『アマデウス』 天才と凡人の戦い。サリエリのような凡人こそが最も危険。
評価 ☆☆☆
あらすじ
1823年、自殺を試みたがうまくいかなかった老人が病院に運び込まれた。精神病院で回復する中、老人は神父に自分が音楽家サリエリだと告げる。同時にサリエリは、若く才能あるアマデウス・モーツァルトを死に追いやったというのだ。理由はモーツァルトは才能がありながら、その素行が極めて粗暴だったからだという。
クラシック音楽ブームになり始めているらしい。僕もクラシック音楽は好きです。ちなみにベートーヴェンの交響曲第7番第1楽章は『のだめカンタービレ』のテーマ曲として知られるようになったけれど、その第2楽章は映画『未来惑星ザルドス』のテーマとしても知られている。
『未来惑星ザルドス』は妙なSF映画だ。永遠の命を与えられ、退屈しきっている理想郷に住む人たちによるお話。哲学的イメージの強い作品だったと記憶している。結構、忘れているな。今度観直そう。
クラシック音楽が使われている映画で印象的だったのは? 聞かれて思い出したのが『アマデウス』。1984年に公開された作品で、監督はミロス・フォアマン。出演はトム・ハルス、F・マーリー・エイブラハムなど。
アマデウスは言わずと知れた作曲家モーツァルトのこと。大きな声ではいえないけれど、僕はモーツァルトが好きじゃありません。多分、ひねくれているからでしょう。モーツァルトはどれを聞いても同じに聞こえてしまう。みんなが「美しい!」というほどに美しくも聞こえない。
シャリシャリしていて、聞くたびにカキ氷を想像してしまう。神経症的にコロコロ変わる曲調も好きじゃない。モーツァルトファンの人には申し訳ないけどね。まぁいいや。世界にひとりくらいあまのじゃくがいてもいいよね。もうちょっと僕のようなアンチ・モーツァルトはいると思うけど。
しかし、映画『アマデウス』は素晴らしかった。モーツァルトとサリエリというふたりの作曲家の対比は面白い。構造が単純化され、観客が感情移入しやすくなっている。天才というモーツァルトの生涯を描いているけれど、同時に才能のない凡人サリエリの映画でもある。憧れと嫉妬。凡人であるがゆえの苦悩こそが問題なのだろう。
監督のミロス・フォアマンは『カッコーの巣の上で』以上に力量を発揮している。デザインも、衣装も、ライティングも良かった。お金をかけて素晴らしい映画を作り上げた。大作のお手本みたいに感じました。
この映画で教訓があるとすれば「天才を偉人として取り上げても誰も面白いとは思わない。それをこのような形にすると観客は嫉妬と羨望が解消され、興味を持って観ることができる」。この映画はまさにコペルニクス的発想の転換の作品だった。
この作品以降、偉人たちの闇の部分にスポットを当てる映画が多く制作されている。『不滅の恋/ベートーヴェン』とか『ゴーギャン タヒチ、楽園への旅』とか。意外とどれも面白いです。
初出 「西参道シネマブログ」 2006-11-10
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