2010年 尖閣中国漁船衝突事件及び、周辺事項
はじめに:16年前に世間を揺るがした尖閣諸島の漁船体当たり事件。Xにて、プチバズりしたので、当時を思い出しつつ、周辺事項も加えてこちらにも記載します。若い方や当時の詳細忘れてしまった大人達へ、あの時の空気感まで伝わると幸いです。
■ 何が起きたか
2010年9月7日、尖閣諸島周辺の日本領海で、中国漁船が海上保安庁の巡視船「よなくに」「みずき」に体当たり。停船命令を無視して逃走する漁船に、海上保安官は生身で飛び移り、船長を公務執行妨害で逮捕した。
■ 中国の「激怒」は尋常じゃなかった
2010年9月12日 丹羽駐中国大使を「深夜1時」に呼び出し(呼び出しは計5回とも)
9月19日 船長の勾留延長が決まると即日、閣僚級往来の停止・航空増便交渉の中止・中国人観光団の縮小を発表
9月20日 ゼネコン「フジタ」の社員4人を河北省で拘束
9月21日〜レアアースの対日輸出を、通関を意図的に遅らせる形で事実上ストップ。温家宝首相は国連の場で船長の即時無条件釈放を要求
⇒事前通告なしで、いきなりだったはず。
この頃から、資源の武器化をしてたんだよね。
■ フジタ社員拘束のひどさ
彼らがしていた仕事は、旧日本軍が中国に遺棄した化学兵器の処理事業の調査。つまり「戦争の後始末」で、中国人民のためになる仕事だった。進入禁止の門を記録用に撮影しただけで「軍事管理区域侵入」として拘束。3人は9月30日に釈放されたが、1人だけは10月9日まで拘束が続いた。船長を勾留する日本への「人質」だと指摘された。
⇒あからさま過ぎて、酷い。きちんと仕事していただけなのに。恩を仇で返す国家なのは、説明不要ですね。
■ 2010年9月24日:船長を処分保留で釈放
那覇地検は「日中関係を考慮して」釈放と発表。経済圧力と人質に、日本が屈した形になった。釈放後、中国は逆に謝罪と賠償まで要求してきた。
⇒弱みを見せると、ダメらしいです。皆さんも注意!ハニトラや違法行為で脅されても、警察や公安に相談です。公安ではスパイや不審な外国人なんかの情報も聞いてくれます。
謝罪と賠償まで要求なんて…盗っ人猛々しい!
■ ここまで、国民は、映像を見ていない
政府の説明はハッキリせず、何が起きたのか分からないまま。11月1日、政府はようやく約2時間の映像を「6分50秒」に編集したものを、
国会議員約30人にだけ見せた。国民には非公開のまま。
■ 2010年11月4日:sengoku38、動画流出!!! こっからおー騒ぎ!
一人の海上保安官が、約44分の映像をYouTubeに投稿。映っていたのは、中国漁船が明らかに自分から当たりに来る姿だった。
⇒当初中国は、日本がブツケてきた、とか威嚇してきたとか好き放題言ってたのに、真逆!
「中国ふざけるな。これ、本当にただの漁船か?」
「政府はなんでこれを隠したんだ!」
「動画を流失させたのは誰なんだ?」
⇒こんな世論で、日本中大騒ぎでした。
■ なぜ「本当にただの漁船か?」と皆が疑ったか
⇒前例があったんですよ、ぶつかりに来てるし普通じゃないし。
1999年(能登半島沖不審船事件)漁船を装った不審船を海保が追跡。当時の法律では武器使用が厳しく制限されており、威嚇射撃をしても停められず、取り逃がした
2001年これを受けて海上保安庁法が改正され、条件付きでようやく逃走船への船体射撃が認められた
2001年12月(九州南西海域工作船事件)漁船を装った北朝鮮の工作船が、停船命令を無視して逃走。海保が威嚇射撃すると、相手は自動小銃とロケットランチャーで撃ち返してきた。巡視船「あまみ」は100発以上被弾、海上保安官3名が負傷。しかも当時支給されていた防弾ベストは、その銃弾を防げないことが後に判明した。船は自爆して沈んだ
⇒つまり国民は知っていた。「漁船のフリをした船」が、海保に本物の銃弾を撃ち込んでくることを。その海保が2010年、体当たりしてくる"漁船"に生身で飛び移っていた。だから、海保の方々に、ちゃんとした装備わたしているのか?向こうが撃ってきたら、撃ってもいいんだよな!身体はってる海保の方々がかわいそうだ!なんてみんなピリピリしてた。
ただ、ルールを破っての公開なので賛否両論はあった。だけど流出させた保安官への同情が大半。「命を張ってる海保を、政府は守らないのか」という空気だった。
産経の調査:流出させた職員を「支持する」
95%(回答2万人超)
Yahoo!の投票:流出を「歓迎する」
66%(43万票超)
同通信の世論調査:映像を「公開すべきだった」88.4%
海保には「犯人捜しをしないで」という電話が殺到
⇒そして、流失させた方は自ら名乗り出て、処分を受けて、辞職。
ありがとう御座います。あなたのおかげで真実がわかりました。
■ その後、日本は変わった
⇒当たり前だけど、もっと変わっても良かったと思う、少なくとも日本の技術なんかもう少し守れたはず、スパイ天国なんてずっと言われてるし。
2010年10月政府が「レアアース総合対策」。脱・中国依存へ
2010年11月:双日が豪ライナス社と提携(2011年3月、JOGMECと共同で約200億円を出融資、日本の消費量の3割を確保)
2010年12月:豊田通商がインドにレアアース工場を発表。事件からわずか3か月
2010年12月17日:防衛大綱で中国を「懸念事項」と初めて明記、南西諸島の防衛強化へ
2012年:民主党政権への不信は政権交代の一因に。野田政権は尖閣を国有化
東芝・日立・大同特殊鋼・トヨタ・ホンダなど各社が「レアアースを使わない・減らす」技術開発に走った
2016年:大同特殊鋼とホンダが、重レアアース(ジスプロシウム)を使わないモーター用磁石を世界で初めて量産車(フリード)に搭載
2018年:トヨタがネオジム使用量を最大50%減らした磁石を発表
レアアースの対中依存度は、当時の約9割から6割程度まで低下
⇒中国の経済恫喝は、結果として日本の技術者や経営者たちに火をつけた。カッコいいです。
若い日本人の方たち。
16年前、日本でこんなこと起きてたの知ってる?
