富野由悠季、現在「ヒミコヤマト」の絵コンテ制作中を公言
今回は、少し富野由悠季氏のことについて書いてみたい。

・・というのも、つい何日か前のことだがYouTube「mirevaTV」で富野さんの最新インタビュー動画が公開されたんです。
その内容を詳しく知りたい人は直接動画をチェックしてもらった方がいいんだが、ここではその概要について軽く触れていこうと思う。
今回のインタビュアーになったのは上の画の左側の人物で、角田陽一郎さんという人。
元TBSディレクターで、かつて「さんまのからくりTV」や「金スマ」などのヒット番組を手掛けてきたキャリアらしい。
今はフリーになり色々やってるみたいだが、そのひとつにはインタビュー系雑誌の編集長というのもやってるみたいで、どうやら今回はその誌のゲストとして富野さんがチョイスされた経緯みたいだね。


まぁ、内容は相変わらずの舌好調でしたわw
しかし、せっかくこのタイミングでインタビューするなら、旬の話題として「GQuuuuuuX」や映画「閃光のハサウェイ」に対する富野さんなりの感想(というより、そもそも彼は見てるんでしょうか?)をできれば引き出してほしかったんだが、なぜか今回そこにはノータッチでして・・。
だが、このインタビューの中で「おっ!」と思えたことがひとつだけあり、それは何かというと、
現在の富野さんが、噂の新作「ヒミコヤマト」絵コンテ制作作業の真っ只中だということ!

・・いやいや、ちょっと安心しましたよ。
「ヒミコヤマト」構想は何年も前から出てたにも関わらず、その後具体的な進捗の情報が全然出てこなかったもんだから、正直「企画、消えたのか?」とさえ思ってたからね。
ただし、このインタビューの中で若干の不安要素も・・。
それというのも、今回富野さんは「絵コンテが全然進まない」と意外なことを漏らしてましたから。
それがどうしたの?と皆さんは思うかもしれないけど、いや、こういう話は富野さんに限って非常に珍しい話なんです。
なぜって、彼は「アニメ史上最も絵コンテをたくさん描いた男」であって、その描き上げる驚異的なスピードには昔から定評ありましたからね。
事実、彼自身「絵コンテ描くのに苦労してる奴は、才能が無いんだから業界を早く辞めた方がいい」って、割とつい最近までハッキリ言い切ってたじゃないですか・・(笑)。
その彼が、ここにきて「描けない」と漏らすのはそれなりの一大事である。
彼も現在84歳、やっぱ老いましたかねぇ?

まぁ、我々ファンはそんなには焦ってませんので、どうぞゆっくり作業してください。
一応、完成にはあと数年かかると覚悟しておきますので・・。
なお、このインタビューの中で富野さんは「ヒミコヤマト」の内容については特に何も触れませんでした。
ただ、私としては何となくその輪郭が掴めた気がしまして・・。
というのも今回のインタビューの中では、たびたび「Gのレコンギスタ」の話題を富野さんは出してきたわけです。
その話を聞く限り、どうも富野さんは
今さらだけど「Gレコ」の不評にあまり納得をしてなかったみたいなんですよw

なんかさ、こういうところがカワイイでしょ(笑)?
彼は、このインタビューで「全然伝わってない」、「ここまで噛み砕いてるのに、まだ内容が伝わってないことに驚いた」と繰り返し「Gレコ」の反響について言及したのよ。
ようするに彼が言わんとしてることは、既存「ガンダム」ファンの着眼点が富野さんの意図したところ(伝えたいこと)とは完全にズレてるということなんですね。
富野さん的には「どうでもいいこと」にばかりファンは注目/執着をしてて、そもそも、彼らが作品を評価するポイントがもう既に「的外れ」ということなんだわ。
これは、暗に「ファンの知的水準の低さ」を嘆いてるともとれる語り口で、相変わらず、こういう辛口なところだけは今なお健在でして・・(笑)。

で、このへんの話を聞いてて私が率直に思ったのは
「富野さん、次の『ヒミコヤマト』は『Gレコ』の<やり直し>をするつもりなんだろうな・・」
ということである。
前回「伝わらなかった」ことを、今度こそ伝えてやろう、と。

・・で、まず大前提として皆さんにご理解いただきたいのは、そもそもが「Gレコ」という作品自体、これは「∀ガンダム」の<やり直し>だということ。
「えっ?そんなの初耳!」という人も多分ごく一部にはいるんでしょうが、じゃ、この2つの物語のあらすじを少し思い出してみて下さい。
「∀ガンダム」
月世界の民が地球に帰還しようとして原住民とモメる物語

