アンドレイ・タルコフスキー監督『僕の村は戦場だった』少年は強かに生きる
<作品情報>
ソ連出身の巨匠アンドレイ・タルコフスキーの長編初監督作。ウラジーミル・ボゴモーロフの短編小説「イワン」を映画化した戦争ドラマ。第2次世界大戦の独ソ戦で孤児となり、復讐を遂げるため危険な偵察任務に身を投じた少年の運命を描く。
第2次世界大戦下のソビエト。両親と妹をドイツ軍に殺され孤児となった12歳の少年イワンは、復讐のためパルチザンに協力し、危険を冒して敵の占領地域への偵察活動に従事する。小柄なイワンはドイツ軍に気づかれず戦線を越えて情報を収集できたうえ、少年がそのような任務に就いているとは誰も疑わなかった。そんなイワンを気遣ったソ連軍の将校は、彼を前線から遠ざけようとするが、イワンは自ら前線での任務を懇願する。
1962年・第23回ベネチア国際映画祭で金獅子賞を受賞。
1962年製作/94分/ソ連
原題または英題:Ivan's Childhood
配給:パンドラ
劇場公開日:2026年4月4日
その他の公開日:1963年8月23日(日本初公開
<作品評価>
85点(100点満点)
オススメ度 ★★★★☆
<短評>
おいしい水
前作の中編『ローラーとバイオリン』では鮮やかなカラー撮影でしたが、本作はモノクロ。第二次世界大戦でスパイとして送り込まれる少年イワンを描く物語です。
タルコフスキーらしい構図の美しさは既に確立されています。白樺の森を一人称視点で映したショット、井戸での母親とのショットなど美しく戦争の残酷さを映しています。空中浮遊、枯れた木、リンゴといったタルコフスキーの象徴的表現も既にありますね。
戦争が起こす負の連鎖がテーマであるはずですが、そこはあまり強調してはいません。イワンの個人的な想いとその不成就という哀しみがラストにあるのです。亡くした母、父のように慕うカタソーニチ、兄のようになるガリチェフと疑似家族的な絆を築き、再度それが崩壊するという悲劇でもあるような気がします。
それほど洗練されてはいないとはいえ、誰がどう見てもタルコフスキー作品ですし、美しく幻想的な作風が確立されていて面白かったです。
吉原
僕にとっての初めてのタルコフスキー作品鑑賞でした。少年イワンを変えてしまった独ソ戦を描いた作品です。美しかったかつての日々と、地獄のような現在。その対比を通して、ひとりの少年を変貌させてしまった「戦争」という出来事そのものへの強い反感が感じられました。
難解だと言われることの多いタルコフスキー作品の中でも、本作は比較的理解しやすい作品だと思います。テーマが明確に「反戦」であることが伝わってくるからでしょう。ただし、表層的な理解にとどまらず、さらに深く入り込めば、より重要なものを見出せそうな余地も感じました。
上映時間は90分強ですが、その短さの中で、ここまで恐ろしく、重たい物語を映像として立ち上げてしまう監督の力量そのものに、ある種の恐ろしさすら覚えました。
<おわりに>
世界一の芸術家タルコフスキーの初期作で、その力量を最大限に発揮しています。
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