「安定した会社にしなさい」が、子どもに届かない理由〜キャリアセンター職員が考える、親の価値観と子どもの就活〜
はじめに
「できれば、安定した会社に入りなさい」
子どもの就活が始まると、そう思う親は少なくないと思います。
大きな会社。
名前を知っている会社。
福利厚生がしっかりしている会社。
親としては、子どもに苦労してほしくない。
だから「安定」を求める。
その気持ちは、とても自然なものだと思います。
ただ、ここで一度考えてみたいことがあります。
そもそも「安定した会社」とは、どんな会社なのでしょうか。
大企業なら安定なのか。
有名企業なら安心なのか。
今は、絶対につぶれないと言い切れる会社などありません。
会社が続いていても、事業や部署、働き方が変わることもあります。
そして何より、
親が考える「安定」と、子どもが考える「安定」は同じとは限りません。
今回は、そのズレについて考えてみます。
1.「安定しているから」で会社は決められない
僕はこれまで約15年間、3つの大学でキャリアセンター業務に携わってきました。
学生からは、
「親は大手に行ってほしいみたいです」
「公務員の方が安心だと言われました」
「その会社は知らないからやめた方がいいと言われました」
といった話を聞くことがあります。
親としては、子どもの将来を心配しての言葉です。
ただ、
「安定している会社だから、そこにしなさい」
と就職先を決めてしまうのは、今の就活ではかなり慎重になる必要があります。
そもそも「安定」の意味は、人によって違うからです。
会社の規模なのか。
給料なのか。
転勤がないことなのか。
休みが取れることなのか。
無理なく長く働けることなのか。
一つの会社に長く勤めることではなく、
どこでも働ける力を身につけることを「安定」と考える人もいます。
2.親の物差しと、子どもの物差しは違う
会社選びの基準は人それぞれです。
仕事内容。
勤務地。
給与。
休日。
社風。
人間関係。
成長できる環境。
働き方。
だから大切なのは、
親の物差しだけで、子どもの就職先を測らないこと。
親の価値観が間違っているわけではありません。
これまで働き、生活してきた経験の中でできた大切な物差しです。
でも、その物差しをそのまま子どもに渡す必要はありません。
むしろ知りたいのは、
子どもの物差しは、何を測っているのか。
ということです。
「何を大事にして会社を選んでいるの?」
「どんな働き方をしたいの?」
「なぜその会社に興味を持ったの?」
そんな問いから、本人の価値観が見えてきます。
3.「知らない会社=不安」とは限らない
親が知らない会社でも、業界では高いシェアを持っていたり、本人がやりたい仕事ができたりする会社はあります。
もちろん、知らない会社なら調べることは必要です。
仕事内容や待遇、働き方、事業内容。
情報を集めることは大切です。
ただ、
「私は知らない会社だから不安」
と
「危ない会社だからやめた方がいい」
は違います。
知らないなら、一緒に調べればいい。
それだけでも、親子の会話は変わります。
4.会社名より「なぜそこなの?」を聞く
就活中の子どもと話すとき、
「どこの会社を受けているの?」
だけではなく、
「どうしてその会社がいいと思ったの?」
と聞いてみてください。
大切なのは、親と同じ答えかどうかではありません。
本人が自分なりの理由を持っているかどうかです。
情報不足なら、調べる材料を増やしてあげる。
迷っているなら、話を聞く。
必要ならキャリアセンターなど第三者に相談する。
親が答えを決めるのではなく、
本人が自分で選べるように支える。
その方が、長い目で見れば大切なのだと思います。
5.「会社が安定している」と「安定して働ける」は違う
どれだけ有名な会社でも、
仕事内容が合わない。
人間関係が苦しい。
働き方が生活に合わない。
そうなれば、本人にとって安定とは言えないかもしれません。
逆に、親が知らない会社でも、
やりがいを感じられる。
自分の強みを生かせる。
無理なく働ける。
そんな環境なら、長く働ける場所になることもあります。
だから、
「安定した会社か?」だけではなく、「この子が安定して働ける場所か?」
という視点も大切です。
最後に
「安定した会社に入りなさい」
この言葉の奥には、
「苦労してほしくない」
「幸せになってほしい」
という親の愛情があります。
だから、その気持ちを否定する必要はありません。
ただ、親が考える安定と、子どもが考える安定は同じとは限りません。
親の物差しで測る前に、
「あなたの物差しは、何を測っているの?」
というニュアンスで聞いてみる。
仕事内容なのか。
働き方なのか。
成長なのか。
人との関係なのか。
その答えを知ることが、親ができる就活支援の一つなのだと思います。
会社の安定を探すこと以上に、
自分の価値観を知り、自分で選べること。
それが、これからの時代の「安定」なのかもしれません。
次回は、
「親が直しすぎた志望動機は、面接で弱くなる」
について書いていきます。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。
このnoteでは、大学職員・キャリアセンターでの経験をはじめ、サッカーや子育て、日常の出来事から、人や組織の成長について考えたことを発信しています。
少しでも参考になりましたら、スキやフォローをして、また読みに来ていただけるとうれしいです。