その映像を、当時の政府はなかなか公開しなかった。
結果、一人の海上保安官が「sengoku38」って名前で動画を流出させることに。
これ、学校でちゃんと習った人いる?
知らない人が多すぎると思うんだ。
当時、悔しかったな…。日本中が悔しかったかもしれない。
被害者なのに、加害者の顔色うかがったり…波風たたないように配慮したり。
【出典・参考資料】
◉本文は以下の公的資料・当時の報道に基づいています。感想部分は私個人のものです。読んでいただいた一人一人の方に考えや感想が、あると思います。
■ 衝突事件・逮捕・釈放
海上保安庁「海上保安レポート2011年版 尖閣諸島を巡る各種事案への対応」
https://www.kaiho.mlit.go.jp/info/books/report2011/html/topics/p004_01.html
日本経済新聞(2010年9月24日)「中国人船長を釈放へ 那覇地検『日中関係を考慮』」
■ 中国の対抗措置
参議院 外交防衛委員会調査室「領土をめぐる問題と日本外交 ―2010年以降の動きと国会論議―」
https://www.sangiin.go.jp/japanese/annai/chousa/rippou_chousa/backnumber/2013pdf/20130701003.pdf
- 衆議院 質問主意書(第176回国会)丹羽大使呼び出しに関する再質問主意書
https://www.shugiin.go.jp/internet/itdb_shitsumon.nsf/html/shitsumon/a176066.htm
■ フジタ社員拘束
- 日本経済新聞(2010年10月1日)「フジタ社員『軍事管理区域と知らず門を撮影』」
- 日本経済新聞(2010年9月30日)「中国、フジタ社員3人釈放 高橋さんは拘束続く」
- AFPBB News(2010年9月30日)「中国、フジタ社員3人を釈放 1人は拘束続く」
https://www.afpbb.com/articles/-/2762610
■ 映像の限定公開・流出
- イミダス「尖閣ビデオ」(2010年11月1日の限定公開・6分50秒)
- ITmedia(2011年2月)「平成の二・二六事件!? sengoku38氏が語る『尖閣ビデオ』事件の真相」
https://www.itmedia.co.jp/makoto/articles/1102/15/news028.html
■ 世論の反応
- 産経新聞 電子調査(2010年11月12日〜16日、回答20,773人):流出職員を「支持する」95%
- Yahoo!ニュース「みんなの意見」(2010年11月5日〜15日、433,970票):「歓迎する」66.0%
- 共同通信 電話世論調査(2010年11月12日〜13日):映像を「公開すべき」88.4%
- 読売新聞(2010年11月6日):海保への「犯人捜しをしないで」等の電話殺到の報道
■ 不審船・工作船事件(1999年/2001年)
海上保安庁「九州南西海域における工作船事件について」
https://www.kaiho.mlit.go.jp/info/books/report2003/special01/01_01.html
長崎新聞(2024年1月11日)「工作船事件で被弾 巡視船『あまみ』退役」(100発以上被弾・3名負傷)
https://www.nagasaki-np.co.jp/kijis/?kijiid=1117989250150859558
当時の防弾ベストが工作船の銃弾を防げなかったとされる件は、事件後の検証・解説による
■ その後の日本の変化(レアアース・防衛)
- 経済産業省 METI Journal ONLINE「レアアース・ショックから15年 双日の担当者が語る『あのとき』」
https://journal.meti.go.jp/p/42046/
レスポンス(2010年12月9日)「豊田通商、インドでレアアース製造工場を新設」
https://response.jp/article/2010/12/09/149085.html
日本経済新聞(2012年10月)「レアアース『脱中国』 トヨタなど使用ゼロの磁石開発」
- ダイヤモンド・オンライン(2019年5月)「ホンダ子会社の世界初『重レアアース0%』モーターを生んだ創造力」
https://diamond.jp/articles/-/202173
- 防衛省「平成23年度以降に係る防衛計画の大綱」(2010年12月17日閣議決定)
- 参議院「立法と調査」No.333(2012年10月)
