棚には、たくさんの雨があった
漂流便#005
雨ばかり降る国に来た。
この国はいつも雨が降っている。
たまに小雨のときに晴れ間が出てくることがあるらしいが、数年に一度くらいなのだとか。
そんな小雨の中、傘を差していたら、「レインコートの方が楽しいよ」と言われた。
どうやらその人は、雨がほとんど降らない国出身らしい。
だから、雨が大好きなのだと。
集めている、とも言った。
不思議に思って、その雨を見せてもらうことにする。
その人の家にお邪魔して、棚にはたくさんのガラス瓶があった。
すべて雨なのだと言う。
その中から、前日に降った雷雨の瓶を取ってよく見せてもらった。
透明だ。
水だから、当たり前か。
それでもその人は楽しそうに昨日の雨について教えてくれた。
空がピカピカと光り、ゴロゴロと不気味な音がたくさんしたらしい。
いつも降っている雨以上にたくさん降っていて、瓶がいっぱいになるのが速かったのだと。
さすがに昨日はびしょ濡れになってしまった、と笑っていた。
ああ、きっとこの人は、本当に雨のことが好きだ。
こうして集めてしまうほどに。
価値などはわからない。
でも、少なくとも、この人にとっては宝物だ。
その雷雨の瓶を机にあった瓶立てに立て掛けて、写真を撮った。

外がほんの少し晴れていて、この国の人は喜んでいるのに、この人だけはほんの少し嬉しくなさそうだ。
そして、お礼を言って、外へ出た。
小雨の中、ほんの少しの晴れ間があった。
きっとこれ以上晴れることはこの国にはないけれど。
傘を差さずに、小雨に打たれながら歩く。
ああ、たまにはこんな日も悪くない。
ゆに
