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【臨床】「そのおしりの緊張はメンタルか?構造か?」メンタルではなく“大腿骨”を見る重要性と、冷え性の意外な原因

先日、X(Twitter)でポストした「うつ伏せでお尻の力が抜けない女の子」の話が、意外なほど多くの反響をいただきました。

「緊張しているのかな?」と思って良かれと思って話しかけたら、逆にスベってしまった…というお恥ずかしい話なのですが、実はこのエピソード、臨床における非常に重要なヒントが隠されています。

今回は、Xでは書ききれなかった「なぜ臀筋がパンパンだったのか?」という解剖学的なメカニズムと、そこから繋がる「足の冷え」に対する考察について、同業のセラピストや柔道整復師の方向けに深掘りしてみたいと思います。

「警戒心」だと思ったら「骨格」だった話

事の発端は、ある若い女性のクライアントさんでした。
うつ伏せになってもらうと、ずっと臀筋に力が入り続けているんです。

かわいい方だったので「男性セラピスト相手で緊張してるのかな?」と思い、場の空気を和ませようと小粋なトーク(と自分では思っていたけど)を展開しました。

しかし、全く緩まない。
ほぐしても手応えがない。
「スベったか…?」という不安がよぎり、ついに諦めてこうお願いしました。

「あの、もう少し力抜けますか?」

すると返ってきたのは「え? 全然力入れてないですよ?」という言葉。

…えっ?


しかし明らかに盛り上がって緊張してるおしり。

ここでハッとしました。
これは「意識的な緊張(メンタル)」ではなく、「構造的な緊張(フィジカル)」なのではないか、と。

大転子がベッドにくっつきそう? 過度な大腿骨内旋

改めて視診・触診し直すと、彼女の大腿骨は強烈に内旋していました。
こんなに内旋してる患者さんは初めてでした。

もともと首とか肩が主訴だったので下肢はそんなに見てなかったのです。
大転子の位置を確認すると、うつ伏せの状態にも関わらず、ベッドに大転子がくっつきそうなほど巻き込んでいたのです。

【仮説】
大腿骨が過度に内旋することで、解剖学的に大殿筋や深層外旋六筋が引き伸ばされ、「力を入れているつもりはないのに、常に筋肉が盛り上がっている状態」が作られていたわけです。

これではいくら「リラックスしてください」と言っても、構造的に不可能です。
マッサージで表面を揉んでも解決しません。

そこで、クレイグテストで大腿骨の前捻角を調べたり、脛骨粗面と大腿骨の外果と内果の位置から、脛骨との捻じれを評価しつつ、大腿骨の外旋を誘導するアプローチを行いました。
アプローチとしては患者さんにうつ伏せで寝ていただき、患肢の膝を90°に曲げます。
そこから大腿骨を外旋させるように踵を内側に倒します。
そのまま大転子(大腿骨の一番出っ張ってる部分)を骨盤の関節窩に押し付けるように圧迫を加えつつ、踵を外側に倒します。
これを何度か繰り返しますが、コツとしては大転子がベッドに近づかないように圧迫しながら踵を外側に倒します。


画像の三枚目がちょっとわかりづらいかもしれませんが、大腿を軸に小趾側を身体から離すように外側に倒します。
このアプローチをすると、あんなにカチカチだった臀筋が、嘘のようにフワッと緩んでいったのです。
理屈としては、大腿骨を外旋させたまま下腿を内、外旋しながらコントロールすることで、患者さんの関節の感覚受容器に骨の位置を「ここだよー」と教えてあげるようなイメージです。

小粋なトークよりも、的確なアライメント修正。
これがプロの仕事だと痛感した瞬間でした(スベった傷は癒えませんが)。

若手セラピストに伝えたい「足の冷え」と「鼠径部」の関係

さて、ここからが今日の本題です。
この「大腿骨の内旋」という問題は、単にお尻が硬くなるだけでなく、
足の冷え(循環障害)にも深く関わっています。

特に若手のセラピストさんに見逃されがちなポイントなので、ぜひ知っておいてください。

足先が氷のように冷たい患者さんに対し、一生懸命ふくらはぎを揉んだり、足先を温めたりしていませんか?
もちろんそれも大切ですが、もし「大腿骨が内旋している」のであれば、原因はもっと上にあるかもしれません。

【メカニズム】

  1. 大腿骨が内旋する

  2. 小転子に付着する「腸腰筋」が引っ張られ、過緊張を起こす

  3. 硬くなった腸腰筋が、鼠径部(スカルパ三角など)を通過する大腿動脈・大腿静脈・リンパ管を圧迫する

  4. 下肢への血流・還流が阻害され、足が冷える

全ての冷え性がこれで解決するわけではありませんが、ふくらはぎや大腿を触って「冷たっ!」と驚くようなレベルの場合、この鼠径部の圧迫が原因である可能性が非常に高いです。

この場合、足先をいくら揉んでも、蛇口(鼠径部)が締まっているので効果は薄いです。
まずは股関節のアライメントを整え、鼠径部の圧迫を開放してあげることが、根本的な「冷え改善」への近道になります。

まとめ

  • 「力が抜けない」=「緊張している」と決めつけない。

  • 筋緊張の裏には、骨格のアライメント不良(特に回旋異常)が隠れていることも多い。

  • 足の冷えを見たら、足先だけでなく「鼠径部」と「大腿骨の向き」をチェックする。

私たちはつい、目の前の「硬さ」や「冷たさ」に目が行きがちですが、一歩引いて「なぜそうなっているのか?」という構造を見る視点を持つと、臨床はもっと面白くなります。

そして何よりの教訓は…
「緊張を解そうとしてスベったら、余計に緊張させて、その後の信頼回復が大変になる」
ということです。

トークの技術も磨きつつ、まずは手技で確実に結果を出せるよう、お互い精進していきましょう。
本当に。

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