酒
酒(さけ)は、エタノール(アルコールの一種)が含まれた飲料の総称。飲料以外にも、調理、食品加工、宗教儀式などにも使用される。
原料をアルコール発酵させて得る醸造酒、それから造られる蒸留酒などに大別され、原料や酵母、製法などの違いによる多様な酒が世界各地にある。
性質
[編集]酒は、アルコールを含む飲料のことである。摂取することで、アルコールの作用により酩酊を起こすことができる[2]。酒に含まれるアルコールは主にエタノールであり、酒のアルコール度数とエタノール濃度はおおまかには同一視されている。しかし、後述するように酒の醸造過程においてはエタノール以外のさまざまなアルコールも生成され、測定上これらを区別することもない。国際ブドウ・ワイン機構は、エタノールの同族体およびそれらのエステルについてもアルコール度数に含むと定義している[3]。
酒に含まれるアルコールの体積濃度を、百分率で表示したものをアルコール度数という。また、アメリカおよびイギリスにおいてはアルコール濃度の表示に当たってプルーフとよばれる単位が用いられており、USプルーフは度数を2倍、UKプルーフは度数を1.75倍したものである[4]。アルコール度数は体積から求められるため、温度の影響を受ける。多くの国では20度を測定に当たっての基準温度としているが、日本においては15度が採用されている[5]。
多くの国家が、アルコール度数をもとに酒を定義している[6]。アメリカ・中華人民共和国は0.5%[6][7]、日本は1%[8]、カナダは1.1%[9]、欧州連合は1.2%以上のアルコール度数を有する飲料を酒(アルコール飲料)と定義する。ベラルーシにおいては度数7%以上の飲料が酒と定義されており、これは国家が定める基準としては最高である[6]。
組成
[編集]酒の主成分はエタノールと水であり、多くの場合、これらの成分が酒の体積のほとんどを占める[2][10][11]。また、原料由来の糖分やタンパク質・アミノ酸といった成分も含まれるが、こうした成分は、蒸留酒においてはほとんどが取り除かれる。ほかに、酒に含まれる原料由来の成分としては、酒石酸をはじめとする有機酸などがある[11]。一部のリキュールではエタノールよりも糖分のほうが多い場合もあるほか、風味の向上や製造上の理由から、ハーブや香辛料、保存料といった添加物が加えられる場合もある[2]。アルコールそのものの熱量を除いて[11]、酒は一般的に、ほとんど栄養価を含まないとされているものの[12]、アジアを中心に、濾過・蒸留を経ていない酒が、高い栄養価を持つ食物として消費されることもある[13]。
酒はおおむね、糖分を酵母の作用によりアルコール発酵させて醸造するが、醸造の過程では、これらの原料に含まれる有機物に由来してエタノール以外のさまざまな化合物も生成される。これをコンジナーと呼ぶ。ビールには800種類、ワインには600種類、蒸留酒には800種類ほどのコンジナーが含まれている。醸造の過程では、ペクチンからメタノールが、アミノ酸から2-メチル-1-ブタノール ・3-メチル-1-ブタノール・1-プロパノール・イソブタノールといった高級アルコール(フーゼル油)が生成される[14]。ほかに、醸造の過程ではアルデヒド・ケトン・有機酸・テルペン・エステルなどが生成される。これらの成分は酒の風味に寄与する一方、メタノールなど一部の成分は毒性を持ち、身体に有害に働く[2][15][11]。
蒸留の過程ではエタノールと沸点を異とする化合物が除去されるが[2]、エタノールと同程度ないしエタノールより低い沸点を持つ物質に関しては濃縮される[14]。メタノールは蒸留の過程で濃縮されるため、密造酒のような粗悪な蒸留酒では致命的となりうる場合がある[11]。熟成に使う木樽からもコンジナーが遊離し、酒に風味を与える[2]。
歴史
[編集]古代
[編集]酒の歴史は非常に古く、先史時代(文字で歴史が記録される以前)から作られた。最古の酒とされている蜂蜜酒(ミード)は、農耕が始まる以前から存在し、およそ1万4千年前に狩人が、クマなどに荒らされて破損した蜂の巣に溜まっている雨水を飲んだことが始まりとされている[要出典]。
南米、アジア、アフリカのごく一部で現在も行われている、各種穀物を口に入れて噛み砕いた後、瓶や甕に吐き出し集め、発酵を待つという原始的な酒造法が低アルコールながら有史以前に広まっており、古代日本でも巫女がその役を務め「醸す」の語源となっていると言う説がある(「口噛み酒」参照)。今のところ、これが考古学的には最古の酒である。
古代オリエント世界では、紀元前5400年頃のイラン北部ザグロス山脈のハッジ・フィルズ・テペ遺跡から出土した壺の中に、ワインの残滓が確認された。また、紀元前3000年代にはシュメールの粘土板にビールのことが記録されている。シュメールの後を継いだバビロニアで、最古の成文法であるハンムラビ法典の中に、ビール売りに関する規定が記されている(第108条 - 第110条)。
古代エジプトでは、紀元前2700年頃までにはワインが飲まれていた。ツタンカーメン王の副葬品の壺からは、ワインが検出されている。また、ビールも広く飲まれていた。エジプトのピラミッド工事の労働者には、ビールが支給されていた。オリエント世界ではブドウの育つ場所が限られるので、ワインは高級な飲み物であり、ビールより庶民的な飲み物だった。
中国大陸において殷・周の時代、酒は国家の重要事である祝祭において重要な意味を持っていた。非常に手の込んだ器である殷代青銅器のうち、多くのものは酒器である。
