全79話を書き終えた翌日、まだ物語の中にいます。
昨日、八月二十九日。
『このおっさんは、なぜかモテる ~40歳で独身な係長を、なぜか好きになってしまう女の子たちの366日~』の最終話を公開しました。
これで全79話が完結です。
公開した瞬間って、もっと「終わったー!」という気持ちになると思っていました。
でも一晩明けた今も、あまり実感がありません。
今日も二十時になったら、いつものように続きを公開する気がしています。
山本玲が何かやらかして、風宮しおりがさらに隣でやらかして、馬平係長が困った顔で「お前ら…」って返す。
そんな一日が、今日もどこかで続いている気がします。
※ここから先は、ネタバレを含みます。
「最悪のおっさん」から始まった366日
四月一日。
入社式の日、風宮しおりは馬平忠司を見て、「最悪……」と思いました。
無口で無愛想で、何を考えているのか分からない。
できれば近づきたくない相手だったと思います。
でも毎日少しずつその人のことを知っていきました。
誰も見ていないところで人を助けるところ。
自分が傷ついても、その痛みを誰にも見せないところ。
人の好意には驚くほど鈍いくせに、誰かが困っているときは誰よりも早く気づくところ。
名前を呼ばれただけで嬉しくなって。
足音を覚えて。
帰ってくるのを待つようになって。
いつの間にか最悪だったおじさんが、しおりにとって一番大切な人になっていました。
この物語は、女の子たちから好かれる四十歳のおっさんのお話です。
でも私が書きたかったのは、単に「なぜかモテる男」ではありません。
人にはいくらでも与えるのに、自分に向けられた気持ちは受け取ることのできない不器用な男。
そんな男がしおりや玲や美咲と出会って、少しずつ誰かの気持ちを受け取れるようになっていくお話です。
だからこの物語の中で成長したのは、しおりだけではありません。
馬平忠司もまた、十八年間止まっていたところからようやく歩き始めることができました。
最終話をあの言葉で終わらせた理由
物語の最後で、しおりはまだ一人前の設計士になっていません。
忠司もイタリアに行ってしまいました。
二人がいつ再会できるのかも書きませんでした。
それでも私はあそこで終わりたかった。
第一話のしおりは、壇上に立つ忠司を見上げていました。
一年後のしおりは、自分がその壇上に立っています。
人前で話すのが怖くても、手に汗をかいても、逃げません。
好きな人に追いつくために、自分の足で歩き始めます。
だから最後の言葉は、
――ちょっとだけ、待っててください
にしました。
「いつか迎えに来てください」ではありません。
私がすぐに「追いつくので、それまで待っていてください」です。
あの日、忠司の後ろを歩いていた新入社員は今、自分で前に進めるようになりました。
二人の物語は終わったというより、ここからまた始まります。
最後まで読んでくださった皆さまへ
毎日一話ずつ、この長い物語を追いかけてくださった方。
途中から見つけて一気に読んでくださった方。
noteだけでなく、小説家になろうやカクヨムから読みに来てくださった方。
本当にありがとうございました!
79話もある物語です。
最初の数話を読んだだけでは、ここまで何か月もかけて好きになって、泣いて、足音を待つ話になるとは思わなかったかもしれません。
私自身、書きながら何度もしおりに振り回されました。
言えばいいのに全然言えない。
気づいているのに認めない。
ズボンを穿けばいいのにパンツ一枚で廊下に飛び出してしまう。
そんな風宮しおりを最後まで見守ってくださって、本当にありがとうございました!
何度告白しても諦めなかった山本玲。
十八年間、言えなかった言葉を抱えていた篠原美咲。
ヒールじゃなかった椎名恭介。
そして誰かの気持ちを受け取ることからずっと逃げ続けていた、馬平忠司。
この人たちの誰か一人でも皆さまの心に残ってくれることを願っています。
ここから先はしばらく、noteで続けます
しばらくここから先の『このおっさんは、なぜかモテる』は、このnoteを中心に続けていきます。
まず明日は、第1話の「リプレイ」から始めます。
同じ話をそのまま再投稿するわけではありません。
当時どんなことを考えて書いていたのか。
後半まで読んだからこそ分かる言葉や行動。
あとになって別の意味を持たせられるように書いておいた場面。
初めて読む方には物語の入口として、最後まで読んだ方には二周目として新たに楽しめる記事にしていきたいと思っています。
また、全79話を一冊にまとめた「完全版」も準備しています。
いったん連載は終わりました。
でもこの作品でやりたいことは、まだまだ全然終わっていません。
明日からもう一度。
四月一日。
しおりが「最悪のおっさん」と出会った日から始めます。
今度は最初から「馬平忠司」という人物を知ったうえで読んでみてください。
きっと第1話の「最悪のおっさん」は、一周目とは違って見えるはずです。
これからも、風宮しおりと馬平忠司たちをどうぞよろしくお願いします!
ゆきしろのあ
▶『このおっさんは、なぜかモテる』第1話
https://note.com/yukishiro_noa/n/n107ef0aa2460
▶ 全79話一覧
https://note.com/yukishiro_noa

