脱構築と構造化の先に見える、人生の手綱の握り方〜泉綾子(アヤコP)著『パラレルワーカーの教科書』を読んで〜
大手企業で約20年勤め上げ、課長職まで昇進した(本書、コラム1に詳細あり)後に、パラレルワーカーへ転身した知人・泉綾子さん(アヤコP)が、一冊の本を出版した。瑞乃書房刊『パラレルワーカーの教科書』である。
5つの章立て、そしてなんと全部で100レッスン!で構成されていて、1レッスンあたり、見開き1ページに本文+図解まとめ+一言アドバイス(一部ポートフォリオ部分だけ例外あり)という形でわかりやすくまとまっており、さらに各章の最後にコラムとQ&Aを配置するという、盛りだくさんの内容。けれども、とてもきっちり整理整頓されている美しい1冊。読み終えたとき、その圧倒的な「構造化の力」に思わずうなってしまった。
昭和・平成の「正社員一択」という強固な働き方のシステムを一度みごとに脱構築し、今の時代に合わせた「パラレルワーカー」としての生きる方法を誰でも実践できる形に美しく再構築してみせた1冊――アヤコP、さすがである。
ということで、応援気持ちも込めて感想をまとめておきたい。
圧倒的な戦略家と、ただ流れに乗ってきた私
本書を読んでからだと、口にするのはとてもおこがましい感じがするのだが、実はわたし自身も結果としてパラレルワーカーという働き方をしている。在宅でのオンラインワークを始めたのが2015年なので、こちらも約20年。しかし、著者のアヤコPと私の歩んできた道のりは、比べるのもおこがましいほどに違う。
彼女が大手企業の最前線で葛藤し、自ら戦って道を切り拓いてきた戦略家だとしたら、私は地方の事務会社員(しかもたった3年w)からフリーターを経て、結婚・在宅での仕事へ移行する中で、その時々のなんとなくの直感と偶然の縁に助けられながら流れ着いただけの人間である。
大手企業という巨大なシステムにいた彼女が、自身のOSを手放し、不安や葛藤とも向き合いながらここに辿り着くまでに使ったエネルギーは、想像を絶するものがある。さまざまな現場を経験し、自分と向き合い、綿密に戦略を練り、一歩一歩踏み出してきた足跡を本書から感じ、ただただ頭が下がる思いだった。
Chapter2の戦略にうなり、Chapter4の実践に救われる
特にさすがだーと思ったのが、Chapter 2の戦略パートだ。
まず、「なぜ働くか」というところからはじまり、マインドセットを整え、パラレルワーカーとして生きるための、生存戦略とポートフォリオを作り上げるまでの過程を緻密に構造化し、それをワーク形式で組み立てることができるように構成されている。そして構造を読み解いてわかりやすくワーク形式にしてくれているだけでなく、挑戦する人が抱く不安や葛藤に寄り添い、細やかにフォローしていくあたたかさもあるのが、さすがなのである。
ちなみに、これほどの実績と戦略を持ちながら、本の中では自分自身の葛藤も素直に開示してくれているし、「おわりに」では、「自分が一番やりたいことはまだわかりません」と言い切っちゃう謙虚さもあって、アヤコPの人間性の深さがにじみでている。「やりたいことがまだわからない」という言葉には、「やりたいことを見つけてから動く」のではなく、「小さく動きながら、自分に合った生き方をじわじわと発見していけばいい」というメッセージも込められている気がした。
一方で、ただただ目の前の縁と直感だけでなんとなく流れにのってきただけのわたしでも、100のレッスンを読み進めると、そっかそういうことだよねーという感覚に包まれることが多々あった。特にChapter4の実践パート。アヤコPが言語化してくれているパラレルワーカーの実践の中に、「あ、私が働くときに、感覚的に大切にしてきたことに似ている」という共通点がいくつか見つかったのだ。
たとえば、わたしの場合だと、
ジェネラリストであることの強み
偶然の出会いを大切にし、自分を閉じないコミュニティへの参加」