『論語』には「郷人で酒を飲む(村の人たちで酒を飲む)」などの記述があり、紀元前5世紀頃には一般的な飲み物になっていた。

古代ギリシアや古代ローマは、ブドウの産地ということもあり、ワインが多く生産された。それらはアンフォラと呼ばれる壺に入れられ、地中海世界で広く交易されていた。酒の神ディオニューソス(ローマではバッカス)が信仰され、酒神を讃える祭りが行われた。
酒を蒸留する技術は、3世紀頃のアレクサンドリアの錬金術師たちには、既に知られていたと推測される。
ローマ帝国は、ブリタンニア属州(現代のイギリス南部)をはじめ、ヨーロッパの各地を支配下に収め、その過程でワイン生産の技術を伝えた。フランスのボルドーやブルゴーニュでは、その頃からワインの製造が始まっている。なお、イギリスは気候の低温化により、ブドウが栽培できなくなり、ワイン生産は廃れた。
中世
[編集]10世紀以前には蒸留酒が発明されていた。それは錬金術師が偶然に作り出したものだと言われる。ラテン語で蒸留酒はアクア・ヴィテ(生命の水)と呼ばれた。それが変化してフランス語でオード・ヴィー、ゲール語でウシュクベーハー(ウイスキーの語源とされる)になり、今日の様々な蒸留酒の区分ができた。
1171年、ヘンリー2世の軍隊がアイルランドに侵攻した。その時の記録によると、住民は「アスキボー」という蒸留酒を飲んでいたという。これがウイスキーの語源となる。
日本の沖縄(当時は琉球)では、若い女性が口の中で噛み砕いた木の実を唾液と共に吐き出し、それを醗酵させた口噛み酒を中国の使節へ供したという記録がある。
製法と類型
[編集]醸造
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酒に含まれるアルコールは、酵母による糖分のアルコール発酵によって作られる[16]。酒造に用いられる酵母は多くの場合サッカロミセス属(コウボキン属)であり[17]、コウボキン(Saccharomyces cerevisiae)がその中心である[18]。酒類の工業生産においては、培養された同種が種菌として用いられることがほとんどであるが[17]、ラガービールの醸造においては Saccharomyces pastorianusが用いられる。ビールの醸造においては、前者を上面発酵酵母、後者を下面発酵酵母と呼び分ける[19]。伝統的な酒造は空気中の酵母を取り込んだ自然発酵によっておこなわれており、サッカロミセス属に限らず、さまざまな酵母が発酵に寄与している[17]。たとえば、ランビックのような野生酵母を用いたビールの発酵にはクルイベロミセス属とブレタノミセス属の菌類、ワインにおいては Lachancea thermotoleransが発酵に関与する[17]。
単発酵酒
[編集]原料をそのまま発酵させて作る酒のことを、単発酵酒と総称する[20]。果汁はすでにブドウ糖・果糖・ショ糖などを含んでおり、酵母によって容易に発酵する。果汁を使った醸造酒としては、リンゴを原料とするシードルや、ブドウを使ったワインといったものがある。これらのほかに、ナシ・モモ・スモモ・サクランボ・アンズ・イチゴ・ザクロ・クロスグリなどが果実酒の原料として用いられる[21]。果実酒と同様に、原料に含まれている糖をそのまま発酵させる酒としては、馬乳酒のような乳酒[20]、あるいは、ヤシ酒やプルケをはじめとする樹液酒[20][22]、蜂蜜酒といったものがある[23]。
複発酵酒
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でんぷん質の原料を糖化し、それを発酵させて作る酒のことを、複発酵酒と総称する。複発酵酒にはビールのように、でんぷんを糖化させたのち、それをアルコール発酵させる単行複発酵酒と、日本酒のように、でんぷんの糖化とアルコール発酵を同時におこなう並行複発酵酒がある[20]。
糖化の手段としてはまず、唾液中のアミラーゼを利用する方法がある。唾液による糖化は南アメリカ先住民によって広く用いられており、キャッサバなどからチチャをはじめとする様々な酒がこの手段で作られる[24]。また、日本においても米を用いて口噛み酒が作られた[25]。また、発芽した穀物には、胚乳のでんぷんを分解し、エネルギーとして利用するための酵素であるアミラーゼやグルコシダーゼを含む。ビールのような酒の醸造過程では、これらの酵素が糖化に用いられる[26]。ビールの醸造においては主に大麦の麦芽が用いられるが[25]、白ビールやブーザには小麦が用いられる[27][28]。また、西アフリカではミレットビールの醸造に発芽したトウジンビエが用いられるほか[27]、インドのナガランドでは稲芽酒が作られる[29][28]。発芽穀物の酵素は、それ以外のでんぷん質の糖化にも用いられる。たとえば、ビールには副原料として大麦・小麦・米・トウモロコシなどが加えられることもある[30]。
微生物を用いたでんぷん質の糖化は、アジアにおいて一般的である。アジアにおいては、果実酒および発芽穀物を用いた醸造は比較的珍しい[31]。でんぷんの糖化に用いられる菌類はコウジカビ属・クモノスカビ属・ケカビ属および Saccharomycopsis fibuligera のような酵母があり、これらは米・麦・キビといった穀物を用いて培養される(麹)。アジアの多くの地域では種菌として、穀物を団子ないし円盤状にまとめた餅麹を用いるが、日本においては穀物の粒そのままに菌をつけた散麹が用いられる[32][33]。こうした、微生物を用いた糖化により作られる酒には、日本の日本酒、朝鮮半島のマッコリ・法酒、フィリピンのタプイ、中国の黄酒といったものがある[34][25]。
