犬も人間も嫉妬の感情は面倒だ
「ボクが家族の中で一番のアイドルなんだワン!」
昔実家で小型犬を飼っていた(以下彼とする)。
彼は晩年、心臓弁膜症などの加齢に伴う病気以外は大きな病気もせず、14歳の大往生だった。
そんな彼の愛憎劇の、はじまりはじまり。
彼は、生後2か月で我が家にやってきた。
ヨチヨチ歩きで、小さすぎて踏みつぶさないように注意するのが大変だった。私も小学生だったので、まるで兄弟のように一緒に育っていった。
それは彼の方も同じ、自分を犬だとは思っていなかった(気がする)。散歩が嫌いで、雨の日は足が濡れるから散歩に行きたくない。
抱っこが大好きですぐに抱っこをねだる。
たまに父から雷を落とされてはいたが、基本的にみんなに「かわいい、かわいい」と言って育てられてきた。まさに甘やかされた坊ちゃん。
父もそんな彼をかわいがり、彼の序列ランキング1位(推定)の父からの寵愛を受け、すくすくと育っていった。
私たちも成長し、ある日の出来事である。
当時弟が大学生になり、県外に出ていたが、帰省で実家に帰ってきていた。
弟が実家にいない時は、父からの愛を独り占めできる、まさに彼にとってパラダイス銀河であった。
だが、弟が帰ってきてしまった。
父は一人息子の弟を娘より可愛がっていたが、帰省ともなれば久々に会えるため、父はもう大喜び。ぴょんぴょん跳ねてかまってちゃんアピールの彼を尻目に、弟と談笑したりしてほったらかし状態。
あらゆる手段を行使しても、父にかまってもらえなかった彼。
すると、彼がいきなり足をひきずり始めた。尻尾も下がり、顔つきもなんだか悲壮感が漂っているようにも見えなくもない。足は折れ曲がったような角度になっていて、人間だったら病院送りになってもおかしくない角度だった。
家族は慌て始め、「大変大変、骨折でもしたのか!?」と動揺が走る。
その様子を見た弟が、「なんか大変そうだから俺帰るわ。」と言い、また大学のある県外へ帰っていった。
弟が帰っていったのを見届けた彼は、ルンルンで廊下を走りだした。
あんたさ、骨折したんじゃないの?
足の角度はもとに戻っており、尻尾をブンブン振っていた。
まさかこやつ、と家族みんなが白い目で疑いをかける。嫉妬か?と。
翌日も特に歩行は問題なかったが、母が一応彼を動物病院に連れて行った。
事情を話し、診察をしてもらった結果、開口一番獣医に「仮病ですね」とはっきり言われたと。
母はこっぱずかしかったと言い、帰宅後に彼に説教をしていた。
神妙な顔で説教を聞いていた彼だが、きっと心の中ではテヘペロという感じだったと思う。
父の愛を独り占めできなかった腹いせに、仮病で家族の気を引き、ライバルを帰宅させる。なかなかの演技派で、アカデミー助演男優賞候補くらいにはなるかもしれない。
にしても、人間の嫉妬の感情も面倒だが、犬の嫉妬もなかなか手に負えないと思った瞬間であった。
紛らわしいからやめてくれ。
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