『カッコーの巣の上で』 ラストは号泣を越して震えるだろう。管理下にある精神病院は社会そのもの。
評価 ☆☆☆
あらすじ
淫行罪で刑務所に収監された38歳のマクマーフィー。彼は刑務所での強制労働を逃れるために、精神病棟に入るために、更生牧場で暴行を働いた。精神錯乱を装っているのではないかと周囲は疑い、精神病院の院長はしばらく様子を見ることにした。
一度観たらもう二度と観たくない映画、というとすごく酷い映画のような感じがするけれど、まったく反対。あまりに衝撃的すぎたために、二度と観ないと誓うような映画が世の中には存在する。
『カッコーの巣の上で』は、1975年に公開された映画。僕が観たのは10代終わり頃。映画をまだ観始めた頃だったと記憶している。当時は、フランスのラブロマンス、ハリウッドのアクション、日本のATG映画を好んで観ていた。その頃はビデオもなく、DVDなんて存在すらしなかった。そんな時代だから映画は映画館に行ってみるしか手がなかった。
『カッコーの巣の上で』は何の前情報もないまま鑑賞した。当時は映画なら何だって良かった。監督はミロス・フォアマン。出演はジャック・ニコルソン、ルイーズ・フレッチャーなど。
ラストまで本当にイヤな気持ちにさせられた。なんでこんな嫌なシーンばかりみせられなきゃいけないんだろう、どうしてこの映画はこんなに卑劣な行為ばかりを見せるんだろう、なんて思って最後まで観た。
もちろん、現実世界のほうがもっと卑劣で、もっと悲惨な出来事ばかりだということを、その頃の僕は知らなかった。
いま考えると、ジャック・ニコルソンの演技は素晴らしかったし、本当にルイーズ・フレッチャーもすごかった。いやそれよりもミロス・フォアマンの演出が本当に良かった。
年を取り、この映画を再び観る勇気がいまの自分にあるかどうかを考える。もちろん観たいとは思うし、ここにDVDもある。でも、僕は本当に観ることが出来るんだろうか? うーむ。未来のことなんてわからない。ただ言えることは『カッコーの巣の上で』が、それだけ衝撃を受けた作品だったということだ。どうしようかな、観ようかな。
追記
2009年4月。久しぶりに観た。やはり目を覆いたくなるようなシーンがあったけれど、意外と冷静に観ることができた。そこで、ネットなどでいろんな批評を読んでみたけれど、ピンとこない。
どうして「この映画で描かれている精神病院は、まさに我々の社会そのもの」と言わないのか。常に勝つことを求める看護婦長が取り仕切る、平穏という名の、平和という名前の管理社会。
そこから逃げ出す方法は3つしかない。カッコーの巣から逃げる方法は、死ぬか、脱走するか、成長するかだ。それがどのような形で行われ、どういう結果になるのかは映画を観てほしい。
うん。観直して良かった。本当にいい映画である。そしてラストは本当に感動する。落涙。同時に『ショーシャンクの空に』の感動なんてまだ生易しいと痛感。あんなのまだまだです。面白いけどね。
続 追記
映画評論家の淀川長治氏は『カッコーの巣の上で』が嫌いだったそうだ。ミロス・フォアマンの演出を含め、この映画そのものがあざといと感じたという。さすがというか、なんというか。
初出 「西参道シネマブログ」 2006-04-14
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