宗教団体の主流と分派、「天理教」と「ほんみち」|第33回宗教マイノリティ理解増進勉強会【5/6】
「第33回宗教マイノリティ理解増進勉強会」には、キリスト教牧師、神道関係者、浄土真宗門徒、家庭連合の信徒ら15人が参加しました。
以下は、天理教系宗教団体元役員のA男さんが、「松本清張著『天理研究会事件』に見る宗教迫害の歴史」をテーマに発表した後に行われた質疑応答の要旨です。
意見交換
宗教迫害と閉鎖性
黒瀬博さん(バプテスト教会牧師)
非常に貴重な話、ありがとうございます。松本清張が描いたのは戦前の話で村上重良は、もう亡くなっておられるので、その後の「ほんみち」に関する資料は、今日の発表ぐらいしかないのでしょうか。
A男さん(発表者、天理教系宗教団体元役員)
書籍でしたら梅原正紀さん(宗教ジャーナリスト)が描いた『ほんみち―民衆宗教の原像』という本があります。
黒瀬さん
ある程度本部からの資料もらっている、ということですか。
A男さん
はい。でも取材源は限られてると思います。大阪の羽衣に本部があります。木造建築だけの小さいところです。一般の人は、そこしか受け付けません。本部以外の施設には入れません。
黒瀬さん
少しは情報が出ていますか。
A男さん
そうですね。、少しは出ています。
インターネットで検索するとユーチューバーの探検記みたいな動画があるんですけど、山奥で何をやっているんだろうというのですね。
今、「ほんみち」の研究者は、いないんじゃないですかね。
黒瀬さん
秘密組織になっているんですかね。
A男さん
国家と激しく争った経験がそうさせているのだと思います。
関西空港の北の方に、見上げるばかりの大きな体育館の10倍ぐらいの教会施設がありますが、入れません。羽衣にある本部だったら行けますが、予約制です。
昔のことですが、門に入ると門番がいて、そこで鑑札をもらいます。その鑑札がないと中には入れません。それぐらい厳しい。特攻警察にいじめられた経験というか、トラウマと言うんでしょうか、そういうのがあるんだと思います。
とも(主催者)
どこの宗教団体も若い人が減ってきていますが、「ほんみち」はどんな感じですか。
A男さん
千葉県に「ほんみち」関東出張所という大きな施設があるので、寄ってみたことがありました。
若者たちが沢山いましたよ。元は天理教の信者だった人が宗旨替えして「ほんみち」に来て、そのまま代々続いているんだと思います。
それで、どっかの宗教団体と同じように、自分で相手を自由に選んで結婚できないらしいですね。「ほんみち」の中で指名制で結婚するらしいです。皆さん(家庭連合の人たち)、お仲間がいた感じじゃないですかね。
参加者一同
(笑)
B男さん(家庭連合二世)
その中では結構いいコミュニティが出来上がってるい感じですか。
A男さん
そうだと思います。
中央線と支流
C男さん(家庭連合信徒)
天理教は、いくつくらい分派があるんですか。
A男さん
分派としては、大きなところでは「ほんみち」だけです。天理教は聖地信仰、聖地宗教です。でも「ほんみち」は人間甘露台という天啓宗教です。
「ほんみち」から枝分かれした分派がありますが、「枝分かれ」と言われている人たちは、自分たちが枝分かれとは思いませんよね。中央線だと思うものです。
宗教学者が分派の系図を作るから、こういう「分派」があって、その分派の支流にこの宗教団体がある、みたいになるわけでね。
D男さん(浄土真宗門徒)
Wikipediaで調べたら分派が24~27ぐらい出てくるんですが、ほぼ消えたんでしょうか。
A男さん
どうしてそうなるかと言うと、天理教は本部の「じば」(聖地)という「甘露台」がないといけなんですね。
天理教から分派になると「じば」を放棄しないといけない。だから天理教自体の分派はあり得ないんです。「聖地」への出入り禁止になったら困りますからね。
でも天啓宗教は扇一つと天啓者一人いればできます。だから神棚を作って、「私は今日から何々教です」と言えばできます。
私の知り合いで、当時20歳の若い人が自分の教会を作ったことがあります。それを宗教学者が取材すると分派に扱われます。
そうやって天啓宗教は分派する。でも「扇の伺い」で説いたことが実現するかどうかは別ですよ。
例えば、「うちの息子夫婦に子供が生まれないんです」と相談者が来たとします。それを「扇の伺い」で霊的な原因を解きます。その解いたことが実現すればこれは合っているとなりますが、実現しなければインチキだったことなります。
そうして自然淘汰されていく。だから消えていくということは、嘘をついているとは言わないけど、原因と結果が一致しないから、結局、「あそこの神様はインチキだと」なってしまう。
枝分かれしていきますが、機能してるところは少ないと思います。
「おばあさんがやっていたけど、おばあさんが亡くなって、もう神棚だけしか残ってない」というのは結構あります。
黒瀬さん
私も戦前の宗教弾圧に関心を持っていましたが、知らないことが多くあったというのは、今反省しています。
どうして、こんな重要な話が一般に知られていないのかと思いましたが、どうしてでしょうかね。
A男さん
大本は本部が爆破されたので大きなニュースになりましたが、天理教は軍部の言いなりになったので、そのまま神殿は残っている。自分たちも語りたがらない。
本来発言すべき「ほんみち」も閉ざしている。国家権力にいじめられた痛みがトラウマになって、オープンにしていないみたいですね。
黒瀬さん
もしかしたら、二代目の教祖が秘密主義の方に傾いたとか、あるいは初代の大西愛治郎さん自体が、秘密主義の方に傾いていたとか。
A男さん
「岩戸隠れ」という言葉があるんですね。大西さんが人生の中で何回か岩戸隠れするということがありました。警察から追っかけられた時に、岩戸隠れと称して転々とするんですね。ただの逃亡ではなく、「自分は神の命令のまま動いているんだ」ということです。
終戦の直後にもっとオープンにしてアピールしていたら良かったんでしょうけど、多分それはしなかったと思います。すごくストイックな教団なんですね。
黒瀬さん
今も「自分が天皇だ」みたいに言っているんですか。
A男さん
今はさすがに言ってないですね。今言うと、逆にバッシングされるかもしません。今は、「もし地球が破滅した時に、自分たちは生き残れるんだ」とね。「だから『ほんみち』の信者になりなさい」という方向になっていると思います。それで結束するみたいな感じだと思います。
黒瀬さん
そうすると、昔の「ほんみち」と今は違うんじゃないですか。
A男さん
違う。これは別に「ほんみち」だけじゃなくて、他の宗教団体にもこういうのがあると思います。教祖が始めた段階の精神と今の教団の姿勢が違うというのは。(続く)
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