もったいないから本を書いた。
はじめまして、株式会社With Midwifeの岸畑聖月です。
14歳のときに闘病を経験し、「自分はなぜ生かされたんだろう」と考えたところから助産師を目指して、病院で働いて、でもそれだけじゃダメだと思って、そのあと人事・労務の視点も身につけて、企業専属で“働く親(はた親)”の両立支援をずっとやってきました。
そんな私が、なんで今このタイミングで『働く親のためのサバイバルガイド』を出したのか、ちゃんと残しておきたいなと思います。
「もったいない」は人生のキーワード
結論から言うと、バラバラに存在する経験知を、集合知にしたかったからです。
私が出会ったはた親のみなさんは、それぞれが「これで助かった」「これは詰んだ」「こうしたらいけた」っていう貴重な知恵を持ってるんです。私の専門的な知識ももちろんあるけど、それ以上に“生きた経験”が誰かを救ってる場面を、私は何度も見てきました。でも、それって結局、人づてでしか広がらない。
私たち助産師がひとりひとりに伴走できる人数にも限界があるし、SNSだけだと断片的で流れていくし、毎年毎年、同じところで同じようにしんどくなってる人が出てきてしまう。これは社会として、もったいなさすぎるなって、ずっと思ってました。私の人生のキーワードは「もったいない」かも。
この10年で、2015年の女性活躍推進法をきっかけに、働きながら子どもを育てることが前提の制度整備は急速に進んできました。働き方改革も進んだし、育休の制度も変わった。なのに、現場の「どうやるの?」「どこで詰むの?」「どう乗り越えるの?」は相変わらず”当事者任せ”で、SNSの断片とか友達の経験則でなんとか毎日をまわして、正解が見えないまま意思決定を迫られて、同じところでつまずいて、同じところで、みんな疲弊していく。これって、当事者が孤立したり、夫婦が摩耗したり、キャリア不安になったりしても、「それぞれの家庭の頑張り」で片付けられがちで、いやいやそれは違うでしょ、って思ってました。
編集者・あやさんが想いを強くしてくれた
だから私は新たに、1000人超の“はた親”の声を集めて、共通するつまずきを整理して、気合いで乗り切る方法じゃなくて、しんどさを“仕組み化”して軽くするための航海図として、これまでの知見と想いをぎゅっとまとめました。育児の本はあるし、キャリアの本もある。でも正直、この知識が合致した書籍って今まで世の中に「ちゃんとした形」で存在してなかったんです。でも、はた親の現実って、そこ全部が同時に起こるじゃないですか。。。なのに「全部を一緒に扱って、しかも現実に使える形で」まとめてくれてる本がない、だからこそ、これを書かないといけない、っていう使命感がありました。というか編集者の曽我さんにそこの想いは強くしてもらったかな。
もったいないVS私の弱さ…
で、ここからは私の情けない話なんですけど、これ…書くの、というか本書くのって、めちゃくちゃ大変でした。笑
というか、NASU前田さんにnote書け!って言われて数ヶ月寝かしてしまうくらい、文字を紡ぐの苦手。(この文章も読みにくくてすいません)
まだ小さな組織とはいえふつうに会社やってますし、経営者として、会社に影響が出ないように、仲間に迷惑かけないようにしながら時間をひねり出すは、想像していたよりも本当にきつくて、何回も「無理かも」って思いました。夜中に書いて、朝また仕事して、休日も書いて、そんな中引っ越しやプライベートもあって、家族に頼りまくって、それでも締切が近づいてきて焦って、もう心折れそうで。涙
あやさん何度も提出遅れてごめんなさい。途中で何回か挫折しかけました。ここは使われないかもしれないから、ちょっと熟考するのやめようかな、提出優先しようかな、とか。
でもそのたびに、相談を受けてきたはた親の顔が浮かんで、「今まさにしんどい人がいるのに、ここでやめたら、手を抜いたら一生この本は世の中にないままや」って思って、なんとか戻ってきました。支えてくれた人たちには本当に感謝です。特にあやさん。ほんとに。
「はた親本」ははた親の”交差点”
そして、書きながら強くなった今の本当の願いは、ただ役立つノウハウを今のはた親に届けること以上に、この本が、はた親が世代を超えてつながる交差点になることです。先輩はた親がもがきながら見つけた知恵を受け取り、いま渦中にいる人が「自分だけじゃない」って思えて、さらに正しく次の世代へ手渡していく。過渡期をひとりで耐えるんじゃなくて、この本を片手に、みんなで、ウェルビーイングに、ありたい姿に向かって乗り越えていきたい。そのために私は、本という形を選びました。
それと、ここには私が起業した原点もつながっています。
病院という白い壁の中に、助産師の叡智が閉じ込められていることは社会にとってもったいないと、ずっと思ってきました。本当に必要な人に届かないなら、どれだけ尊い知恵でも、存在しないのと同じになってしまう。残念だけど。助産師の知恵って、妊娠・出産だけじゃなくて、暮らしの基盤、家族の意思決定、働き方、心身の回復、パートナーシップにまで効くのに、まだまだ社会に開かれていない。だからこそ、業界の叡智を社会のために、本を通じて届けるべきだという使命感がありました。
”図書館に配架される”ということ
そして今回、全国の図書館に配置されることも決まりました。
今日、決まりました。
図書館への配架は全ての書籍ができるわけではないそうで、「知る権利」の保障、知識の保存、地域の教育・情報拠点としての機能を果たす重要な意味を持つからこそ、選ばれし本だけなのだそうです。そう思うと、図書館の本全てに尊敬の念が絶えません。
そしてこれは、家庭の状況や経済状況に関係なく、必要な人がアクセスできるということでもあります。その未来を想像すると、「私がやりたかったの、これやったんや」って何度も思います。この本が、はた親のみなさんの今の、そして未来の航海が少しでも楽になる一助になれたら嬉しいです。
すでに予約開始、3/5発売です。デジタル化する今だからこそ、お守りみたいに“本”として手元に置いてもらって、必要なときにパッと開いて、ずっと隣で伴走できたらと思っています。
この本を、一生大切に育てていきます。
