パロディショートショート|名探偵コニシ~真実は1つ
放課後の密室サッカーボール事件
丹丹(たんたん)小学校の放課後。体育倉庫の前で、小学2年生のコニシくんは深刻な顔をして眼鏡のブリッジを押し上げた。
「……これは、ただの紛失じゃない。計画的な密室強奪事件だ」
事の始まりは、体育係の小島くんが「サッカーボールが一個足りない」と騒ぎ出したことだった。倉庫の鍵は閉まっていたはずなのに、数えるとなぜか一つ足りない。
「フッ、犯人はこの中にいる!」
コニシくんは、一緒にいたクラスメートたちを指差した。
「いいかい、犯人は窓のわずかな隙間から、伸縮サスペンダーを使ってボールを釣り上げたんだ。そして、証拠を隠滅するために……」
「コニシくん、サスペンダーなんて誰もしてないよ」
冷静なツッコミが入るが、コニシくんは聞こえないフリをする。
彼は首元の赤いリボンに向かってボソボソと呟き始めた。
(おかしいな、赤田博士のメカが作動しない……。仕方ない、あれを使うか)
コニシくんは、履いている「キック力増強シューズ(自称)」の横についているダイヤルをカリカリと回した。
「逃がさないよ、犯人さん。真実はいつも1つ!」
「犯人って誰の事?」
「コニシ君、誰に向かってしゃべってるの?」
クラスメートがまたまた冷静なつっこみを入れるが、コニシ君は無視する。
コニシ君は足元に落ちていた空き缶を、犯人に見立てた校門の柱に向かって思い切り蹴り飛ばそうとした。
「くらえっ!」
スカッ。
派手な音を立てて空を切った足は、そのまま勢い余って地面を叩き、コニシくんはその場に転んだ。
「痛たた……」
「あ、コニシくん! ボールあったよ!」
そこへ、体育係の小島くんが教室から走ってきた。
「ごめん、僕がさっき教室に持っていったまま忘れてただけだった!」「……了解しました、警部。どうやら犯人は、自首を選んだようだね」
コニシくんは膝の砂を払いながら、何事もなかったかのように立ち上がった。そしてランドセルの中から「ターボエンジン付き(という設定の)折り畳み式スケボー」を取り出した。
「さて、僕もそろそろ失礼するよ。次の事件が僕を……」
「こら、コニシくん!」
背後から鋭い声が響いた。担任の毛利先生だ。
「学校にスケボーを持ってきちゃダメって、昨日も言ったでしょ! 約束破ったから、それ没収です!」
「あ、いや、これは警視庁の……」
「言い訳しない! 職員室まで来なさい!」
「……了解しました、警部。この事件は、私の完敗です」
「警部じゃなくて、先生でしょ! まったく、アニメの見過ぎよ」
コニシくんはスケボーを先生に差し出し、肩を落としてトボトボと職員室へ連行されていくのだった。
(完)
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