障害者雇用で、担当者が頑張るほど組織が止まるのはなぜか
目の前の仕事は回っている。
けれど、担当者がいなければ、誰も次の判断ができない。
この記事でいう「組織が止まる」とは、そんな状態のことです。
「これは、私がやります」
障害者雇用の現場で、担当者からよく聞く言葉があります。
相談を受ける。現場と調整する。記録を残す。
困りごとがあれば、真っ先に自分が対応する。
気づけば、担当者一人が、ほとんどすべてを引き受けています。
その結果、相談や判断が担当者一人に集まり、
その人に聞かなければ次に進めない状態が生まれます。
担当者が不在になると、周囲が判断できない。
同じ問題が起きるたびに、また担当者が最初から対応する。
目の前の業務は回っていても、
組織の中に判断基準や対応の仕組みが残らないのです。
頑張ることと、組織が変わることは、実は別の話です。
ここで問題にしたいのは、担当者が頑張っていることではありません。
むしろ、その頑張りによって、これまで多くの場面が支えられてきました。
問題なのは、担当者が積み重ねてきた対応や判断が、
その人の中にとどまり、組織の仕組みとして残らないことです。
担当者が頑張れば頑張るほど、
周囲は「この人がいれば大丈夫」と安心します。
その安心が、判断基準や役割分担を整える必要性を、
後回しにしてしまうのです。
担当者の頑張りそのものではなく、
その中に蓄積された対応や判断を、組織に残す設計がないこと。
そこに、担当者任せが続いてしまう理由があります。
「あの人に聞けば」が、そのまま固定されていく
担当者が丁寧に対応するほど、
周囲は「この人に聞けば大丈夫」と学習していきます。
現場からの相談も、人事内の確認も、支援機関とのやり取りも、
気づけば同じ場所に集まってきます。
これは、担当者の対応が悪いからではありません。
むしろ、対応が早くて的確だからこそ、
周囲は安心して頼るようになります。
頼られること自体は、悪いことではありません。
ただ、頼られる先が一人に固定されると、
その人が休んだり、異動したりしたときに、
相談や判断が進まなくなります。
引き受けるたびに、仕組みは遠くなる
判断が必要な場面で、
担当者が「私がやります」と引き受けると、その場は収まります。
でも、引き受け続ける限り、「誰が、どこまで判断するか」を
言葉にする必要が、組織の中に生まれません。
困りごとが起きるたびに担当者が対応してくれるなら、
わざわざ基準を作らなくても、
今のところは回っているように見えるからです。
担当者の対応は、その場を収める力になります。
ただ、そのときに行った判断が個人の中にとどまったままでは、
次に同じことが起きたときの備えにはなりません。
頑張りは、形を変えて残せる
ここまでの話は、「頑張るのをやめましょう」という話ではありません。
これまで積み重ねてきた対応や判断は、現場を支えてきた、確かな力です。
必要なのは、その経験を担当者一人の中にとどめず、
組織の仕組みに変換していくことです。
たとえば、いつも自分が一次対応している相談の中に、
「毎回、ほぼ同じ判断をしているもの」はないでしょうか。
その一つを、基準として言葉にし、周囲に渡してみる。
「現場で判断できること」「担当者に相談すること」「人事や管理職まで上げること」の境界を言葉にする。担当者が毎回行ってきた判断を整理することで、周囲も少しずつ動けるようになります。
すべてを一気に変える必要はありません。
積み重ねてきた対応や判断の中から、
一つずつ、組織の仕組みに変えていくのです。
頑張ることと、組織を設計することは、別の種類の努力です。
これまで積み重ねてきた対応や判断は、否定されるものではありません。
その経験を、次の人も使える形でどう残していくか。
そこに、担当者一人に頼らない組織への、最初の一歩があります。
先日の勉強会に参加された方は、この話が「担当者任せ度チェック」とつながっていたことに、気づかれたかもしれません。参加できなかった方にも、同じ視点をお届けできればと思い、記事にしました。
担当者一人で抱えず、現場・人事・管理職が、それぞれの役割に応じて判断できる状態をつくるには、役割と判断基準の整理が欠かせません。
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