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ペシミストはどうして悟れないのか?ペシミズムと解脱の決定的な違いを解説 │ 哲学ラジオ

本シリーズは哲学科卒の私うぇいが、哲学っぽい話題をざっくり解説する音声コンテンツです。

今回は、この世を厭う点では共通しているはずのペシミズムと悟りが、最終的には異なる道を進まざるをえないということをお話ししました。主なアイデアは大谷崇 『生まれてきたことが苦しいあなたに──最強のペシミスト・シオランの思想』(星海社新書)を参考にしました。

話すスピードがゆっくりに感じられる方には、倍速視聴がおすすめです。

▼主な内容

  • ペシミズムとは、世界を無価値で無意味なもの、あるいは最悪のもの、拒絶すべきもの、厭うべきものとみなす考え方である。

  • 悟り(解脱)とは、この世の全てに執着しなくなることである。悟った者には生にも死にも差がないので、生きたまま死者になることとも言える

  • 苦しみの実在性を否定すること(苦しみなんて実は存在しないと確信すること)が悟りへの道である一方、ペシミストは人生の苦しみに向き合い続けるという道を歩む

  • 悟りはこの世に執着しなくなることであるが、ペシミストはこの世界に執着し続ける。ペシミストは、この世界を嫌悪しつつ生き延び続けてしまう

動画はコチラ👇

導入と本動画のテーマ

皆さんこんにちは。この番組では大学で哲学を学んだ私ウェイが、哲学的なトピックを中心に語っていきます。今回は、大谷孝志さんの著書『生まれてきたことが苦しいあなたに 最強のペシミスト シオランの思想』をもとに、「ペシミストはどうして悟れないのか」についてお話しします。

結論から言うと、ペシミストは「苦しみ」に執着することによって結局生き延びてしまうため、悟ることができないのです。

ペシミスト(ペシミズム)とは何か

ペシミズムとは、ラテン語の「最も悪い(ペシムス)」を語源とし、この世界を最悪なものとみなし、生きることを嫌悪する考え方(悲観主義や厭世主義)のことです。

人生が病気や失敗、不安、死などの苦しみに満ちていると確認するだけでなく、「人生は端的に苦しみそのものである」と考えます。そして「だからこそ生きる価値がある」とポジティブに捉えるのではなく、「人生に生きる価値はない、この世の全てから解放されたい」と考えるのがペシミズムの核であり、それを体現したのがエミール・シオランという思想家です。

悟り(解脱)とは何か

一方、「悟り(解脱)」とは何でしょうか。シオランにおける解脱とは、特定の宗教的実践ではなく「人生からの決定的解放」を意味します。

現世の事物や人生そのものに囚われている自己を解放し、生きながら生を放棄する(ある意味で人間をやめる)ような状態です。苦しみを含めた全てから退き、もはや現世の何物にも関心がなくなり、世界と調和して境界線がなくなっていくような方向性が、悟りや解脱だと言えます。

ペシミズムと解脱の決定的な違い

ペシミズムと解脱は、どちらも「この世は苦しみである(終わっている)」というスタート地点は同じです。しかし、その後の方向性が決定的に異なります。

解脱するためには、苦しみを「何でもないもの」とみなし、最終的には「苦しみすら実在しない(空である)」と思い込む必要があります。
しかし、ペシミストはそれに反旗を翻します。シオランにとって、他の何よりも最も実在性が感じられるものこそが「苦しみ」でした。「苦しみが実在しないなら、全てが実在しないと言える」ほど、彼らは人生の苦しみに徹底的に向き合おうとします。

なぜペシミストは悟れないのか

ペシミストは、人生のネガティブな側面にずっと文句を言い続け、世界を呪いながらも、おじいちゃんになるまで生き抜きます。つまり、悟りが「何にも囚われない状態」を目指すのに対し、ペシミズムは「現世の苦しみ」という強大な敵に執着し続けているのです。

