計画通りに進めようとするプロジェクトマネジャーほど大きなリスクに直面する理由
プロジェクトは計画通りに進めるもの。多くの人はそう考えている。
何も起こらなければ、その認識は正しい。
しかし、私がこれまで何度も大型プロジェクトを担当し、尊敬するプロジェクトマネジャーから学んだことは、その逆だった。
優秀なプロジェクトマネジャー(PM)ほど、「計画通りには進まない」ことを前提にしている。
だからこそ、未来に自由度を残し、変化へ柔軟に対応できる。その準備をどれだけできるのか。これがポイントだ。
今回は、私が現場で学んだ、優秀なプロジェクトマネジャーに共通する3つの力について整理してみたい。
優秀なプロジェクトマネジャーが共通して持っている3つの力
私自身、何度も大型プロジェクトを任され、そのたびに、計画通りに進まないプロジェクトの舵取りを経験してきた。
その中で、尊敬する先輩プロジェクトマネジャーに「プロジェクトを成功させるコツ」を聞いたことがある。
表現は違っていたが、本質は次の3つに集約されると、私は理解している。
リスクシナリオのバリエーション
リカバリープランの自由度
人の心に寄り添う力
どれも特別なテクニックではない。
しかし、この3つを身につけている人ほど、大きなトラブルに遭遇しても、最後にはプロジェクトを成功へ導いている。
計画通りに進めようとするほど、柔軟性を失う
経験の浅いプロジェクトマネジャーほど、「計画通りに進めること」を目的にしてしまう。
しかし、経験豊富なプロジェクトマネジャーは違う。
最初から「計画通りには進まない」と覚悟している。
人間が描いた未来など、環境の変化、人事異動、仕様変更、システムトラブルなどによって、簡単に形を変えてしまう。
だから、計画をがむしゃらに守ろうとはしない。
守るべきなのは、プロジェクトの目的である。
計画とは目的を達成するための手段であり、目的ではない。
もし計画を守ることだけに固執すれば、プロジェクトの柔軟性は失われる。
リスクを許容できる幅が狭くなり、たった一つのトラブルが全体へ大きな影響を及ぼしてしまう。
だから優秀なプロジェクトマネジャーは、未来にどれだけ自由度を残せるかを考えている。
私は、その自由度をコントロールすることこそ、プロジェクトマネジャーの役割だと思っている。
優秀なPMはタスクではなく「構造」を見ている
プロジェクトが遅れ始めると、多くの人は目の前のタスクに目を奪われる。
「あのレビューが終わっていない。」
「あの資料がまだ完成していない。」
もちろん、それも重要である。
しかし、本当に見るべきなのはもっと大きな構造である。
この遅れは、プロジェクト全体へどれほど影響するのか。
重要なマイルストーンは崩れるのか。
その遅れは致命的なのか、それとも吸収できる範囲なのか。
優秀なプロジェクトマネジャーは、細かなタスクではなく、プロジェクト全体の流れを見て判断している。
だからこそ、局所的な問題に振り回されない。
リカバリープランとは「別の未来」も常に妄想すること|その決断をするタイミングはいつなのか考えること
次に考えるのは、リカバリープランである。
重要なのは、問題が起きてから考えることではない。
起きる前から、複数の未来を準備している。
もしこの工程が予定通り終わらなかったら。
もし担当者が変更になったら。
もし重要な機能の開発が遅れたら。
その時、優先順位を変更できないか。
重要ではあるが致命的ではない機能を後ろへ回せないか。
体制を変更できないか。
スケジュールを再設計できないか。
もし、リカバリープランを発動するとしたら、いつがデッドラインなのか、常に考え、デッドラインの発動条件を意識している。そうすることで、このリカバリープランを発動しないようにプロジェクトをコントロールすることができるようになる。
つまり、一つの未来しか持たないのではなく、複数の未来を設計しているのである。
必要になれば、そのシナリオへ切り替える。
未来のリスクに自由度を与えておく。
この自由度こそが、優秀なプロジェクトマネジャーの最大の武器なのである。
最後に必要なのは、人の心に寄り添う力
そして、最後に必要なのが、人の心に寄り添う力である。
私は、この力は単なるコミュニケーション能力ではないと思っている。
プロジェクトにおいて、人に寄り添う力とは、「リスクを検知する力」なのである。
どれだけ精密な計画を立てても、それを実行するのは人間である。
誰かが悩みを抱えているかもしれない。
判断に迷っているかもしれない。
報告しづらい問題を、一人で抱え込んでいるかもしれない。
そうした小さな歪みは、最初は人の表情や雰囲気、会話のトーンに現れる。
優秀なプロジェクトマネジャーは、その小さな変化を見逃さない。
「何か困っていることはない?」
その一言で、抱えていた課題が表に出てくることもある。
問題が大きくなってから対応するのではなく、小さいうちに気づき、対話を通じてリスクを表面化させる。
これも、プロジェクトマネジャーの重要な仕事なのである。
プロジェクトとは、タスクを管理する仕事ではない。
人が安心して前へ進める環境を整える仕事でもある。
だから最後にプロジェクトを成功へ導くのは、計画力だけでも、技術力だけでもない。
人の心に寄り添い、変化の兆しを感じ取り、リスクを未然に検知する「人間力」なのである。
「はやぶさ」は優秀なプロジェクトの代表例
私が理想のプロジェクトとして思い浮かぶ一つが、「はやぶさ」計画である。
数々の想定外のトラブルに見舞われながらも、そのたびに新しい方法を考え、最終的には小惑星のサンプルを地球へ持ち帰るという目的を達成した。
あのプロジェクトが教えてくれたのは、計画を守ることではない。
目的を守ることである。
そのために、手段は柔軟に変える。
未来を一つに固定せず、複数のシナリオを持ち続ける。
その裏には、リスクを想定し、代替案を準備し、人を信じながらプロジェクトを導いた優秀なプロジェクトマネジャーがいたのだろう。
私は、プロジェクトマネジャーとは未来を管理する人ではないと思っている。
未来は誰にも管理できない。
だからこそ、未来に自由度を残す。
計画を守ることが、プロジェクトマネジャーの仕事ではない。
目的を守るために、未来へ自由度を残すことこそが、プロジェクトマネジャーの本当の役割なのである。
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