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「パトレイバー」新作に押井守が参加しない理由

来年2026年より、「パトレイバーEZY」という新シリーズのプロジェクトが始動するという話は皆さんも耳にしてると思う。

この報を聞き、「おぉ、押井守が久々に動くのか!」と思った人もおそらく多いと思うが、いやいや、そうじゃないんですよ。
よく誤解されがちにせよ、「パトレイバー」は別に押井さんだけの作品じゃありません。
原作権を持ってるのは押井さん個人ではなくて、ヘッドギアというグループなんです。

<ヘッドギア>構成メンバー

・漫画家:ゆうきまさみ
・デザイナー(メカ):出渕裕
・デザイナー(キャラ):高田明美
・脚本家:伊藤和典
・監督:押井守


どうも詳しく話を聞く限りだと、この5名のメンバーにおいて押井さんは「一番最後に入ってきた奴」だったらしいのね。
で、一番後に入ってきたくせに、結局はそいつが一番大きな顔してるという例もたまにあるわな(笑)。
・・うん、もともとはこれ、ゆうき先生と出渕さんの2人で考え始めた企画なんだってさ。
これはあくまで私の個人的推測だが、当初の構想はもっと単純明快なポリスアクションだったんじゃないかな?
ドタバタ喜劇をベースに、ちょっぴり野明と遊馬のラブコメ要素も入れたりなんかして、そういう少年漫画っぽいやつを当初は構想してたと思う。

ところが、彼↓↓がヘッドギアに入ってきたことでコンセプトが大きく歪んじゃったのよw

うむ、結局のところ劇場版2作品(1989年、1993年)と初期OVA(1988年)は完全に「押井守の作品」として仕上がってましたよね?
野明や遊馬よりも後藤隊長や南雲隊長の方がメインとして描かれ、扱う事件もまた憂国の闘士が企てるクーデター系が多く、いかにも「全共闘」マニアである押井さんらしい作劇である。
押井ファンにはお馴染みの「立ち食いそば」シーンもしっかりと挿入されており、こういうのは彼のマーキングみたいなものという解釈で差し支えないと思う。

一方、テレビアニメ(1989年)と新OVA(1990年)の方は、見た感じ割と「押井色」が若干薄めなんですよ。
逆に、「ゆうき色」が割と強めと言った方がいいのかな。
劇場版や初期OVAと比べれば野明や遊馬が前面に出てて、割とお茶の間向けに明るくチューニングされてたと思う。

ヒロイン:泉野明

実は私、野明が大好きなんですよ~!


職場の目線からいって、こんないい子は他にいませんって!
かわいいけどオンナ要素はほとんど無く、本質は体育会系、劣悪な職場環境にも馴染む順応力の高さ、底抜けの性格の明るさ、そして何よりストロングポイントは類い稀な熱血ド根性。
彼女こそ「部下に欲しいキャラ」のダントツNO.1だね。
しかし、野明みたいなキャラは押井さんには絶対作れませんって・・(笑)。

ちなみに、今度の「パトレイバーEZY」は野明や遊馬らじゃない新キャラがメインになるようで、いわばイチからのやり直しである。

「何でそんなことすんの?」「また野明や遊馬たちを見たいのに」と思った
ファンはおそらく多いだろう。

ただ、これはやむを得なかったと思う。


その「やむを得なかった」事情の証として、今回の「EZY」の制作スタッフの顔ぶれをまずは見て下さい。

<「EZY」制作スタッフ>

監督:出渕裕
脚本:伊藤和典
キャラ原案:ゆうきまさみ
コスチュームデザイン協力:高田明美
メカデザイン:海老川兼武、清原敏明
キャラデザ/総作監:佐藤嵩光
音楽:川井憲次


はい、これを見て「・・あれ?」と皆さん思ったでしょう。
ヘッドギアメンバーの中で唯一、押井さんだけがここに名前が無い。
・・まぁ、この際ハッキリ言いましょう。

今回、押井さんは思いっきりハブられてますw

これは何か、ヘッドギア内で押井さんに問題が起きたのか?

・・はい、確かに「何も無かった」といえばウソになりますね。
おそらく、ヘッドギア内で問題になったのはコレ↓↓なんです。

実写版「パトレイバー」(2014年)監督/脚本:押井守

駄作として有名な実写版「パトレイバー」(笑)

ほとんど遊び感覚で作ったとしか思えないシロモノであり、どうやらこれ、

押井さんは、権利を所有しているヘッドギアのメンバーたちには断りも入れず、勝手に作ったらしいのよ・・


この事実については、後に伊藤和典さんがSNS上で明かしていました。

・・まぁ押井さんにしてみれば「俺だってヘッドギアの1人なんだし、別にいいじゃん?」ぐらいのノリだったんだろうが、ただその割には「特車2課メンバーが、その後どうなったのか?」という「パトレイバー」にとっての核心というべき部分に、この作品は迂闊にも踏み込んでましてね。

<実写版で明かされた特車2課人員のその後>

野明⇒警察を辞め、篠原重工へ。既に遊馬と結婚?
遊馬⇒警察を辞め、篠原重工へ。いずれ2代目社長に?
後藤隊長⇒警察を辞め、現在消息不明・・
南雲隊長⇒警察を辞め、現在は中東に?
太田⇒警察を辞め、暴力事件で現在は収監中・・
進士⇒警察を辞め、現在はIT企業を起業して成功
山崎⇒警察を辞め、沖縄に帰郷して家業を継いだ
榊班長⇒逝去
シゲさん⇒現在、特車2課整備班長