苦しみに執着している時点で現世に囚われているため、ペシミストは絶対に悟る(解脱する)ことができない、というわけです。

振り返りとエンディング

今回は、『最強のペシミスト シオランの思想』をもとに、ペシミストはどうして悟れないのかについてお話ししました。

もし今回の内容が面白かったら、チャンネル登録と高評価をお願いします。関連文献のリンクは概要欄やコメント欄に記載しています。それではまた次回の動画でお会いしましょう。

▼使用文献
大谷崇 『生まれてきたことが苦しいあなたに──最強のペシミスト・シオランの思想』星海社新書、2019年

▼関連・参考文献
梅田孝太『 今を生きる思想 ショーペンハウア──欲望にまみれた世界を生き抜く』講談社現代新書、2022年

ショーペンハウアー『意志と表象としての世界Ⅰ』西尾幹二訳、中公クラシックス、2004年

小島和男『反出生主義入門──「生まれてこないほうが良かった」とはどういうことか』青土社、2024年

森岡正博『生まれてこないほうが良かったのか?──生命の哲学へ!』筑摩選書、2020年

森岡正博・戸谷洋志他『現代思想 2019年11月号 特集=反出生主義を考える──「生まれてこない方が良かった」という思想』青土社、2019年

森岡正博・蔵田伸雄編『人生の意味の哲学入門』春秋社、2023年

L・A・ポール『今夜ヴァンパイアになる前に──分析的実存哲学入門』奥田太郎・薄井尚樹訳、名古屋大学出版会、2017年

しんめいP・鎌田東二『自分とか、ないから。──教養としての東洋哲学』サンクチュアリ出版、2024年
https://amzn.to/46o5CLn

渡辺二郎『新装版 ニヒリズム──内面性の現象学』東京大学出版会、2013年

児玉真美『安楽死が合法の国で起こっていること』ちくま新書、2023年

安藤泰至『安楽死・尊厳死を語る前に知っておきたいこと』岩波ブックレット、2019年

松田純『安楽死・尊厳死の現在──最終段階の医療と自己決定』中公新書、2018年

エックハルト『エックハルト説教集』田島照久訳、岩波文庫、1990年

ウィリアム・シェイクスピア『マクベス』安西徹雄訳、光文社古典新訳文庫、2008年

ウィリアム・シェイクスピア『ハムレット』野島秀勝訳、岩波文庫、2002年

フリードリヒ・ニーチェ『道徳の系譜学』中山元訳、光文社古典新訳文庫、2009年

⁠増谷文雄『釈尊のさとり』講談社学術文庫、1979年⁠

ヘルマン・ヘッセ『シッダールタ』高橋健二訳、新潮文庫、1959年

松尾剛次『仏教入門』岩波ジュニア新書、1999年

末木文美士『日本仏教入門』角川選書、2014年

碧海寿広『科学化する仏教──瞑想と心身の近現代』角川選書、2020年

⁠ロバート・ライト『なぜ今、仏教なのか──瞑想・マインドフルネス・悟りの科学』熊谷淳子訳、ハヤカワ文庫、2020年⁠

道元『正法眼蔵 (一)全訳注』増谷文雄訳、講談社学術文庫、2004年

頼住光子『正法眼蔵入門』角川ソフィア文庫、2014年

脇本平也『宗教学入門』講談社学術文庫、1997年

石井研士『プレステップ宗教学 第3版』弘文堂、2020年

中村圭志『聖書、コーラン、仏典──原典から宗教の本質をさぐる』中公新書、2017年

立川武蔵『ヨーガの哲学』講談社学術文庫、2013年

上田閑照『私とは何か』岩波新書、2000年

上田閑照・柳田聖山『十牛図』ちくま学芸文庫、1992年


鈴木大拙著、上田閑照編『新編 東洋的な見方』岩波文庫、1997年


平野啓一郎『私とは何か──「個人」から「分人」へ』講談社現代新書、2012年

夏目漱石「『私の個人主義』講談社学術文庫、1978年

〇思考の材料
諫山創『進撃の巨人』講談社

市川春子『宝石の国』アフタヌーンコミックス

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