蒸留
[編集]醸造酒の発酵液(もろみ)といったアルコールを含んだ液を加熱し、アルコールを揮発させて冷却器でふたたび集めたものを蒸留酒という[35]。蒸留器には単式蒸留機と連続式蒸留機とがある。前者のほうが伝統的であり、アルコールに限らない原料由来の成分を有す一方、後者のほうが得られるアルコール度数が高い。単式蒸留器でつくられる酒にはモルトウィスキー・コニャック・ラム・キルシュヴァッサー・テキーラ・本格焼酎などがある。連続式蒸留機でつくる酒にはグレーンウィスキー・アルマニャックなどがあるほか、伝統的には単式によっていたウォッカ・アクアビット・ライトラム・焼酎(ホワイトリカー)なども現代においては連続式によることが多い[36]。
混成
[編集]既成の酒に糖分・アルコール・果実・香味料あるいは薬料などを添加した酒を混成酒という。リキュールなどがその代表例である[37]。また、酒類どうしを混ぜ合わせてつくる酒も混成酒の一部に含まれる[38]。
効用
[編集]高齢期の認知能力向上
[編集]中年期の適度なアルコール摂取(女性で約325ml/日、男性で約600ml/日)が、老年期の認知能力の向上につながる可能性を示唆する研究がある[39]。
食欲の増進
[編集]個人差はあるものの、少量の飲酒に限れば、胃液の分泌が盛んになって消化を助け、食欲が増進する。
ストレスの解消
[編集]ほろ酔い程度の飲酒により、行動欲求を抑圧している精神的な緊張を緩和し、気分がリラックスし、ストレスの解消につながる(セルフメディケーション)。
コミュニケーションの円滑化
[編集]適量のアルコールが体内に入ると、思考や知覚、運動、記憶などといった機能をつかさどっている大脳皮質の抑制が解放される作用がある。抑制が取れることによって緊張がほぐれ、コミュニケーションがより陽気で快活になり、会話が活発になる。酒によって会話などの行動する勇気が出る効果を英語では、liquid courage(リキッド・カレージ)と言われる[40]。魅力的に見えるビール・ゴーグル効果と呼ばれるものはあるが、研究では魅力の増減ではなく、魅力的に見える相手にリキッド・カレージで近寄りやすくなる効果が確認された[41]。
疲労回復
[編集]少量の飲酒は、血管を拡張させて血液の流れがよくなり、血行を改善する。その結果、体を温め、疲労回復の効果が上がる。また、利尿作用もあるので、体内にたまった疲労のもとになる老廃物の排出を促進する[42]。
健康食品として
[編集]アルコールに関しては健康への悪影響が懸念される中、ワインなどに含まれるポリフェノールについても注目されている。ポリフェノールは動脈硬化や脳梗塞を防ぐ抗酸化作用、ホルモン促進作用などがあり、特にウィスキーの樽ポリフェノールは、従来のポリフェノールの約7倍の抗酸化力を持ち、細胞内ソルビトールの蓄積を抑制するため、糖尿病なども抑制する効果を持つ。その他ウィスキーには、メラニンの生成を抑制するチロシナーゼが含まれているため、美白効果をもたらす可能性も期待されている。
死亡率の低下
[編集]2000年に開始された日本の政策、健康日本21のまとめでは、日本人では全くアルコールを飲まない人より、一日の純アルコール摂取量が男性で10から19g、女性9gまでの場合に、最も死亡率が低くなるとされている。これを超える場合、死亡率が高まるとしている[43]。
しかし、別の研究では少量でも健康への悪影響があるとしている。(#飲酒習慣と健康を参照)
料理と酒
[編集]特に酒と共に食べる料理を肴という[44]。ソーセージやビールとキャビアとウォッカなど、料理と定番の組み合わせがある。フランス料理やワイン、日本料理と日本酒のように食事の際にも飲まれる。また、食前酒や食後酒などもある。特に酒のための食事を宴会と呼ぶ。
料理に風味付け、肉と魚などの臭み消しなどの用途でみりん、日本酒、ワイン、ブランデー、ウィスキーなどが使用され、煮切りやフランベなどの調理法がある。その他、パンの原材料として漬物、饅頭、カステラなどの和菓子、チョコレートやケーキなどの洋菓子にも使われる。奈良漬けやブランデー・ケーキ、中のシロップにワインやブランデーが使われているチョコレートなどには風味のため、アルコール分が残してある。
健康への影響
[編集]人体への作用
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アルコールは中枢神経系に作用し、人体に対して様々な機能的・器質的変化を出現させる[46]。経口摂取されたアルコールは胃や小腸粘膜から吸収され、血流に入る[47]。アルコールの特異的受容体は同定されていないが、GABAA受容体を賦活させるとともにグルタミン酸によるNMDA受容体の活性作用を阻害することがわかっている[46][47]。
血中アルコール濃度が低レベルであれば抑制作用と気分の高揚が表れるが、およそ 0.5mg/mL 以上になると酩酊状態となる[47]。アルコールによる多幸感や報酬効果には、側坐核を中心とした GABA・ドーパミン・セロトニン神経系が大きく関与していると考えられている[47]。血中濃度が上昇すると運動失調・反応遅延・脱抑制による興奮・意識消失・心機能や呼吸の抑制といった症状も表れる。3.5 mg/mL 以上で呼吸麻痺などが起き、生命に危険が生じる[47]。
