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映画「時には懺悔を」を見る

 大藪春彦賞受賞の希代のハードボイルド・ミステリー作家・打海文三の「時には懺悔を」が中島哲也監督により映画化されましたので見てきました。
 この小説は映像化するのが難しいと言われていただけに、中島哲也監督がよくぞ映画化してくれたと感謝の気持ちで一杯でした。

 予想にたがわず、世間から見ればどうしょうもない、過ちを犯して、絶望的な状況に追い込まれた人や傷を抱えて苦しんでいる人が、そんな苦しみのなかで見せる、誰かを無条件で受け入れる、そんなあたたかさに心動かされる映画でした。

 みんなに死んだ方がマシと思われている悪徳私立探偵の米本(佐藤二朗)が殺されるところからこの映画は始まります(ただ、この米本は「この世に神さまなんているのかな」という謎の言葉を残し、意外な面があることが後にわかるのですが…)。
 なぜ殺されたのかを私立探偵仲間の佐竹(西島秀俊)と前科を持つ私立探偵見習いの聡子(満島ひかり)が探ります。

 米本の死因を探っていくうちに、匿名の女性依頼者が、府中のクリスマスイブの日に偶然テレビに映っていた冴えない男と幼い男の子の写真を見せて探してほしいと米本に依頼していたことがわかるのです。

 佐竹と聡子はその冴えない男を探していくうちに、その男、明野哲夫(宮藤官九郎)が府中の市営住宅に生きているのが奇跡といえるほどの重度の障害のある男の子、新と一緒に住んでいることを突き止めるのです。その男がいない隙に、佐竹が盗聴器を仕掛け、その部屋をのぞけるアパートを借り、聡子がその男と障害児の生活ぶりを盗聴するのです。

 打海文三の原作小説でもそうですが、その重度の障害がある新ちゃんという男の子は、プーとオナラをしたり、うわうわと喋ったりして、笑ったりして、とても可愛いのです。この新ちゃんの可愛さこそが救いであり、この「時に懺悔を」という小説および映画の真骨頂なのです。それは、重度の障害を持つ子供たちに対する偏った見方を一変させ、打海文三だけが描きえた、かつてないミステリーであり、傑作ミステリーであるゆえんなのです。さらに言えば、打海文三の優しさがあるのです。

 映画のなかでも聡子は新ちゃんの可愛さにぞっこんになり、髪を振り乱して新ちゃんをなんとか守りたいと考えるようになるのです。この満島ひかりが演じる聡子の演技は切ないくらい圧巻の演技と言えましょう。

 そして、さらに探っていくうちに、重度の障害を持った新ちゃんという男の子の母親が民恵(黒木華)で茨城に住んでいることがわかるのです。その民恵が米本に冴えない男と重度の障害のある新の所在を調べほしいと依頼した匿名の女性だったのです。
 そして、冴えない明野という男が生まれてしばらくした赤ん坊の新ちゃんを病院から誘拐した男だということもわかるのです。

 これ以上書いていくとネタバレになりかねないのでやめておきますが、新ちゃんを誘拐した明野が、汚い部屋のなかで新ちゃんにスプーンでハチミツ入りのカレーライスを食べさせたり、痰を取ってやったり、風呂に入れてやったりしている姿も心動かされます。宮藤官九郎の演じる冴えない男の演技も力みがなくていいですし、
「俺がこの子をはげましているんではなくて、この子にはげまされているんだ」というセリフにも泣かされます。

 このほか、演技人には佐竹の妻を演じる柴咲コウ、私立探偵会社アーバン・リサーチの上役を演じる役所広司や片岡鶴太郎など豪華な顔ぶれとなっています。

 打海文三の原作と映画では、すこし違ったところもありますが、この際、打海文三の小説「時には懺悔を」を読んでその違いを味わってはいかがでしょうか。
 それにしても、「時には懺悔を」というタイトルは、ハッと自分をかえりみさせてくれる、ところがある、秀逸なタイトルではないでしょうか。この映画は生きてるって何だろうと考えさせてくれる、そんな映画だと思いました。
 最後に新ちゃんを演じた男の子、しんすけちゃんに拍手をおくりたいと思います。そして、打海文三よ、こんな名作を残してくれてありがとう。

ありし日の打海文三

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