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懐かしさの海辺
特に綺麗なわけではなかった。
海の水は濁っていたし、
人工的な街の灯りも喧騒もあるこの場所には、
去ろうとしている夏の気配を惜しむように、
たくさんの人たちがいた。
知らない人たちの、色々な想いが、
賑やかに混ざり合っている。
夕暮れ時に頬を撫でる風には、
昼間にはなかった涼しさが混じっていた。
賑やかな場所は、得意ではなかった。
それでも私はその時、
少し離れたところを走り抜けて行く人の息遣いに、
海を見てはしゃぐ小さな子どもを追いかける母親の声に、
幸せそうに寄り添う恋人たちの間に、
さざ波の音に、
潮の香りに、
そこにある空気に含まれている光の粒に、
その全てに、
懐かしさを覚えていた。
私は今、居るべき場所に居る。
世界が輝いて、私を包み込んでいる。
目に映るもの、
触れられるもの、
感じるにおい、
聴こえてくる音の全てが、
とても懐かしい。
とても愛おしい。
あなたが横に居るだけで。
私がただ、ここに居るだけで。