飲酒習慣と健康
[編集]| 順位 | 疾病 | DALYs (万) | DALYs (%) | DALYs (10万人当たり) |
|---|---|---|---|---|
| 1 | 2019年コロナウイルス感染症 | 24,306.3 | 8.1 | 3,061.5 |
| 2 | 虚血性心疾患 | 19,389.3 | 6.4 | 2,442.2 |
| 3 | 脳卒中 | 16,020.2 | 5.3 | 2,017.8 |
| 4 | 下気道感染症 | 10,564.2 | 3.5 | 1,330.6 |
| 5 | 早産による合併症 | 10,048.0 | 3.3 | 1,265.6 |
| 6 | 背中と首の痛み | 9,088.2 | 3.0 | 1,144.7 |
| 7 | 糖尿病 | 8,053.4 | 2.7 | 1,014.4 |
| 8 | COPD | 7,806.8 | 2.6 | 983.3 |
| 9 | 下痢性疾患 | 6,974.3 | 2.3 | 878.4 |
| 10 | 交通事故 | 6,785.3 | 2.3 | 854.6 |
| 11 | 結核 | 6,063.6 | 2.0 | 763.7 |
| 12 | 出生合併症 (新生児仮死又は外傷) | 5,925.9 | 2.0 | 746.4 |
| 13 | うつ病性障害 | 5,665.6 | 1.9 | 713.6 |
| 14 | 先天異常 | 5,272.2 | 1.7 | 664.1 |
| 15 | マラリア | 5,205.9 | 1.7 | 655.7 |
| 16 | 肝硬変 | 4,593.6 | 1.5 | 578.6 |
| 17 | 気管、気管支、肺がん | 4,564.8 | 1.5 | 575.0 |
| 18 | その他の難聴 | 4,419.3 | 1.5 | 556.6 |
| 19 | 墜死 | 4,385.5 | 1.5 | 552.4 |
| 20 | 腎臓病 | 4,372.1 | 1.5 | 550.7 |
アルコールは毎年250万人の死亡につながっており、世界死因の4%を占める[49]。ロシアでは男性の37%が55歳以前に死亡しており、主な原因は強いアルコール飲料、特にウォッカが原因と考えられる[50]。イギリスでは、このような早期死亡の比率は7%である[50]。
「適度の飲酒」を肯定する意見
[編集]2012年の研究は44件の研究から、男性5杯以上、女性4杯以上の過剰な飲酒がひと月に1度でもあると、これまで言われていた少量の飲酒での健康効果を損なうとした[51]。しかし、同じ2012年、ハーバード大学医学大学院は、適度なアルコール摂取は健康な高密度リポタンパク質(HDL)コレステロールのレベルを上昇させるとする記事を公開した。アルコールはまた、インスリンに対する細胞の抵抗性を低下させ、血糖値をより効果的に低下させることができるとしている[52]。
「適度の飲酒」を否定する意見
[編集]前述のように従来、1日にビール1缶程度の飲酒であれば死亡率が低下するとされてきたが、禁酒の理由には死亡率に影響するような病気になっているということがあるため、2016年には疾患の有無を区別し87件の研究から解析したところ、そうした飲酒と飲酒しない人の間には、総死亡率には違いがなかった[53]。月に一度の大量飲酒(男5杯・女4杯以上)によって、リスクが上回る[53]。
また、2016年の別の研究では、195か国の592研究のデータを分析し、飲酒しないことが最も健康を保つとした[51]。
アルコールと肥満の関係
[編集]アルコールは1グラムあたり約7.1キロカロリーの熱量を含む。また、アルコールによる熱量は優先的に消費されやすい性質がある。ただし、その分ほかの熱源の消費が後回しにされるため、「お酒は太らない」と一概には言えない点に注意が必要である。[54][55]
アルコール依存症
[編集]アルコール依存症とは、長期にわたり多量の飲酒した事から、アルコールに対し精神的依存や身体依存をきたす、精神疾患である。アルコールを繰り返し摂取し、アルコールに対する依存を形成し、精神的に身体的に続的に障害されている状態をいう。
長期間多量に飲酒を続ければ、誰でもアルコール依存症になる可能性があり、世界保健機関(WHO)の策定した『国際疾病分類』第10版には"精神および行動の障害"の項に分類されており、これは個人の性格や意志の問題ではなく、精神障害と考えられている。
アルコール依存症の症状には精神依存と身体依存とがある。精神依存としては、飲酒への強烈な欲求をもつようになり、飲酒のコントロールがきかず節酒ができない状態となる。また精神的身体的問題が悪化しているにもかかわらず断酒できない、などが挙げられる。身体依存としては、アルコールが体から切れてくる事で、指のふるえが起きたり、発汗症状などの禁断症状が現れたり、以前と比べて酔うために必要な酒量が増大する、などが挙げられる。アルコール依存症になると他の娯楽や生活をおざなりに、飲酒をすることをすべてに優先的な行動となってしまう傾向にある。
飲用量が多い場合、急な飲酒は振戦せん妄を起こして致命的となりうる。
がん
[編集]アルコール飲料は、IARC発がん性で発がん性があるというグループ1に分類される。WHOでは、飲酒は口腔癌、咽頭癌、喉頭癌、食道癌、肝癌、大腸癌と女性の乳癌の原因となる[56]として注意喚起を行っている。飲酒は喫煙と同じく深刻な健康被害をもたらすため、多くの人々に問題を知らせ、極めて有害であるアルコールの真実を効果的に伝える必要があるとし呼びかけを行っている。
