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ハイポニキウム


ある日、妻が、
「ハイポニキウムを育てる」と言った。

聞いたことない言葉すぎて、
「へーすごいじゃん」とか言って流した。

妻が知ってて、私が知らない言葉があるということを、脳が拒否した。

なんとなく言葉の雰囲気的に、植物か熱帯魚か、そのへんだと思った。でもいきなり熱帯魚を飼うってことはないだろうから、やっぱり植物か。
ホームセンターの園芸コーナーにそういう名前のサボテンがあった気もする。

なんか育て始めればそれが何か分かるんだから、まあいいか。と思っていたが、待てど暮らせど、いつまで経っても何かを育てている気配がない。

「育てる」とは確かに言っていた。

それは間違いない。

じゃあどこで?何を育てているのか?

パラレルワールドを行き来して何かを育てている可能性も2%くらいはある。

聞く。

「この前育てるって言ってたやつどうなった?」

「育ててたけど間違えて切っちゃった」

「!!」

育ててたし、切ってた!
パラレルワールド!

「ふーん…」

「ほら、見て」

妻は両手を前にだして、
「オペを開始します」のポーズをとった。

「あぶっ!!」

「なに?」

「いや…ハイポケ?ポキ?なんだっけ?」

「ハイポニキウムね」

「そうそう…知ってる」

ハイポニキウム(爪下皮)とは、爪の裏側で指先の皮膚と爪をくっつけている薄い皮膚のことです。細菌の侵入を防ぐバリアの役割や、爪をピンク色の部分(ネイルベッド)から剥がれにくくする重要な働きを持っています。

もっとあったはずだろ。
それっぽい、わかりやすい名前が。
ツメノシタとか
ツメノウラとか
ツメノヤツとか。

ハイポニキウム…
ハイポニキウム…
ポニキ…ポニキ?

だめだ。
つけていい名前の限度を越えている。

いいだろう。
これが許されるのなら、
私だって自分の自転車を、
スーパーメガサイクロン号と呼ばせてもらう。

ポキ?ポケ?ポキ?ポニキ?

知らない国の言葉 鼓膜を滑る
思考の回路が焼き切れて とんだ
ハイポニキウム サボテンか熱帯魚

待てど暮らせど 気配がしない
パラレルワールド 秘密の庭園
間違えて切っちゃった What?
その一言に バチっと blackout

オペを開始します 十本の刃
指先に潜む 透明なバリア
ツメノシタ ツメノウラ ツメノヤツでいいのに
誰も知らない ハイポニキウム

ぽい名前 ぽい名前 もっとあるはず
なんでどうして ハイポニキウム
繰り返すたび 脳が拒否する
限度を越えた響き それなら
僕はsuper mega cyclone BETA

妄想が疾走する 咆哮
風を切り裂く メガサイクロン
理解されなくても それでいい
Absurdity. Reason. Belief. Doubt.

オペを開始します 十本の刃
指先に潜む 透明なバリア
ツメノシタ ツメノウラ ツメノヤツでいいのに
誰も知らない ハイポニキウム

オペを開始します 育成の残火
頭をよぎる プライドのバリア
ツメノシタ ツメノウラ ツメノヤツでいいのに
誰も知らない ハイポニキウム

ハイポニキウム…レア、モンスター
ハイポニキウム…悪魔の子
ハイポニキウム…遠い親戚
ハイポニキウム…誰が言った?