配慮が「特別扱い」に見えるとき——合理的配慮の判断基準をどうつくるか
「なんで、あの人だけ時差出勤が認められているんですか」
配慮を受けている社員について、
周囲からそう聞かれた担当者の方がいました。
以前の記事で、こうした声が上がる理由についてお伝えしました。
理由が見えないと、人は不公平だと感じやすくなります。
それは、周囲が冷たいからではなく、自然な受け止め方です。
では、その「理由」を、実際にどう見える形にすればいいのでしょうか。
「判断基準をつくりましょう」と言われると、
多くの担当者は、そこでまた止まってしまいます。
基準というと、配慮の内容そのものを固定するルールをイメージしてしまうからです。でも、ここでいう基準は、そういうものではありません。
基準とは、「どんな状況で、何を確認し、何を調整するか」という
判断のプロセスを、言葉にしたものです。
「特別扱い」と「組織の運用」を分けるもの
同じ「時差出勤」でも、見え方はまったく変わります。
基準がない状態では、「あの人だけ、遅く来ていいの?」
という受け止め方になります。
基準がある状態では、「体調を確認したうえで調整し、
一定期間ごとに見直すという運用が、組織として定められている」
という受け止め方になります。
配慮の中身は同じです。
変わったのは、その配慮がどのような判断を経て決まったのかが、
見える形になっているかどうかです。
4つの項目が、配慮を属人化させない
実際に言葉にするときは、次の4つで整理すると進めやすくなります。
発生条件: どんな状況で検討するのか
確認事項: 決める前に何を確認するのか
調整内容: 具体的に何を変えるのか
見直し時期: いつ、どのように振り返るのか
ここに書くのは、本人の事情ではありません。
「どういう状況なら、この対応を検討するか」という、
組織としての考え方です。
基準を見える形にすることは、
本人の障害名や個別の事情を、周囲に説明することではありません。
共有するのは個人情報ではなく、組織がどのような項目を確認し、
どのようなプロセスで判断するかです。
判断する項目は共通化しますが、実際の調整内容は、
一人ひとりの状況に応じて個別に検討します。
基準をつくる目的は、全員に同じ対応を当てはめることではなく、
判断の進め方を組織としてそろえることです。
たとえば、時差出勤であれば、次のように整理できます。
発生条件: 体調に波がある場合
確認事項: 本人の申告を確認し、必要に応じて専門家の意見も参考にする
調整内容: 出勤時間を1時間の範囲で調整する
見直し時期: 一定期間後、たとえば3か月後に本人と状況を確認する
このように整理しておけば、担当者個人の感覚だけに頼らず、
組織として判断しやすくなります。
なお、実際に合理的配慮を検討するときには、本人の困りごとだけでなく、業務への影響や実施可能性、周囲への負担なども含めて整理する必要があります。合理的配慮を判断するときの基本的な考え方は、「合理的配慮はどこまで必要?企業が迷わない判断基準」で詳しく解説しています。
今日の配慮が、明日の基準になる
すべての配慮を一度に基準化する必要はありません。
まず、今すでに行っている配慮を一つ選んでみてください。
その配慮について、発生条件、確認事項、調整内容、見直し時期の4つを、今の対応から逆算して書き出してみます。
書き出せたら、それを上司や、関わりのある現場のメンバーと一度共有してみてください。
すべてを整えてから動く必要はありません。
一つの配慮を、基準として言葉にしてみる。
その一歩が、次の配慮にも応用できる形になっていきます。
目指したいのは、「特別扱いに見えない配慮」ではありません。
「基準が見える配慮」です。
今日、すでに行っている配慮の中から一つ選んで、
4つの項目で言葉にしてみてください。
配慮を個別対応のまま終わらせず、組織の判断基準として運用するには、
人事・現場・管理職の役割を整理することが欠かせません。
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