2005年の厚生労働省多目的コホート研究では、男性に発生した癌全体の約13%が週300g以上の飲酒による原因と概算されている。口腔・咽頭と食道癌では禁酒によりリスクの低くなることが報告されており、禁煙と禁酒の両者に取り組めばさらにリスクは低下すると報告されている。
大腸癌は飲酒で約1.4倍程度のリスク増となり、日本人では欧米人よりも同じ飲酒量でも大腸癌のリスク増加は若干多い傾向にある。大腸癌は頻度が多いので飲酒量を減らすことによる予防効果は大きいと考えられている。
2024年2月19日、飲酒に伴うリスクに関する知識の普及の推進を図るために「健康に配慮した飲酒に関するガイドライン」を公表。年齢、性別、体質、疾患別で異なる飲酒によるリスクを示し、「純アルコール」の摂取量に着目することが重要としている[57]。
- 肝臓ガン
- 長期間飲酒を続けると肝臓に障害が生じ、アルコールの摂取量が肝障害に関連している。
- 大量のアルコールを摂取を続ける事で、肝臓ではアルコールの分解と共に中性脂肪の合成が進み、その結果、肝臓は脂肪まみれになり脂肪肝を発症する。
- さらに飲酒を続けると、アルコール性肝炎や肝硬変に進み、最後には肝癌を合併するケースも珍しくない。お酒に強い人ほど強いがゆえに、肝臓を著しく痛めつける傾向があることが報告されている。
- 積算飲酒量とは、今までに飲んだアルコールの量のことである。積算飲酒量が、純アルコール換算で男性で600kgを超えると上記のように肝臓に障害が出る危険が高まると言われている。女性の場合は男性よりも少ない量で危険が高まる[58]。ちなみに、この600kgは、週300g(ビール大瓶(633cc/本 x 4% = 25g/本)2本/日・6日分相当)、2000週(40年間)に相当する。上記表より換算すれば、日本酒週1.2升40年、ウイスキー週ボトル1.2本40年に相当する。
- もともとウイルス性肝炎がある場合は、飲酒は増悪因子となりうる。
- ただし、脂肪肝の段階で、節酒するか断酒に踏み切れば、肝臓は元の健康な状態に戻ることが確認されている。アルコール性脂肪肝と指摘された場合には、速やかに断酒することが重要とされている[59]。
- 食道ガン
- 飲酒時に赤面する人が長期間飲酒を続けると食道ガンになる危険性が89倍にまで増加し、同体質の人が飲酒、喫煙を続けると最大190倍も高くなることが、東京大学の中村祐輔教授と松田浩一助教の研究により報告されている。
- ALDH2酵素の遺伝的不足により、飲酒により吐き気を催したり、心拍数が増加、ほてりなどの反応を示す人は、東アジア(日本・中国・韓国)の人たちの1⁄3以上にまで及ぶ。日本では約4割がこの体質を持つ。アセトアルデヒドと呼ばれる毒素の体内蓄積を引き起こし、たったビール1⁄2本でも症状がでる。
- 世界で食道がんを多い国をつなげると、ベルト状になることから「食道がんベルト」という名が付いている。中東アジア、中国、韓国、日本などがそれとなる。病理学的に食道がんは「食道扁平上皮癌」と「食道腺癌」に大別され、日本人の場合には95%以上が食道扁平上皮癌が多数を占めている。一方、欧米では「食道腺癌」が多数である。
脳の萎縮
[編集]アルコールは少量であっても、脳を萎縮させる効果があるとする研究結果が報告されている[60]。
認知症
[編集]慢性的に大量の飲酒を続けることは、65歳未満で発症する早期発症型の認知症をはじめとする様々な類型の認知症の主要な危険因子になりうるとする研究結果が出ている[61]。
代替飲料の開発
[編集]アルコールには死亡を含めた有害な影響が高く、その悪影響を低減させたアルコシンス(Alcosynth)が開発されている[62]。2017年にイギリスのデビッド・ナットがアルカレラ(Alcarelle)を設立し、100の特許と共に商品化に向けて動いており、二日酔いがなく健康への害や暴力を低減させ、電子たばこのように害を低減させるという変化を社会にもたらしたいと考えている[62]。
飲酒と社会
[編集]

精神、心理状態を変化させることなどもあって、飲酒は様々な社会、文化と関わってきた。家庭における飲酒が日常化し、晩酌(夕食時に(しばしば日常的に)飲酒すること)する習慣や、酒を提供する飲食店であるバー、パブ、居酒屋、スナックのような飲食店も存在している。
日本では行事などで、なかば強制的に飲酒させる慣習が2000年代初頭頃まで見られたが、2010年代以降は急性アルコール中毒や飲酒運転による死亡事故報道の増加や、アルコール代謝酵素の欠落症の存在やアルコールハラスメントによる諸問題が広く知られる様になった事で、酒席でのノンアルコールやソフトドリンクも認められる様になりつつある。
暴力
[編集]アルコールは攻撃的な感情が起こることを促す[63]。
児童や高齢者への虐待、家庭内暴力(DV)、駅や街中での暴力、傷害、犯罪など飲酒に関連した暴力は様々な場面で起こっており、社会的に重大な問題の一つとなっている。飲酒に関連した暴力を防止するためには、その原因となっている飲酒を減らすことが大切とされる。
飲酒により暴力が増加する背景には、飲酒・酩酊により攻撃性が増すなどのアルコールによる直接的な影響と、習慣的な飲酒によるアルコール乱用やアルコール依存症などの疾病からくる間接的な影響とがある。また、飲酒に関連した暴力には様々な種類があり、暴言や身体的暴力のみならず、精神的暴力、経済的暴力、性的暴力などが報告されている。
