DEI推進が止まる組織に共通する構造
研修をした。ポリシーを作った。
数値目標も設けた。役員からのメッセージも発信した。
それでも、現場に行くと何も変わっていない。
そんな感覚を持ったことはないでしょうか。
多くの企業でDEIの取り組みは進んでいます。
ダイバーシティ研修、行動指針の策定、採用目標の設定。
やるべきことは、一通りやっている。
それなのに、現場の判断は以前と変わらない。
多様な人材を活かす場面になると、結局は慎重論に流れてしまう。
なぜ、これだけの施策を打っても、現場は変わらないのでしょうか。
「浸透していないだけ」なのか、それとも
この状況を前にしたとき、よくある解釈があります。
まだ浸透していないだけ。意識が変わるには時間がかかる。
もう少し発信を続ければ、いずれ現場も変わっていく。
この解釈は自然に見えます。
ただ、この解釈のまま打ち手を考えると、次に選ぶのは
「もっと研修を増やす」「もっと発信を強める」という方向です。
そして、同じ場所で同じことが繰り返されます。
実は、現場が変わらない理由を、
意識の問題だけで説明できないケースは少なくありません。
では、何が足りていないのでしょうか。
現場に渡っているのは「方針」であって、
「判断の材料」ではない。ここに、止まる理由があります。
方針そのものがないわけではありません。
問題は、方針と現場の判断の「あいだ」です。
判断が止まりやすい組織
理念・方針
↓
「では、この場合はどう判断する?」が曖昧
↓
現場の判断
一方、判断できる組織では、
理念・方針
↓
判断基準
↓
現場の判断
というつながりがあります。
「多様性を尊重する」という方針を、
目の前の具体的な判断につなげるもの。
それが、現場に必要な判断基準です。
決めていいのか、誰も分からない
現場でよく起きていることがあります。
「多様性を尊重する」という方針は、確かにあります。
研修でも繰り返し伝えられています。
でも、目の前の判断には、答えがありません。
この人にこの仕事を任せていいのか。
この要望を、どこまで受け止めればよいのか。
他のメンバーには、その判断をどう説明すればよいのか。
方針は、進む方向を示します。
しかし、目の前の一つひとつの判断を、
どの基準で決めればよいのかまでは示していません。
この差が、現場を止めます。
誰も悪くないのに、止まっていく
現場で判断がつかないと、その判断は人事に上がります。
人事にも前例がなければ、判断は責任者に上がります。
責任者も明確な基準を持っていなければ、
出てくる答えは「慎重に検討します」になります。
誰も、サボっているわけではありません。
それぞれが、自分の持ち場で丁寧に対応しようとしています。
それでも、組織全体としては、
判断が上に積み上がっていくだけで、前に進みません。
こうした場面では、判断の軸がないとき、
人は無意識に「トラブルを避けること」を軸にしてしまいます。
配慮や公平性への意識が高い組織ほど、この傾向は強くなります。
真剣に考えているからこそ、慎重になり、判断が止まっていくのです。
DEIは、文化だけでは進まない
DEIを「文化づくり」として捉えると、
施策は自然と、啓発・研修・発信に向かいます。
これらは、意識には届きます。ただ、目の前の判断には届きません。
一方で、DEIを「判断設計」として捉えると、問いが変わります。
判断設計というと、少し難しく聞こえるかもしれません。
でも、まず整えるのは大きく3つです。
誰が、どこまで決めてよいのか。
どの段階で、誰に相談するのか。
一度決めたことを、どう組織の知恵として残すのか。
つまり、現場に必要なのは
「多様性を大切にしてください」という方針だけではありません。
自分で決めてよい範囲と、判断に迷ったときの相談先。
そして、一度経験した判断を、次の判断に活かせる仕組みです。
これらが言葉になっている組織は、同じような場面が起きるたびに、
ゼロから悩む必要がありません。
DEIが進んでいる組織は、意識が高い組織ではありません。
判断ができる組織です。
足りなかったのは、意識だけではなかった
DEI推進が止まっていると感じるとき、
多くの場合、足りないのは意識でも熱量でもありません。
現場が「これは自分が決めていい」と思える範囲と、
「ここから先は相談する」という線。
それが、言葉になっていないだけです。
あなたの組織のDEIは、判断できる状態になっているでしょうか。
この問いから見直してみると、次に整えるべき場所が、
少し違って見えてくるかもしれません。
DEIに限らず、組織の判断が止まるときには、
「誰が決めるのか」「何を基準に決めるのか」
「どこから相談するのか」が曖昧になっていることがあります。
管理職や担当者の頑張りだけに頼らず、
チームが自律的に判断できる状態をどうつくるのか。
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