営業をしなくても仕事が巡ってくる、誠実な行動の積み重ね
感情を安定させ、柔軟につながりを育む姿勢
といった部分に共通点を感じた。
あまり葛藤らしい葛藤を潜り抜けてこなかった自分がパラレルワーカーを名乗るのはどうなのかなぁ?という気がしていたけれど、本書を通して「これまでも、これからもまあ、パラレルワーカーを名乗っても大丈夫かもしれない」と答え合わせさせてもらえたような、救われる心地がした。ほんと感謝である。
人生の手綱は自分が握る
これまで自分自身の働き方を通して、ずっと大切にしてきた考え方がある。それは、「自分の人生を自分で選択すること」と「自由の相互承認」である。
わたしはこれまで、小さい頃から自分の人生を自分で選択することを大切にしてきた。それは、単刀直入に言えば、自由でありたいからだ。とはいえ、ただ自由気ままなだけでは生きていけない。なぜなら、人間は関係性の中で生きているから。もちろん、公私を問わず、よい関係性の構築は大切だ。だが、円滑な関係性を維持しようと他人の選択を優先して自己犠牲で動いても、結果的に誰も幸せにならない。他人を大切にするように、自分自身を大切にし、自分の人生は自分で選択し、同じように他人の選択について尊重する。自分が自由でありたいのと同じように、他人もまた自由でありたいはずで、それぞれの自由をお互いを尊重し合おうという考え方を大切にしている。
これまでの王道の働き方を脱構築し、パラレルワーカーという新たな道を緻密に構造化して示してくれるアヤコPの本を読み解くと、わたしのこれまでの歩みとは手法は違えど、根底には、共通の想いがある気がする。
「人生の主導権(手綱)は、自分が握っておくものであり、もし今そうでないなら、それを自分のもとに取り戻す」
そんな思いがこの本には込められている気がした。
普遍的な正解はない。だからこそ、この本を手に取ってほしい。
パラレルワーカーとして働くと聞くと、何か特別な才能が必要だと思うかもしれない。でも、もし「しっかりと戦略を立て、自分の頭で納得して、自分で自分の人生を選び、自分らしい人生を組み上げていきたい」と思うなら、アヤコPが書いたこの『パラレルワーカーの教科書』は、最高の地図になり、最も心強い伴走者になってくれるはずだ。
一方で、「戦略なんて描けない」という人でも大丈夫。目の前の縁を大切にし、直感を信じて一歩踏み出す「自然構築」の道だってある。
人生に普遍的な正解はない。
だからこそ、この本を通して「自分にとっての正解」を見つけ、大切にしてほしいと思う。
この本は、会社員として働き続けるべきかで悩む人や今の働き方が本当に自分の望む働き方なのかを考え直したい人に特におすすめだが、わたしのようにただ目の前の縁と直感だけでなんとなく流れにのってきただけの人間にとっても、自分自身の働き方をそっと肯定してその構造を再発見させてくれるた本だった。そういう意味で、あらゆる人の背中をそっと押し、次のステップに運んでくれる本といえるかもしれない。
繰り返しになるが、アヤコPが本書で伝えたかったことは、「稼ぐための副業ノウハウ」や「独立のススメ」ではなく「人生の手綱を、自分の手に握り直すこと」なのだと思う。一つの組織にすべてを預けるのではなく、いくつかの軸を持つことで得られるしなやかさ。
だからこそ本書の「100のレッスン」には、組織の中で悩み、漠然とした不安を抱える人へ「大丈夫、選択肢は自分で作れるよ」と寄り添う、優しさと細やかな配慮がそっとしのばされている。
最後になるが、アヤコPのこれまでの挑戦と誠実な生き方、働き方に心からのリスペクトを贈るとともに、この「教科書」が、パラレルワーカーとして自分の人生をより深く豊かに生きるための道しるべとなるよう、多くの方の手に渡ることを心から願っている。
補足だが、個人的には、5本のコラムが超絶おススメである。アヤコPの個性というか、独特のセンスがにじみ出ていて、おもしろいから。