鉄道会社団体のまとめでは、駅や列車内で暴力行為をした乗客の約6割は飲酒をしていた[64]。また酔客を降ろした駅員が突然傘で殴られたり、乗客同士のけんかの仲裁に入った駅員3人が逆上されてけがを負ったりするなど、駅員への暴行も多数報告されている。酔って地域警察官へ暴力をふるうなどして公務執行妨害容疑で逮捕されるなど、警察官へ暴力を振るうケースも珍しくない。
日本においては、飲酒による暴言・暴力やセクシャルハラスメントなどにおよぶといった迷惑行為である。この問題は、公共の場、職場や家庭内など、2000年代の日本での調査によると被害を受けた成人は推定約3,000万人である[65]。
自殺
[編集]飲酒量が増すにつれて自殺のリスクが直線的に高い結果が示された。多変量解析の結果、多量飲酒者の自殺リスクは、非現在飲酒者(非飲酒者+過去飲酒者)と比べ3.3倍高くなり、さらに、1日1合未満の少量飲酒者においても自殺リスクが1.7倍と高いリスクが示された[66]。
凍死
[編集]飲酒したまま屋外などで寝込んでしまい、そのまま低体温症により凍死することがある[67]。特に、寒波が厳しい時期にはホームレスなどの屋外生活者が寒さを紛らわせるために飲酒し、そのまま凍死するケースもある[68]。
飲酒運転事故
[編集]飲酒運転による死亡事故は、平成14年(2002年)施行の改正道路交通法により罰則等が強化されたことで減少してきた。そして、平成18年(2006年)以降の取締りの強化及び飲酒運転根絶に対する社会的機運の高まり、さらには飲酒運転の厳罰化等により、大きく減少し、10年前の約3分の1となっている[69]。飲酒運転事故は2008年の6219件が2018年には3355件に減少している[70]。
日本での飲酒者の傾向
[編集]以下はJMSコホート研究による。
日本人男性では、年齢が高いほど飲酒未経験者・禁酒者の割合が高く、若年層では飲酒量が多い傾向がみられた。結婚している人よりしていない人、および身体活動度が高い人より低い人で、飲酒未経験者・禁酒者・多量飲酒者が多かった。
日本人女性では、高齢層より若年層、教育年数の短い人より長い人、身体活動度の高い人より低い人で飲酒者の割合が高いという結果となった。そのほか、非飲酒者の収縮期血圧、拡張期血圧、総コレステロール、LDL-Cは飲酒者よりも高い結果がみられた[71]。
- 酒癖
- 飲酒した際に普段は見られない行動を取ることを言う。下記に一般的な例を上げる。
若者の飲酒
[編集]若者の飲酒は、中高年と比較し急性アルコール中毒やアルコール依存症等のリスクが高くなり、事件・事故の関連性が高いという特徴がある。その対策としては、飲酒禁止年齢を用いた対策が効果的といわれている。アルコールは200種以上の疾患と関連があるといわれ、その中で急性アルコール中毒と、アルコール依存症は若者の飲酒と関連も深いともいわれている。その他、脳の萎縮や第二次性徴の遅れ等、多くの領域でアルコールによる若者の健康への悪影響が懸念されている[72]。
- 大学生・専門学校生の飲酒
大学コンパなどにおいて、20歳未満の者の飲酒が暗黙の了解となっている場面も少なくないのが実態である。20歳未満の者の飲酒の撲滅に盲目的に取り組むことはあまり有効ではなく、むしろ現状を認めたうえで、アルコールのモラルに関する教育・情報発信を行うほうが大学生や専門学校生の飲酒事故抑止には有効、という意見もみられる[73]。
飲酒禁止令
[編集]794年(延暦13年、奈良~平安時代)頃には、日本初の「飲酒禁止令」が出された。このことから、既に社会問題化していたことが分かる。
法律
[編集]
酒には古来より、公序良俗を守るため、あるいは租税を公課するためにアルコールに対して、さまざまな法律が制定されてきた。そして、2010年の第63回世界保健機関(WHO)の総会では、「アルコールの有害な使用を低減するための世界戦略」が採択された。
飲酒が全面的に禁止されることは少ないが、厳格なイスラム国家では禁酒が徹底されている。日本でも江戸時代に徳川綱吉が「大酒禁止令」を出し、過剰な飲酒、他人への飲酒の強要を戒め、酒屋への規制を試みている[74]。またアメリカ合衆国には、飲料用アルコールの製造・販売・輸送を禁止するアメリカ合衆国憲法の改正(俗に言う「禁酒法」)が行われていた時期があり、現在でも一部の郡では酒類の販売が禁じられている。
日曜日に酒類の販売を制限している自治体も多い。また、インディアン居留地ではアルコール依存症を防止するため、禁酒を実施しているところがある。また欧米では、屋外や公園など公共の場所での飲酒を禁止しているところが多く[75]、日本の花見や路上飲酒する光景は見られない[76]。
ほとんどの国家では、年少者の飲酒または酒の購入を禁じている。酒購入の際に本人確認書類が必要な場合がある。法律で飲酒が認められる年齢を最低飲酒年齢 (minimum drinking age, MDA)、購入が認められる年齢を最低購入年齢 (minimum purchasing age, MPA) という。世界的には、16歳から18歳を最低飲酒年齢または最低購入年齢(またはその両方)とする国家が多い。酒類別に年齢を定めている国家もある。
全ての国家で、飲酒運転を禁じている。飲酒運転とみなされる血中アルコール濃度は国家によって違い、下限は0.0%(少しでも検出されれば不可)から0.08%の範囲である。
