上田小県百話#011〜青木街道:青木村
第十一話 青木街道:青木村
上田から青木村へ向かう国道143号。
昔から青木街道と呼ばれている道である。
この道を走ると、いつも印象に残る場所がある。
真っ直ぐなのだ。
山へ向かっていく道なのに、前を見ると道路がずっと先まで伸びている。
子どもの頃から何度も通った道だが、その頃は、この道の近くをかつて電車が走っていたことなど知らなかった。
上田には今も別所線が走っている。
その別所線の途中にある上田原駅は、かつて鉄道が二方向へ分かれる場所だった。
一方は別所温泉へ。
そしてもう一方は、青木村へ向かっていた。
上田温泉電軌の青木線である。
青木線は国道143号、青木街道に沿うように青木村へ延びていたらしい。しかし昭和13年、1938年に廃止された。
今では線路を見ることはできない。
青木村といえば、五島慶太の故郷でもある。
後に東急を築き、「強盗慶太」とまで呼ばれた人物が、この小県の山あいの村から出た。
そして五島慶太は、上田温泉電軌の設立にも関わっている。
子どもの頃、何も知らずに眺めていた青木街道。
真っ直ぐ伸びる道路の向こうに見えていたのは、ただの田舎道だった。
しかし、その道の近くにはかつて線路があり、電車が青木村まで走っていた。
今度143号を走るときは、少し違って見えるかもしれない。
真っ直ぐ伸びる道路の脇に、もう存在しない線路を想像しながら走ってみたい。
野上総司
