近づいて、遠のいて、「安達としまむら」
「隠れた名作」って言葉がある。
自分にとっては面白いのに世間では知られてない作品を
広めるための、いわば合言葉みたいなものだと思う。
でも、ホントのホントに隠れた名作は、
そんなタグにすら引っかからない。
私はそんな作品を発掘するのが好きだ。
ホントに面白い作品なら、もっともっと広まって、
作者にもいっぺえお金が入ったら、
需要と供給のサイクルがぐるぐる回っていくかもしれないし。

今回紹介したいのは、
マンガ版「安達としまむら」だ。
現在8巻まで刊行化されている。(2026/07/19時点)
原作はラノベで13巻も発刊していて、
十分すぎるくらい人気作ではある。
スピンオフも含めれば16巻もあるし、
アニメ化もしているし。
けれど、マンガ版はあまり知名度がない気がする。
「安達としまむら 感想」と検索してみると、
アニメ、ラノベは熱烈な感想文がヒットするのですが、
マンガ版はぜんぜんないのです。
主観of主観なのだけれど。
なまじどのメディアも面白いだけあって、
「安達としまむら」というコンテンツ自体に人気はあるけど、
各メディアによって母数が全然違うのが原因の一つなんじゃないかと。
ともあれそんな事情抜きに、
マンガ版はめちゃんこ面白い作品で、
個人的にもお気に入りのマンガです。
これを読んでくれる人にとって、
「何も知らないマンガ」から、
「ちょっと気になるマンガ」…くらいになれば幸いです。

安達としまむらとは?
女子高生たちのラブコメ&ガールズラブ作品だ。
基本的にはふわふわとしたゆるいギャグが展開されるのだけれど、
作品の根幹には、人と理解しあえないもどかしさが痛々しいくらいに表現されている。


安達はしまむらと仲良くなりたいのに、
しまむらにとってはあくまで友人の一人であり、
自分から安達に踏み込もうと思わない。
いつ壊れてもおかしくない関係性を
安達は壊れないように大切に繋ぎ止めようとする。
他にも、母親との距離感がつかめず、
いつも上手く話せない安達。
幼少期の親友と再会できたのに、
昔のように明るく話せず、
表面的な対応ばかりしてしまうしまむら。
このように、人が抱える生きる苦しみを
繊細かつ叙述的に描写する、
切なく、そして温かな作品だ。
本作では、特別なことはほとんど起きない。
どのキャラも何かとびぬけた才能だとかは持ち合わせてないし、
派手なイベントも起こりはしない。
けれど、ありふれた日常を、丁寧に、ゆっくりと積み上げていく。
ときどき人との距離が遠ざかりながらも、一歩ずつ距離を縮めていく。
そんな儚さに満ちた作風が、
個人的にはたまらなく好きだ。
本作のテーマ性をもとに類似作を挙げれば、
「エヴァ」や「夏目友人帳」あたりが近しいと個人的には感じる。
これらが好きな方なら、ハマりやすい…かもしれない。
このマンガの良さ

原作リスペクトに満ちた濃密な描写
画像は、安達がクリスマスにしまむらと遊ぶシーン。
ここで、安達はチャイナドレスを着てきます。
何故そんなものを、というのは
安達は中華料理店のアルバイトで、
制服としてチャイナドレスを着ているのです。
(どう考えても寒いし不自然であるのに)
クリスマスの日に着てきたのは、
たまたま店を訪れたしまむらに
「かわいい」といわれたから。
さすがにドレスの上に安達はダッフルコートを着込んでいるのですが、
ボタンを一番上以外はずして、すぐチャイナドレスを
しまむらに見せられるようにしているのですよね。
こまけぇぇぇぇぇぇ!
原作だとこんな描写はないので、
作者の柚原もけ先生が補完しているのです。
キャラクターの思考を忠実にトレースし、
「らしさ」が出るようにしつつ、マンガならではの手法で
原作からさらにブラッシュアップしようとする姿勢。
もうコミカライズとしてこの上ない作風です。
なんなんだこの完成度は?

他にも、夏祭りに安達としまむらが遊びに行く時。
安達が母親に髪を結ってもらうのですが、
このシーンも原作にはありません。
いえ、厳密にはあるのですが、
原作はしまむら視点と安達視点を交互に切り替わっていて、
夏祭りのシーンはちょうどしまむら視点。
安達が「母親に髪を結ってもらった」とは言うものの、
直接的な描写はなかったのです。
が!が!
髪を結ってもらうってイベントは超重要なのです。
安達母と安達は仲がぎこちないです。
仲が悪いわけではないのですが。
お互いにどう接したらよいかわからず、
いつもお互い不干渉な二人が、
少しだけ同じ時間をともにする。
会話もほとんどしないけれど、
心の奥では確かに繋がっている。
そんな親子の姿をありありと表現されており、
もうね、柚原先生は天才だなと。(語彙力皆無)

繊細な心理描写
原作からしてモノローグが多めなのですが、
マンガ版においても、キャラクターがもちうる感情が
余すことなくダイレクトに表現されており、
柚原先生の手腕には感嘆するばかりです。

特に6巻。母方の実家に帰省したしまむら。
10年来の友達である犬のゴンと再会するも、
年老いて寿命が近づきつつあるゴンに対して、
言葉にならない苦さを感じるしまむら。
ひとつもセリフがないのに、これほど
しまむらの苦しさが伝わってくるなんて…
その他良いところ
・カバー裏に四コマ漫画が掲載されている。
マンガ内で拾いきれなかったネタなどが登場しており、
最初から最後まで見どころタップリ。
より主観的な感想

表紙、キレイすぎない!?
柚原先生の絵はめちゃくちゃ上手い。
個人的には6巻の表紙があまりにも綺麗だったので
購入を決め手にしたくらい。

個人的には4巻の表紙も特に好き。
原作にはない夜で歩いてるシーンなのですが、
あどけない二人の表情や立ち振る舞いが、
たった一つの不満点
ひとつだけ不満を挙げるなら、3巻の21ページにて、
しまむらが腕時計をつけてるシーンがあること。
しまむらの性格上、人との待ち合わせの
5分ぐらい前に着そうだけど、
わざわざこまめに時間を確認するほどではない気がして。
しまむらは、時間という自分をある種縛り付けるアイテムを
好まないのでは?と思うから。
おわり
ラノベ、アニメ、マンガ…
全部超面白いなんてまったくもって贅沢な作品だぜ。
まあ、マイナーな作品だけあって、
読むハードルは高い。
マンガアプリにて無料で見れたりもしないので、
紙かKindleとかで単行本を買うしかないし。
その分お金を出す価値はある、
なんて無責任なことはいえない。
けれど、安達としまむらにちょっとでも、
興味をもってもらえたら嬉しい限りです。
まあ、とっつきやすいアニメなんかを見て、
興味が湧いたら買ってみるってのも良いかもしれない。
と、雑な締め方になってしまったけど、
ともあれ閲覧ありがとうございました。