多くの国家では、酒類の生産や販売について免許が必要である。民主国家であっても専売制により国営企業や公営企業が独占している国家もある[77]。また日本のように酒類の研究や品評会を税務当局が管轄している国もある。
各国の法律概要
[編集]
日本- →詳細は「酒に関する日本の法律」を参照
- 二十歳未満ノ者ノ飲酒ノ禁止ニ関スル法律(1922年)により、20歳未満の飲酒と購入、20歳未満への販売・提供が禁止されている[78]。酒税法では、アルコール分を1%以上含む飲料と定義され[79]、酒税の課税対象となっている[80]。アルコールを10%以上含み江戸時代には酒であったみりん(本みりん)は、調味料として使用される場合でも酒税の課税対象となっており、酒税法では「混成酒類」に分類されている[81]。ただしアルコールを含んでいても、食塩や酢の添加により不可飲処置が施された料理酒は、酒税の課税対象から外れ、酒類販売免許を持たない商店でも販売できる。また、酒の主成分であるエタノールは引火性があるため、濃度の高い(アルコール度数60%以上の)酒は、消防法の規制を受ける。
- 酒類の研究を行う酒類総合研究所は財務省が所管している。また日本酒の鑑評会である全国新酒鑑評会も酒類総合研究所が共催している。
- 1951年には、酒に酔つて公衆に迷惑をかける行為の防止等に関する法律が公布された。
- 2013年には、アルコール健康障害対策基本法が制定された。
- 飛行機の操縦士の飲酒問題により、国土交通省は2019年、既に義務化されていたバスやタクシーに加え、航空機操縦士や鉄道運転士、船員に対しても飲酒検査を義務づける方針とした[82][83]。
- なお、医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律の適用を受ける医薬品に該当する健康酒(薬用酒)でも、アルコール分が含まれている分、飲用後の運転は道路交通法違反にあたる恐れがある。車(オートバイ、自転車等の軽車両も含む)を運転する前には、飲用しないことが適当である[84]。また満20歳未満の者の飲用もできない[85]。
アメリカ合衆国- かつてはアメリカ合衆国の州により最低飲酒年齢は18歳から21歳とばらつきがあった。1984年、国家最低飲酒年齢法により21歳未満の飲酒を認める州には連邦政府予算を支出しないこととなり、最低飲酒年齢は21歳に統一された。ただし、一部の州は、例外として宗教的理由での21歳未満の飲酒を認めている。
- 取り締まりはアルコール・タバコ・火器及び爆発物取締局が担当している。
ドイツ- 最低購入年齢はビール・ワインなどは16歳から。蒸留酒などは18歳から[要出典]。18歳未満の飲酒の可否は、保護者に一任される[要出典]。
イギリス- 最低購入年齢は18歳。最低飲酒年齢は、家庭では5歳。16歳で、ビールとリンゴ酒をバーやレストランで飲むことが認められ、18歳で全面的に飲酒が認められる[要出典]。スポーツ施設での飲酒は禁止されている[要出典]。
フランス- 最低購入年齢は16歳[要出典]。最低飲酒年齢は、アルコール度数の低い一部の酒類については16歳、残りの酒類は18歳[要出典]。
リトアニア- 2018年、飲酒が認められる年齢が18歳から20歳に引き上げられた。また、同年より酒類の広告が全面禁止されている[86]。
韓国- 最低飲酒年齢は満19歳[要出典]。
カナダ- 最低飲酒年齢は州によって異なり満18から19歳である[75]。基本的に公共の場での飲酒は禁止されている[75]。
- 流通は州の専売公社が管理する専売制で[87]、販売できる場所も限られている[77]。
- 飲食店で酒を提供する店員にも資格が必要である[75]。
サウジアラビア- 飲酒・所持・国内持込は全面禁止[要出典]。
クウェート/
イラン/
イエメン/
イラク/
アフガニスタン- 飲酒は全面禁止[要出典]。
アラブ首長国連邦- 内務省の許可の下、非イスラム教徒の外国人のみが、飲酒を認められる[要出典]。
パキスタン/
バングラデシュ- イスラム教徒の飲酒は禁止であるが、一部の飲食店などは飲酒が認められる[要出典]。
パラオ- 21歳未満の飲酒が禁じられている。2017年に放送が開始された恋愛バラエティ番組『恋神アプリ』ではロケ地としてパラオが使われ、20歳の出演者の飲酒シーンを放映してしまい、1度打ち切りとなった[88]。
- 航空機への持ち込み制限、宅配便の引き受け制限
アルコールそのものは可燃性液体であるため、航空保安上、度数の高い酒類の持ち込みが規制される。以下は日本においての規制内容である。[89]
- 70%超 危険品となり、機内持ち込みも受託もできない。
- 24%超70%以下 機内持ち込み分・受託分の合計が1人当たり5 Lまで。
- 24%以下 制限なし。
宗教と酒
[編集]酒の扱いは宗教ごとに異なっている。酒を神聖な場面で扱い、特別視する宗教・宗派がある一方で、飲酒が人や社会に悪影響を及ぼすとし、酒を敬遠・禁止する宗教・宗派もある。酒のもたらす精神変容は宗教体験や呪術と結び付けられ、非日常の宗教儀式用に摂取されるものとされていたと考えられる。今日でも様々な文化の様々な伝統宗教や祭祀習慣において、酒類は欠かせないものとなっている。飲酒にまつわる儀礼にはそうした宗教・祭祀慣習とのかかわりが深い。今日においても、酒類の儀礼性、宗教性は濃密に残っており、日本の屠蘇のように特定の祝い事と結びついた酒がある。