「Gのレコンギスタ」
月世界の民が地球に帰還(レコンギスタ)しようとして原住民とモメる物語

はい、この2つの基本プロットは全くの同一です。
さらにいうと、この2つは主人公の設定もまた全くの同一です。
「∀」主人公:ロラン
生まれは月世界だが、<戦争>では地球サイドに立って闘う

「Gレコ」主人公:ベルリ
生まれは月世界だが、<戦争>では地球サイドに立って闘う

ここまで同一だと、さすがに「Gレコ」が「∀」の<やり直し>であることぐらいは誰でも気付く。
ただ、ここで一番気付いてほしいのはそういうことじゃなく、この「設定」を富野さんが一体どこから引用してきてるのか、ということの方なんです。
天界の者が下界に降り、そして下界に馴染み、やがて<戦争>では下界サイドに立って天界と対峙する。
・・はい、この概要で皆さんもピンときたでしょ?
そう、これって明確に「日本神話」出雲の国譲り(⇒天孫降臨)のオマージュなんですよ。

というか、そもそも「出雲の国譲り」を皆さんはご存じですか?
これの発端は、アマテラスの弟・スサノオが天界を追放されて下界に降り、やがて出雲の地にクニを築いたところから全てが始まるんですよね。
で、スサノオも隠居して彼の後継オオクニヌシの代の時、天界のアマテラスの使者が出雲を訪れて「国を譲れ」とか無茶なことを言ってくるわけさ。
当然、そこでひと悶着は起きるものの(一応戦争になる)、最終的には天孫(アマテラスの孫)が降臨し、出雲の神(スサノオ/オオクニヌシの血脈)と婚姻を結んで大団円・・という感じのオチである。
・・そう、これは<戦争>の物語というより<和睦>の物語なんです。
その基本構造を、まずはご理解下さい。
そして「∀」や「Gレコ」もまた、あれは<和睦>の物語なんです。
そこを読み違えてる人が、「ガンダム」ファンにはあまりにも多すぎる。
で、そういう人たちは相変わらず昔の「宇宙世紀」の<戦争>の文脈でしか作品を読み取ろうとしないので、富野さんはそこを「全然伝わってない」とインタビューの中で繰り返し我々に対して呆れてたわけさ・・。

富野さん的には、<戦争>の文脈は「Ⅴガンダム」(1993年)あたりで既にひと区切りつけてるつもりなんでしょうよ。
多分だけどね。
まずはそこを理解しなきゃダメだというのに、いまだファンたちが語ってるのはそのほとんどが「旧」の文脈ばかりである。
で、「∀」以降は<和睦>という彼なりの新しいターンに入ったところで、結局は肝心のファンたちが全然それについてきてなかったというのが最大の誤算。
というより、この新しいターンに入ったことすら理解してなかった人たちが結構いたかも・・?
・・で、富野さんも富野さんで、彼なりに深く悩んだんでしょうねぇ。
そもそもファンたちの多くが「∀」や「Gレコ」の神話構造にすら気付いてないみたいだし、「これは変に比喩表現するから伝わらんのでは?」という結論に至ったのか知らんが、富野さんは遂にここにきて比喩表現ではなく、
直接表現(アマテラスそのものを出しちゃう)で今度こそはキチンと伝わるようにしよう!という彼なりの最終手段なんだと思います。

というかさ、こうして「伝わってない」と見るや、手を変え品を変え色々と工夫をしてくれる富野さんって、語弊ある言い方だが<ファンに優しい>と思いません?
次の「ヒミコヤマト」で、もう3回目じゃん?
いや、「リーンの翼」や「キングゲイナー」含めればもっと多い。
私は「宮崎駿と富野由悠季、どっちがファンに優しいか」と言えば、圧倒的に富野さんだと思うのね。
宮崎さんは、富野さんほど親切な監督ではないですよ。
少なくともアフターケアまでするタイプではないし。
その点、富野さんはクチこそ悪いが色々な注釈をこっちに投げてくれる人であり、決して我々ファンを放置しませんから・・。
何にせよ、私は「ヒミコヤマト」楽しみにしてます!

彼は、今回のインタビューでも言ってました。
「人間は宇宙では生きられない。結局、我々には地球しかない」
つまり次回作でも、テーマはやはり<レコンギスタ>なんです。

