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yesyoshino
事務所にみかんが届いた日|エッセイ
ある日、俺が所属しているコンパニオン事務所に、ひとつの段ボールが届いた。
中身は、みかん。
どうやら女の子と客の会話の中で、
「みかん送ってあげるよ」という話が出ていたらしい。
女の子は店の名刺を渡していて、
そこに送られてきたのが今回の荷物だった。
事務所の真ん中に置かれた、大量のみかん。
自然と話題は、その客の律儀さに向く。
「送ってあげるよ」なんて会話自体は、別に珍しくない。
その流れで個人的に繋がろうとする男も多い。
ただ、そこはちゃんと線を引く。
「ありがとう、嬉しい」と言いながら店の名刺を渡せば、
大抵はそこで空気が変わる。
ああ、住所は教えてくれないんだな、と。
でも今回は、それを越えてきた。
社長も少し姿勢を正して、
「これはちゃんと礼をしないとな」と言った。
そのやり取りを見ながら、ふと思った。
言ったことを、実際にやる人間の強さみたいなものを。
たぶん、あの客にとっても、
これを送ることに特別なメリットはなかったはずだ。
個人的に繋がれるわけでもない。
それでも、その一手で、
社長の中での位置が変わっている。
「ひとこと返さなきゃいけない人」になっている。
なるほどな、と思った。
その日の帰り、
出勤していた10人でみかんを分けた。
俺もいくつかもらって、深夜に帰る。
家に着いて、リビングでみかんの皮を剥きながら、
顔も知らない「みかんの男」に、思う。
確かに、俺もそういう人が好きだな、と。
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物好きの投げ銭で甘いものを食べたい。