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サピエンス──WANTではなく、MUSTで生きることを宿命づけられた動物。 #MuWa|進化心理マガジン「HUMATRIX」

" 重力が眠りにつく 1000年に一度の今日
太陽の死角に立ち 僕らこの星を出よう
彼が眼を覚ました時 連れ戻せない場所へ
「せーの」で大地を蹴ってここではない星へ
行こう
行こう
行こう
"
────グランドエスケープ/RADWIMPS



「進化心理学/Evolutionary Psychology」とは何か? まずはこちらから



✔︎大バッシングされた『天気の子』



新海誠監督の映画『天気の子』をご存じだろうか。

前作『君の名は。』が日本国内で興行収入250億円超、観客動員約1,900万人という空前の大ヒットを記録し、社会現象となったあと、その莫大な期待を背負って2019年に公開された作品だ。

もちろん本作も140億円を超えるヒットとなったが、その評価は『君の名は。』とは対照的に大きく割れた。

その後もTV放送がかかるたびにSNSには;

「主人公のガキが自己中すぎる」「犯罪行為のオンパレードで全く共感できない」「迷惑行為まきちらすなクソが」「警察を悪者にするのはどうなの」「真っ当な大人を主人公を阻む障壁として扱うのまじでやめろ」「メイン2人が周りの迷惑考えないで幸せに生きようとしてんのが気に食わない」「自分たちのワガママで世界を滅ぼすな」「これをいい話だなって思う人達はそれだけみんな自分の事しか考えてないのかな」


などの批判がタイムラインを埋め尽くす事態となってしまっている。

────これに対して「現実とフィクションを混同するな」というテンプレ反駁を試みるのは面白くない。

だいたい、俺のマガジンでは「サピエンスは現実とフィクションを混同するよう進化した動物だ」という記事を#Fictus シリーズでいくつか出している。

今回も例の如く「何が正しくて何が間違い」というシコシコした善悪議論は人文学や倫理学が好きな皆さんにお任せするとして、サピエンスたちはなぜ、映画『天気の子』に対してここまで憤ってしまったのかの進化心理学的観点からの考察に努めることにしよう。



✔︎ヒトだけが「やりたいこと」で生きられない



さて、ホモサピエンスという動物の特殊性とは、生物界で唯一、法と規範に行動を制御されていることだ。


動物はふつう、肉体をWANTで駆動させる。食べたいから食べるし寝たいから寝るしヤリたいからヤルのだ。そしてそのWANTは母なる進化によって管理されている。生物個体が直面するそれぞれの状況に応じて、それぞれ適切な欲求が湧き起こるように遺伝子プログラムされているということだ。



ところが、その「適切」な欲求の通りに行動すること「不適切」となるのがサピエンス社会だ。美味しそうな食べ物を前にしても、金銭を払わずに勝手に食べてはいけない。法によって禁止されているからだ。

個人には法に従う義務(MUST)があり、WANTのままに肉体を駆動させられない。

進化心理学の心のモジュール理論(→#MMH シリーズ)によれば、脳は、さまざまな目的を持つアプリが同時に動くスマートフォンのようなものだ。*Kurzban, R. (2011).

食べたい、寝たい、遊びたいという「WANTアプリ」が通知を鳴らす一方で、「仕事しろ」「勉強しろ」「痩せろ」と命じるMUSTアプリ群もバックグラウンドで絶えず動き続けている。そして両者が互いに主導権を奪い合うことで、

人間存在を決定的に特徴づける「我慢(ガマン)」という苦しみ


が生まれる。


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