あのときゲームに夢みたこと

連休中に参加したストリートファイター6のオフイベントで、初めてプロ選手と対戦できた。偶然にも1ラウンドとれたけど、結果は当然のように惨敗。「プロは強いなぁ」なんて当たり前の感想を抱きつつ、サインをもらい、ツーショットの写真を撮ってもらって帰った。

格ゲーにそこまでのめり込んできたわけでもないし、今はもう「ゲーマーです」なんて自己主張できるほどゲームもしていない。それでも、若者も中年もたくさんの人が集まって熱狂するオフイベントの空気には胸が熱くなった。

遠い昔。学生時代、ぼくたちは毎日、地下のゲーセンで青春を謳歌していた。向かいにあったロッテリアのバーガーは60円か80円で、チーズバーガーはちょっと贅沢して100円だった気がする。

バイトもろくにせず、毎月の給料は数万円。自由に使えるお金なんて500円くらい。学校が終わったらバーガー片手に、今日は何をプレイするかが一番の悩みだった。

もうギルティギアも稼働してて、パワーストーン2をしながら宅飲みしてた時代だった。ストリートファイターIII 3rd ストライクは少し古くなった印象だったけど、ぼくたちは毎日のように対戦していた。

ヒューゴーが好きだったけど、ブロッキングは下手で、友達の中では最弱だった。いまでも覚えてるコンボといえば、しゃがみ弱P×2からEXラリアットとか、強パーム→弱パーム→EXラリアットとか。レバーの回転で台がずっと揺れていた。

全然勝てなかったけど、対戦は楽しかった。帰れば家でもドリキャスで練習ばかりしてた。色んなキャラを使うことも、新しいコンボを覚えることも、課題や資格の勉強より楽しかった。授業中に友達に教わったスライド投げはまったくできなかったし、ヒット確認が上達することもなかったけど、それでも少しずつ何かは成長してた。使いもしないトゥエルブの低空SAを練習して、できれば何よりの満足感だった。

あの頃のゲーセンには、不思議な "コミュニティ" 感があった。店ごとに客層も雰囲気も違ったし、ゲーセンにたむろす人には、それぞれの「ホーム」という感覚があったように思う。

ぼくたちの "ホーム" は、格ゲーの対戦台はきちんと対面に設置されてて、格ゲー中心の雰囲気はあったけど、それほど強い感じではなかった。ヤンキーも多かったし、どちらかといえばナンパなゲーセンだった。

近所には、強豪が集まるガチ勢の店もあって、そこに "遠征" するときは(いつもの店から100mくらいの距離だけど)それなりの勇気が必要だった。いつもと違う環境は変に緊張して、普段しないようなミスをしたり。夜中に郊外の深夜営業店に遊びにいったり、色んな遠征をしたけど、やっぱり "ホーム" 以外では何となく落ち着かなかった。

オフのイベントで久しぶりに体験したローカル対戦は、忘れていた緊張感にどこか似ていた。初対面の人たちとの対戦も。楽しみにしていたプロとの対戦も。どれも緊張して思わぬミスばかりだったけど、楽しくてつい相手に笑いかけてしまうような。いつものオンライン対戦とは違う興奮があった。

昔のゲーセンが良かった、というノスタルジーでもない。オフライン対戦の良さを実感したというのとも、ちょっと違う。あのとき、ぼくたちが夢見ていた対戦環境は、いつの間にか実現していたのかも──そんなことを思った。

実力の拮抗した相手がほしい。自分よりちょっと強い人に挑みたい。いつでも気軽に対戦したい。何時間でも好きなだけ再戦したい──ゲーセンでストIIIばかりやっていた僕らには、どれも夢のようなことだった。

スト6のオンライン対戦が理想形なのかは分からないけど、間違いなく、あのときのぼくたちが憧れた対戦環境ではある。そう思うと、ゲーセンの日々が無性に懐かしく感じた。

闘劇がはじめて開催された年、ぼくたちは地方予選に出るため、隣の県まで遠征した。ぼくは子どもが生まれたばかりだったので、出場はしないで、友人の送迎係だった。結果は覚えてない(たぶん本戦には出られなかった)けど、修学旅行みたいな旅の記憶は残っている。

闘劇はもうないけど、EVO Japanは来週ある。仕事もあるし、家庭もあるし、出場なんて考えたこともなかったけど。週末に参加するくらいなら、1ヶ月前から練習するくらいなら、いまでもきっとできるんだな。今年は間に合わなくても、来年だってきっと EVO Japan はあるんだろうな。そんなことを思った。


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