きただけに、きただけ
ふじこさんから、突然バトンが届きました。
「#エッセイしりとり」
詳しくは、この楽しい企画を始めてくださった、マイキーさんの記事をご覧ください。
いつも山のことばかり書いている私に、エッセイのバトン。
正直、
「私でいいの?」
と思いました(笑)。
ふじこさんは、日々の何気ない出来事を拾い上げて、クスッと笑える文章に変えてしまう方です。
私にはない視点が面白くて、いつも楽しく読ませてもらっています。
そんなふじこさんからいただいたお題は、
「き」
ふじこさんのタイトル
「つかれをいやす、とっておき」
の最後の一文字から、
次は「き」で始まるタイトルを書くことになりました。
さて、どうしよう。
「き」から始まる山のエッセイ……。
考えているうちに、ふと思いつきました。
「きただけに、きただけ」
北岳に来ただけ。
……いや、本当に来ただけになったら困る(笑)。
というわけで今回は、
雨とガスとキタダケソウの話です。
それでは、いってみます。
きただけに、きただけ
雨が降るなら、その前に下山すればいいじゃない!
もうすっかり夏ですね。
お昼頃には積雲が発生する予報。
どこへ行こうかと悩みました。
でも、キタダケソウは今年最後のチャンスかもしれない。
だったら——
北岳に行くしかない。
最初に考えていたのは、奈良田からバスを使うルートでした。
ところが、まだ平日ダイヤ。
うーん。
今回は無理そうです。
そこで、キタダケソウへ最短で行けるルートに変更。
「あわよくば、雨が降る前に下山できるかもしれない」
そんな計画です。
とはいえ、雨がいつ降り出すかなんて分かりません。
「下山中に天然シャワーでクールダウンするのも、それはそれでいいか」
そんな軽い気持ちもありました。
そして歩き始めると——
予報通り、ガスが上がってきました。
このまま降られるかもしれない。
それでも、
キタダケソウだけは外せない。
「行くしかないでしょ」
そう腹を括って、登り続けました。
お目当ての群落に着いても、目に入るのはハクサンイチゲばかり。
似たような葉。
似たような花。
梅雨時期にしか咲かないキタダケソウ。
晴れ間が見込めるのは今日の午前中だけ。
だからこそ来た。
でも——
このまま見つけられなかったら、
「何しに来たんだろう」
そんな考えが頭をよぎり始めた頃。
ありました。
明らかに違う葉。
明らかに違う花。
一輪だけ。
そこに咲いていました。
見つけた瞬間、
「来てよかった」
心からそう思いました。
雨に降られるかもしれない。
山頂から何も見えないかもしれない。
それでも、この一輪に会えただけで十分でした。
すっかりご満悦な気分で、山頂を目指します。
——のですが。
山頂に着いた頃には、積乱雲がしっかり発達していました。
景色を楽しむ余裕はありません。
山頂標識をパシャリ。
一枚だけ。
そして、すぐに下山開始です。
あれだけ楽しみにしていた山頂なのに、
滞在時間は、ものの数分。
でも、不思議と残念ではありませんでした。
今日の目的は、もう達成していたからです。
「山頂まで来たんだから、もう少し……」
そんな気持ちより、
「早く下りよう」
という気持ちのほうが強くなっていました。
積乱雲が発達している。
ここで景色を楽しんでいる場合ではありません。
山頂を踏めたことに満足して、すぐに下山しました。
樹林帯まで下りてきたところで、ようやく一安心。
——と思ったら。
最後の林道で、本降りの雨に捕まりました。
結局、ずぶ濡れ。
「やっぱり降ってきたか(笑)」
でも、なぜか笑ってしまいました。
キタダケソウは一輪だけ。
山頂の景色は真っ白。
最後は雨でずぶ濡れ。
それでも、
来てよかった。
今年最後かもしれない一輪に会えた。
それだけで十分でした。
雨が降るなら、その前に下山すればいい。
そう思って来た北岳でしたが、
結局、雨にはしっかり降られました。
それでも——
きただけに、来た甲斐があった一日でした。
次にバトンを渡したいのは、コンパス みき さんです。
「毎日ワクワク楽しく生きる!」をモットーに、読書や花、旅、タロットなど、日々の「好き」を大切にしながらnoteを書かれている方です。
「好きがわからない。何か始めたい。」
そんな人に、好きのタネを見つけて、自分らしい花を咲かせてほしい。
そんな思いを持って活動されています。
プロフィールを拝見していて、
「好きなものを見つけて、大切に育てていく」という姿勢が、とても素敵だなと思いました。
私も山を歩き始めた頃は、ただ山頂を目指していました。
それがいつの間にか、
「この尾根を歩いてみたい」
「ここをつないでみたい」
と、自分の「好き」が少しずつ形を変えていきました。
今回のエッセイも、そんな「好き」から始まった話です。
そして、私が受け取ったバトンは「き」。
「きただけに、きただけ」とつないでみました(笑)。
さて、次は「け」です。
コンパスみきさん、突然のお願いで恐縮ですが、
「け」から、どんな物語が始まるのでしょうか。
楽しみにしています😊
もしご都合が合わなければ、どうぞお気になさらず。
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ここまで読んでくださりありがとうございます。
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