これら特車2課メンバーのその後の顛末を、押井さんはヘッドギアの人たちに何の断りもなく、「勝手に」決めちゃったわけさ。
しかも、原作権保有者の1人である押井さんがリリースした以上は、これが「公式」ということになっちゃうでしょ?
もちろん、ゆうき先生も出渕さんも高田さんも伊藤さんも皆さん「はぁ?」だっただろう。

ぶっちゃけのところ、

「特車2課メンバーの末路が、こんなに寂しい感じでいいのか・・?」

実写版「パトレイバー」に登場した南雲隊長

と、率直に思ったヘッドギアメンバーは絶対にいたと思うんだよなぁ。

しかし、今さら何を言っても後の祭り・・


で、彼らの最終的な落としどころは、

「じゃ、今度は押井さんヌキで、俺たちだけで『パトレイバー』をイチからやり直しするしかないじゃん?」

ということになったんでしょうね。

ゆうきまさみ

私から見て、「パトレイバー」の「ホントの原作者」はゆうき先生だと思うんです。
ただし、押井さんという人の持ち味は「いかにして、それをブッ壊すか」というところにキモがあるわけで、そのへんは高橋留美子「うる星やつら」、士郎正宗「攻殻機動隊」のアニメ化を見てる皆さんもよくご存じだと思う。

だから、実はヘッドギアメンバーも正直そこまで押井さんに対して怒ってるわけじゃないんです。

事実、伊藤和典さんは

「元々、あの人はああいう人だから、しようがないんです(笑)」

伊藤和典

と穏やかにコメントしており、決して喧嘩してるとかそういう感じでもないんだよなぁ・・。

まぁ、今回の新「パトレイバー」は、最近の「うる星やつら」リメイク版と同じ流れだと解釈してください。
かつて押井色で塗り潰された作品を、「本来あるべき姿に戻そう!」という一種の運動ですね。
おそらくだが、来年放送の新「攻殻機動隊」(サイエンスSARU版)もまた
「本来あるべき姿に戻そう!」運動の一環じゃないかと思う。

・・いやいや、決して押井守の作家性そのものを否定しようというわけじゃないんですよ。
ただ、もともと「パトレイバー」という作品は、ヘッドギアというグループの総合力で作った作品である。

いやマジで、この作品を作るのにはめちゃくちゃ緻密な取材と情報ソースが必要だっただろうし、とても個人の創造力ひとつで何とかなるものじゃないと思うんですよね。

たとえば、この物語は警察の「警備部」が舞台だろ?
普通、これまで警察のお話なら「刑事部」の方がメインだったわけで、じゃ「警備部」とは一体どういう組織体系?というところから話を始めなくちゃならん。
あとレイバーを描くにあたって「OSとは?」というところから入っており、このへんはIT関連の知識(1980年代当時、まだそのへん詳しい人の数は多くなかった)を勉強していく必要があっただろう。
また、自衛隊、重機メーカーへの取材も必須だったと思う。

とにかく、めちゃくちゃ取材しないと、この作品は絶対に作れないんですよ。
だからこその「ヘッドギア」、グループ体制でこれの制作に取り組んだわけでしょ?
企画立ち上げ時の皆のそのへんの苦労を覚えてるからこそ、

「最後の最後で私物化してんじゃねーよ!」と誰かさんに対して文句言いたい気持ちマンマンでしょうねぇ・・(ホンネでは)

で、私の見込みだと「EZY」は、旧シリーズ/テレビアニメのテイストに近いものとして作られると思うんだわ。
つまり、クーデター等の政治色が強かった劇場版/初期OVA版のテイストではなく、警察vs企業(軍需産業)の攻防を描くテイストになるんじゃないかと。
やや、「攻殻SAC」に近い感じになるかな?
もしくは「ドミニオン」みたいな感じ?

「ドミニオン」(士郎正宗原作)

・・そういや、今から9年前に庵野秀明が企画して、スタジオカラーが制作した「パトレイバー」企画がありましたよね↓↓

「パトレイバーREBOOT」(2016年)

監督:吉浦康裕 プロデュース:庵野秀明

僅か数分のショートアニメではあったものの、野明たちを出すわけじゃなく新キャラを出してきて、「あ、これ新企画が始動するのかな?」と期待してたが、しかしこの「REBOOT」と「EZY」に関連があるのかまでは正直よく分からん。
キャラを見る限りだと、カブってないんだけど・・。

一応、皆さんには「REBOOT」の視聴もお薦めしておきたい。
確かフル動画がbilibiliに格納されてたはずなので、無料視聴は可能です。

みんな、結構「パトレイバー」好きなんですよね。

だってさぁ、やっぱ「リアルロボット」という概念でいうとこれを超えるのは無いと思いません?
あくまで土木作業機械の発展型重機ゆえ、安易に警察が「武装」として民間に廃止を強制できないという設定も実に巧いわ~。

いやマジで、この作品は設定の勝利ですよ。


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