- ユダヤ教では、安息日や祝祭日を聖化して迎えるために、夕食前にワインを専用の杯に注いでキッドゥーシュという祈りの言葉を唱える(ブドウジュースで代用する場合もある)。
- 中世ドイツのキリスト教世界では泥酔は神に対する罪の一つとされ、檻に入れられたうえ街頭に吊るされる刑罰の対象とされた。
- カトリックなど大多数のキリスト教会派では、ミサや礼拝の際に執り行われる聖餐式で、赤ワイン(葡萄酒、特に混ぜ物のされていない純粋なもの)がイエスの血の象徴とされている[92]。ただし、プロテスタントの教派の多くは、アルコール分を含まないブドウジュースを用いる。
- プロテスタントでは、宗派により容認度は異なり、保守的な宗派ほど厳しい。セブンスデー・アドベンチスト教会は、禁酒を勧めており、救世軍は禁酒が絶対である。
- 末日聖徒イエス・キリスト教会(通称:モルモン教)は、戒律で飲酒を禁じている。
- イスラム教では、飲酒の効用は認めつつも、酒癖や健康上などの弊害が多いことを理由に、飲酒を禁じている。しかしその一方、適度な飲酒なら問題ないと考え、飲酒を行うムスリムも存在する。イスラム世界でもキリスト教徒やユダヤ教徒による醸造は許されたことが多く、飲酒文化が保持された。古来より飲酒をするムスリムは存在し、ルバイヤートなどでは、飲酒の快楽が述べられている。現代でも世俗主義を標榜しているトルコ、エジプトなどでは飲酒が盛んである。詳しくは「イスラム教における飲酒」参照。
- ヒンドゥー教では、地域により異なる。一部の地域では飲酒は避けるべき悪徳であるとされ、中でもヴィシュヌ神の敬虔な信者の多くは飲酒をしない。ネパールの祭事インドラ・ジャートラーでは、セート・バイラブ神の像の口から時折チャンと呼ばれる米酒が流れだし、その場に居合わせたものはそれを飲むことができる[93]。また、インドネシアのバリ島で信仰されているバリ・ヒンドゥーでは、飲酒が許容されている。
- 仏教では、五戒の中で「飲酒は避けるべき悪徳であり、苦しみを生み出す元」と説教し、禁じていた。しかし日本においては僧坊酒が公然と作られ、さらに平安時代末期、末法思想・末法無戒思想が流行した際に、法然は飲酒を「この世の習」として許可[94]。このため「酒を飲んではならない」という戒を公式に掲げながらも、実際には酒を飲むことが当たり前となっており、「不飲酒戒」を堂々と破ることが常態化している。ただし、無戒思想を持つ教団(法然・親鸞・日蓮系)においては教学上問題にならない。
- 神道では、お神酒(おみき)は神への捧げものであると同時に、身を清め神との一体感を高めるための飲み物とされる。
- ラスタファリ運動は飲酒を禁じている。
- カンドンブレでは、神への供物とされる。エシュにはカシャッサ、イェマンジャには白ワインなど、神によって酒類の好みがある。
主な酒
[編集]脚注
[編集]注釈
[編集]出典
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- ↑ カトマンズ(ネパール)の海外現地ガイド記事「カトマンズ中が大いに盛り上がる!ネパールのお祭りインドラジャトラへようこそ!!」 掲載日:2008/07/14, 海外旅行情報 エイビーロード
- ↑ 不飲酒戒 -なぜ酒を飲んではいけないのか * 法然『百四十五箇条問答』真言宗泉涌寺派大本山 法楽寺
参考文献
[編集]- Esslinger, Hans Michael, ed (2009). Handbook of Brewing: Processes, Technology, Markets. Wiley-VCH. ISBN 978-3-527-31674-8
- Meussdoerffer, Franz; Zarnkow, Martin (2009), “Starchy Raw Materials”, in Esslinger (2009): pp. 43–84
- Boyle, Peter; Boffetta, Paolo; Lowenfels, Albert B. et al., eds (2013). Alcohol: Science, Policy and Public Health. Oxford: Oxford University Press. ISBN 978-0-19-965578-6
- Tamang, Jyoti Prakash; Kailasapathy, Kasipathy (2010-07-01). Fermented Foods and Beverages of the World (1 ed.). Taylor & Francis. ISBN 978-1-4200-9495-4
- Tamang, Jyoti Prakash (2010), “Diversity of Fermented Beverages and Alcoholic Drinks”, in Tamang & Kailasapathy (2010): pp. 85–126
関連項目
[編集]- 酔っぱらいのサル仮説(酩酊猿仮説) - 人間の祖先がアルコールを含んだ発酵した果実を好んで食べるようになったとする仮説。
外部リンク
[編集]- アルコール飲料 - (オレゴン州大学・ライナス・ポーリング研究所)
- 独立行政法人酒類総合研究所
- STOP! 20歳未満飲酒(ビール酒造組合)
- お酒が女性をかつてないほど死なせている 縮む男女差(ナショナル ジオグラフィック、2023年10月2日)
- 健康に配慮した飲酒に関するガイドライン - 厚生労働省