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【エッセイ/散文】『ごくごく小さな歩み』

思いのままに書き連ねます。
拙筆・雑文をお許しください。
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 夜間激しく降り続いた雨は、朝方にはだいぶ落ち着いていました。
 いつもはスムーズに流れる通勤路も、雨の日は送り迎えの車でとても混み合います。なので、そんな日はいつもより少し余裕を持って家を出るのです。

 小雨の終わりがけのような雨の中、傘もささずに車に向かい、運転席に乗り込みます。
 フロントガラスには昨晩降り続いた雨の名残に、新たに小さな雨粒がポツポツと加わっていきます。

 エンジンをかけ、雨粒を拭おうとワイパーのハンドルに手をかけたところで、ふと視界の端に小さな影を見つけました。
 風で飛んできた木の葉の欠片かな、と思いよくよく見ると、それは小指の先ほどの大きさもない、小さな小さなカタツムリの赤ちゃんだったのです。
 一目では歩いているのかどうかも分からないほど、ゆっくりゆっくりと、しかし確実に前に進んでいました。

 あと数秒気づくのが遅ければ、大変なことになっていたと、ほっと胸をなで下ろしました。
 私は車を降り、フロントガラスに手を伸ばしました。指先でそっとその小さな体を持ち上げると、わずかにガラスから剥がれるプツリという弾力を感じました。この小さな体でもしっかりとガラスを掴んでいたんだと、たくましくも微笑ましい気持ちになりました。

 駐車場の脇には大きな木が生えており、その根元は茂みになっています。
 私は小さな体を指先に感じながら、茂みへと足を運び、近場に生えていた雑草の葉にカタツムリの赤ちゃんを放してあげました。
 雑草といえども青々とした葉っぱの上を、小さな体はまたゆっくりと進み始めます。一歩一歩確実に。私はその場に腰を落としたまま、カタツムリの様子をしばらく眺めていました。

 気づけば小雨は止んでいました。それでも道路が混み合うことは変わらないでしょう。私は名残惜しくもカタツムリにさよならを告げ、また忙しない日常へと戻ります。
 いつもより少し早く家を出た朝に出会ったほんの些細なひとコマに、なんだか生きる活力をもらえたような気がします。

 忙しいときほど心にゆとりが無くなってしまいます。すると人は途端に周りが見えなくなってしまいがちです。
 そんなときほど少し立ち止まって、ゆっくり進む時間を感じてみるのもいいでしょう。
 心の時間に向き合うことが、忙しない日常に小さな活路を見つけてくれることもあるのだと思います。
 この小さなカタツムリのように、一歩ずつ、ゆっくりでもいいから確かな歩みで、前に進んでいければいい。

 小さな命に考えさせられた朝でした。

『ごくごく小さな歩み』―了―


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拙筆ながら最後までお読みいだき、
誠にありがとうございます🙏

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結城斗永|掌編小説・詩のようなものを書きます✍🏻 私の物語は皆様からいただいた一杯の珈琲の味。 よろしければ応援よろしくお願いいたします。