低下を覚悟しなければなりません。また、本人のモチベーションダウンも心配です。エースは「自分しかできない仕事があること」に誇りを持っています。それを奪われるのですから不貞腐れる可能性があります。中には「自分だけ」の存在価値を守るために、仲間に自分のノウハウを教えることを拒む人もいます。
第二は全員をレベルアップする仕組みがないことです。脱・属人化のためには、ジョブローテーションのような仕組みが必要です。ところが、各職場で異動してきた人を受け入れ教育するマニュアルや、OJT指導する担当者がいません。そのため、異動した人が育たないのです。
では、こうした問題をサッカー日本代表はどのように克服したのでしょうか?
森保監督がエースの鼻柱を折った「真意」
第一は、森保監督がエースの鼻柱を折ったことです。『プロジェクトX ジャイアントキリング』で、堂安律選手への接し方が紹介されました。
堂安選手はカタール大会の前、代表に選ばれた時、「自分は歴史を変えるためにやっている。W杯で先輩たちが成しえなかったことをやってやろう」と強く決意してプレーをしていました。
そんな堂安選手を森保監督は予選のスタメンから外します。堂安選手はなぜ自分が外されたのかがわからず、あからさまに不貞腐れた態度をとりました。そして、森保監督に食ってかかります。「なぜ自分は代表から外されたんですか?」
これに対し森保監督は応えます。「律、チームのために戦っているか」。
この一言に、堂安選手は自分を振り返ります。自分が試合に出ていない時の言動は、そのチームに貢献するものではありませんでした。本人曰く「日本を背負うなんて重みを全く感じていなくて、自分が注目されればいい、堂安律が活躍すればそれでいい。そんなエゴの方が強かった。そこを監督に見ぬかれていた」。
そう気づいた堂安選手は、変わりました。「どんな時でもチームのために戦える選手になる」と心に誓い、以後、チームに貢献するプレーを続けるようになったのです。
「実戦の場」を創り出し、底上げする仕組み
もう一つ、選手全体がレベルアップした理由があります。それが、ベルギーの「シントトロイデン」というチームの存在です。
このチームは、ベルギーのプロのチームでありながら現在、25名中6名もの日本人が在籍しています。現在のキャプテンは、日本代表の谷口彰悟選手です。このチームには、大勢の日本人OBがいます。鈴木彩艶、冨安健洋、遠藤航、鎌田大地、鈴木優磨、中村敬斗など、今回の日本代表選手がずらりといます。
彼らは、このチームで1シーズンプレーしたのちにヨーロッパ各国のプロ・チームへと移籍をしました。つまりシントトロイデンは、ヨーロッパ各国のチームにとって、有望な日本選手を発掘できる「見本市」の場なのです。この仕組みは日本人選手のレベルを飛躍的に上げました。移籍した彼らは欧州の強豪クラブの中で揉まれ、逞しく成長し、選手層をぶ厚くしました。
現場経験の共有が、組織を強くする
この仕組みをあなたの会社に置き換えるとどうなるでしょう。
例えば、最初に配属された部署から社員が全く異動しない会社もあれば、最初3年間は製造業なら必ず現場に入り、ものづくりの何たるかを知ってから様々な部署に異動する会社もあります。シントトロイデンの仕組みは後者に似ています。
後者の会社は誰もが現場経験があるので、ピンチの時に助け合うことができます。気持ちがわかるので部門間連携もスムーズに進みます。結果的に脱・属人化の壁を最小にできます。
森保監督はドーハの悲劇の時、グラウンドにいた選手です。サッカーの怖さを知り抜いたリーダーの考え方を共有し、崇高な目標達成に向けて「For the team」の精神で一人ひとりが自分の役割を果たそうとするチームは、私たちの予想を超えて強いはずです。
彼らは個人技に優れる世界の強豪にどこまで通じるでしょう? 日本代表の活躍から目が離せません。
実践に役立つ動画の解説
このメルマガを読んで、「自社でも取り組んでみたい」と思われた方は、以下のような疑問や質問に答えていますので、ぜひこちらの動画をご覧ください。
エース社員に会社への貢献の視点の気づきを与えるためのコツはありますか?
「必ず現場を経験させる」という仕組みが難しい場合の良い方法はありますか?
森保監督のチームづくりを支えている哲学はなんだと思いますか?
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