安心して働ける組織が、多様性を実現する理由―「配慮」から「貢献」へ問いを変える組織設計―
組織の中で同じ悩みが繰り返されるとき、
原因は人ではなく、問いの置き場所にあることがあります。
「◯◯な人」という区切りが生まれた瞬間、
その人の貢献より、制約が先に目に入るようになります。
障害のある人、育児中の人、体調に波がある人。
ラベルが先に来ると、「どう配慮するか」が問いの出発点になる。
「どう活かすか」は、その後ろに回ります。
これは悪意ではありません。
区切りが先にあれば、自然とそうなる。
問いの立ち方が、見え方を決めるからです。
だからこそ、現場は頑張っているのに、同じ悩みが繰り返されることがあります。
「どこまで配慮すればいいのかわからない」
「判断のたびに立ち止まってしまう」
「担当者だけが疲弊している」
そんな感覚を持ったことはないでしょうか。
積み上げても、変わらない理由
多くの組織では、多様性への対応を積み上げてきました。
制度を整え、研修を実施し、担当者を置いた。
それでも、現場の感覚はどうでしょうか。
「どこまで配慮すればいいかわからない」
「判断のたびに立ち止まってしまう」
「担当者だけが疲弊している」
対応は増えているのに、なぜか楽にならない。
その理由は、対応の量ではなく、問いの置き場所にあります。
現場と経営では、問いが違う
実務の現場では、「この人にどう対応するか」が問いになります。
それ自体は必要な問いです。
ただ、「誰もが機能できる組織にする」という方針は、
その問いからは生まれてきません。
問いの立て場所が、そもそも違うからです。
「どう対応するか」は、目の前の一人に向かう問い。
「どんな組織にするか」は、組織全体の設計に向かう問い。
どちらが正しいかではありません。
ただ、後者は上位層が先に持つ必要がある問いです。
現場の積み上げだけでは、たどり着けない場所にあります。
方針が先にあると、現場の問いが変わる
上位層が「この組織にいる人は、誰もが組織に貢献する」という方針を固めると、 現場の問いが静かに変わっていきます。
「この人への配慮はどこまでか」ではなく、
「この人はどう貢献できるか」。
制約ではなく、可能性から考える。
特別扱いではなく、設計として整える。
この転換は、方針がなければ起きません。
善意ある担当者が動いても、問いの出発点が変わらない限り、
個別対応の繰り返しで終わります。
実際、ヒアリングをしていて気づくことがあります。
障害者雇用がうまくいっている組織では、「特別な取り組み」として語ることが、ほとんどありません。 組織の方針として当たり前にある。だから、自然に語られる。
多様性は、全員のための設計だ
「安心して働ける組織」というと、
弱い立場の人を守るための仕組み、と受け取られることがあります。
でも本来は逆です。
誰もが機能できる設計があるから、制約のある人も貢献できる。
その組織は同時に、制約のない人にとっても、判断しやすく、
動きやすい場所になっています。
多様性の実現は、特定の人への配慮の積み上げではありません。
「誰もが機能できる」という前提を、組織の設計として持つことです。
その設計が先にある組織だけが、 本当の意味での多様性に、たどり着けます。
多様性とは、人の違いを理解することではありません。
違いがあっても、誰もが機能し、貢献できる。
その状態を支える構造をつくることです。
人を変えるのではなく、構造を整える。
多様性は、その先に実現されます。
この話は別の記事でも続けて書いていきます。
「担当者だけが疲弊している」「判断のたびに立ち止まってしまう」
—— その感覚の正体が、組織設計の問題であることをお伝えしてきました。
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