限界サラリーマンは、富士そばへ行け。
昨晩は深酒が過ぎた。仕事の鬱憤を晴らすべく始めた晩酌に、ブチ切れ案件を抱えた妻が合流。結果、チャゲ&飛鳥の『YAH YAH YAH』を爆音で流したあたりから記憶がない。今こうして無事に出勤しているのだから、誰も殴らなかったのだけは確かだ。
迎えた昼時。胃が麺類を欲している。次の会議まであと三十分。「富士そば」なら間に合う。急いでエレベーターホールへ向かった。
幸い行例はない。のれんをくぐり、券売機でいつもの「特選富士そば」を選び、いつも通り「温かいそばで」と注文した。
「今、そば茹でてるんでお待ちくださーい」
カウンターから、おばちゃんの非情な声が響く。
迫る時間。焦る私。焦らない店員。
チッ。いや、分かってる。誰も悪くない。悪いのは午後イチに会議を詰め込んだ同僚だ。うん、絶対にあいつが悪い。
結局、待たされたのはわずか五分。会議には余裕で間に合った。しかし、オフィスに戻る間、自己嫌悪が襲ってきた。そばは逃げない。大人しく待っている限り、茹で終わる時は必ず訪れる。そんなの当たり前だと分かっているのに、舌打ちをしてしまった。
私は今、余裕がないのだろう。平静を装いながら、実のところじゃ面倒な同僚の対応や、上から降ってくる爆弾案件の処理でテンテコ舞いなのだ。
それを教えてくれたのが、そばを待つ時間だったのだ。富士そばは、メンタルを映し出す鏡だと思う。
おばちゃんへ。
一瞬でもイラッとしてごめんなさい。
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