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コノハナサクヤ二〇

「あの時代の武士は念の力が強いって言うよなあ。」

何かの小説でも嗜んでいたのでしょうか。それともテレビでも観たのでしょうか。お父さんが昔、平将門さんについて言っていたこと。きっとお父さんは綺麗さっぱりと忘れていることでしょう。


「ねえ、お父さん。お母さんのばあちゃん家とじいちゃん家ってどっちが影響力あるの?」


「じいちゃんじゃないか。農家だよ。」


お母さんは家のことについて話すのが好きじゃないのでお父さんに聞く。お母さんが居ると一切話さないこともすらりすらりと話してくれる時があります。

今、思えばまだ従兄弟の次男が居る寸前。


じいちゃんは八、九人兄弟。じいちゃんが亡くなった後、じいちゃんの確か弟さんがばあちゃん家に入って来て、そっくりでびっくりした記憶があります。


「よおく、そんなこと覚えてるなあ。」


じいちゃんは戦時中、航空兵だったそう。終戦しなければ次は出番だったと、小さい頃、みんなが集まったときによくばあちゃんやお母さん姉妹が話していました。


もしも戦争が終わっていなかったら。もう少し戦争が長引いていたら。私たち家族は存在していなかったかもしれません。

お米を持って来てくれたりじいちゃんは優しかったと、他の相手との婚約を断ってじいちゃんに決めたばあちゃん。

三姉妹。

食卓でたまごを割ったら半分成長していた時があったねぇとか


ゆきえおばちゃんが小さい頃、ぼっとん便所に落ちてしまった話とか


お母さんが東京で一人暮らしの時、えっこちゃんよくラップ音が聞こえるって半泣きで電話してきてたってゆきえおばちゃん、お母さんは全く覚えていません(苦笑)



お母さんの妹、ゆきえ叔母ちゃんが生まれた時に、血液型がAB型でいっとき、波乱があったそうです。


じいちゃんはO型。

ばあちゃんはA型。


お母さんはO型。

お姉さんはA型。



ごく稀にそんな例外があると、まるく収まったらしいですが、知り合いのお医者さまにその話をしたところ、「それは、ない。」と。昔の方だから検査も曖昧だったりで、お祖父様がB型だったのではないか?とのことです。

確かに、そちらのほうが現実的です。



ばあちゃんとばあちゃんの弟さんは二〇才離れていて、小さい頃は三姉妹と遊んでいたらしく


大きくなったら私とけっこんしてと取り合いっこしていたそうです。三人ともそれぞれに強そうです()。




何年ぶりだろう。お墓参りは行ってましたが、ばあちゃん家にお線香をあげに行きました。叔父さんは居なくて、しんくんが居ました。高校野球をつけながら、私とお父さんが来てそわそわと家のことに慣れた感じで。


私からはばあちゃんの大好きだった無花果。美味しい、かゆいかゆいと言いながらご近所のおばあちゃんたちとよく食べていたから、子供のときは食べられないままでした。


「久しぶりい。そういえば好きだったね。音来てくれてお父さん居たらなぁ、喜ぶのになあ。」


運転が怖くなり、免許は返納したらしいしんくん。

「かずも最近、高速道路で何回かでかい事故見たらしくて運転がこわいって言ってるんだ。」


一体どうしちゃったの三兄弟。ナイーブ過ぎるよ。

おばちゃんのアルツハイマーがでかいんだと思う。




「アルツハイマーでよかったのかな?」

「自分の子亡くなって!?」


お母さんとお父さん、答えは永遠にない。





同じ高校だった同い年のかずくん、ヤンキーと仲良いのに、授業終わったあと、きちんと分からないところ先生に聞きに言って、テスト高得点狙ってる。我利勉兄の弟かずくん。ほんとうは運動神経もめちゃくちゃいい。


三〇年引き摺りの長男でも、兄は兄。弱音吐ける場所なんだね。色々ちょっぴり安心。


「そうなんだ。」
うん。うん。と聞いてる父。

「りょうもかずもパワースポット巡りが好きで…」

「ああ!りょうくん、行ったことあるんですか?御岩神社私も気になってるんですって言ってたっけな」とお父さん。(モノマネつき)


…そうなんだ。



私たち、やっぱりばあちゃんの孫だね。



パワースポット巡り。



ばあちゃんは水戸黄門さんなわけで、


なにか理由があってこの家に今世関わり

じいちゃんの姓を一人守り



叔父さんがいずれ同居したら姓を継ぐという約束を守らなかった


ばあちゃんはこの家になってずっと一人になった時より笑顔が増えた。私のことなんてひつようないって思えるくらいに。


ばあちゃんは怒ってない。円満任務完了してる。


じゃあなぜ。



ばあちゃんの守っていたのは、じいちゃんの姓なのだ。

大好きなじいちゃんの姓を必死に守ってた。

表札もそのまま。今の家族のため変えてもいいのでは。



じいちゃんは八、九人男兄弟戦争体験者。祖先の頃からのこの辺りの古い血筋。



「じゃあ、じいちゃんのご先祖様が怒ってるんだね。パワー、強いんだね。」



ひとを助けられるのもひと。とやぶさかに言ってしまえば、コノハナサクヤは滅亡しちゃう。



りょうくん、お父さんと御岩神社に行ってきました。

おばちゃんはお母さんの所に居るから安心してね。

しんちゃんも元気だし、かずくんはお嫁さんがしっかり者そうだから大丈夫。

叔父ちゃんがなんでも一人でできちゃって、貫禄あるしで、だれもなんにも言えないなら、もう私が行くしかないね。



きっとばあちゃんはあの世で、りょうくんが真っ先にきて、大きく肩を落としてることでしょう。

ほんとうにほんとうに。ほんとうに。



もしも。姓を一つにしていたら、ばあちゃんが厄を持ってってくれてまるく納めてくれていたかもしれない。なんてね。





生きてる者がいっぱい笑うしかない。















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菱事ゆかこ 読んでくださりありがとうございます ♡ ゆかこ💌🖋🧸