なぜ「お参り」が子どもの心を育てるのか?
いきなり結論になってしまいますが、「『お参り』は子どもたちを育てる最強の習慣!」だと…断言します。この記事では、お子さんがいるみなさん、子どもに関わるお仕事をされているみなさんに「なぜそう言えるのか…?」という理由をお伝えしたいと思います。
手を合わせることで生まれる「見守ってもらえている」という感覚

今年、中学校1年生になった長男が、小学校4年生の時に腰に大きな怪我をしてしまったことがありました。医者から、とにかく安静にすることを指示され、何もすることができずに落ち込んでいた彼が、毎朝の「お参り」についてくるようになりました。
「怪我が治りますように…」と真摯に「お墓さん」に手を合わせている息子の姿を見ていて、「お墓さん」が息子のお願いを全く否定することなく、ただただ聴いてくれて、とことん応援してくれている…ということに気づきました。このことに気づいた時、思いっきり鳥肌が立ったのを今でもよく覚えています。

ボクは縁あって石屋になって8年目になりますが、それまでは約20年間小学校教師をしていました。教師をしていた時にずっと大切だと教えられていたのが、「子どもたちの話を聴くこと」の大切さ。そして、しっかりと子どもの話を聴くためによく引用されていたのが「カウンセリングマインド」という考え方でした。
「カウンセリングマインド」とは、相手の考えや気持ちを否定せず、尊重して理解しようとするコミュニケーションの心構えのこと。相手の立場に立って話を聴くことで、信頼関係の構築につながったり、相手の自己肯定感の向上につながったりすると言われています。
「カウンセリングマインド」には3つの基本姿勢があります。それは、以下の3つです。
①「受容」
相手の意見や感情を評価したり否定したりせず、そのままの状態で受け止める。
②「共感的理解」
相手がどのように世界を見ているか、どのような気持ちでいるかを相手の立場に立って感じ取ること。
③「自己一致」
相手に対して裏表のない態度で接し、自分自身が無理をせず、ありのままでいること。
息子が「お墓さん」に「お参り」をしている時に、まさに「お墓さん」がやってくださってることが「カウセリングマインド」そのもの!と腑に落ちたことがありました。今でも、息子の横でそのことを感じた時に思いっきり感動したのを覚えています。

ボク自身もそうですが、息子を見ていて感じたように「ちゃんと聴いてもらって、応援してもらっている…」といったような感覚があることに気がついてます。このことについては、NHK「小さな旅」に出演した時に、撮影していたスタッフの方に「お参り」をしていて感じることをインタビューされた息子も「何だか見守ってもらっているような感じがします。」とはっきり答えていました。そのシーンは全てカットされてしまいましたが…
ボクは息子を見ていて「お墓さん」に手を合わせているときはもちろんのことなんですが、「お参り」という習慣をもつことで、心の中に「ご先祖さま」という最強のサポーターを手に入れることにつながるだろうな…ということを心から確信しています。
「お参り」の習慣が、心の中の矢印を「自分」から「外」に向ける。
子どもたちと約3年間、朝の「お参り」を続けてきて、そのパワーに感動し、周りの方にもたくさんおすすめをしてきて感じているのは、「心の中の矢印を『自分』から『外』に向ける。」ということ。「お参り」でいうと、自分自身に向いている矢印が「ご先祖さま」に向く…つまり、自分自身が「長い時間のつながりの中に生きていることを感じることができる!」ということです。

これは、スピリチュアルななんかすごいパワーがある…という話ではなくて、ボクがこれまで心理学が本来目指しているものとが驚くほど合致しているのです。今日は、そのことをいくつかお伝えしてみたいと思います。
1. 「アドラー心理学」の【共同体感覚】と「お参り」
まずは「アドラー心理学」からいってみたいと思います。「アドラー心理学」では、人間が幸福になるためには【共同体感覚】が必要だと説いています。【共同体感覚】の説明はいろいろありますが、単に「みんなと仲良くする」ことではなく、「自分は大きな繋がりの一部である」という深い感覚のことだと言われています。
ボクが【共同体感覚】を説明する時に、よく引用するのは【共同体感覚】の英語訳です。どう表現するかというと「Social Interest」です。つまり「社会的関心」のこと。自分自身に関心をもつのではなく、友達や家族、学校や地域、さらにはより大きな人類全体という視点をもつことが必要だということです。
毎日手を合わせる時、子どもに「『ご先祖さま』に感謝する」という習慣を身につけさせることができれば、無意識に、矢印は内側の自分に向かって…ではなく、自分からつながるおじいちゃんやおばあちゃん、そしてその先「ご先祖さま」の方に向けることができると感じています。
つまり「お参り」は、「アドラー心理学」で言われる【共同体感覚】を身につけることにつながっていく…と考えています。
2. フランクルの「コペルニクス的転回」と「お参り」
次は、精神科医ヴィクトール・フランクルが説いた「コペルニクス的転回」から考えてみたいと思います。フランクルは、私たちが人生から「何を期待するか」ではなく、人生から「何を期待されているか」を問うべきだと説きました。これが、自己中心的な視点から、人生の問いに応答する視点への転換を指す「コペルニクス的転回」です。
毎日手を合わせながら、「ご先祖さま」という存在との対話を続けることで、自分自身だけで生きているのではなく、息子のいうように「ご先祖さま」に見守ってもらっている…という感覚を手に入れることで、静かに「ご先祖さま」からの視点についても意識するようになっている…ということを感じています。
つまり「お参り」は、フランクルが言うところの「コペルニクス的転回」のように自分中心の世界から、少しだけ矢印を外へ向ける…ということにつながっていく…と考えています。
3.「AWE体験」の【スモールセルフ】と「お参り」
次は、近年心理学で注目されている「AWE体験」から考えてみたいと思います。AWE体験とは、広大な景色や圧倒的な自然、あるいは自分を超越した大きな存在に触れた時に感じる「言葉を失うような深い感動や畏怖の念」のことです。そして、この体験を通じて得られるのが「スモールセルフ」という感覚です。
「スモールセルフ」とは、「自分はちっぽけな存在である」と卑下することではなく、自分自身へのこだわりや悩みといった「日常の小さな自己」を一旦脇に置き、自分よりもはるかに大きな存在の一部として自分を捉え直すことで、心に余裕や平穏が訪れる心理状態を指します。
毎日の「お参り」で手を合わせ、「ご先祖さま」という長い歴史や、自分を超えた大きな流れの中に身を置く感覚を繰り返すことで、自然と「長い歴史の中の小さな自分」という視点が育まれると感じています。
オススメ!今日から始める「お参り」ルーティン
今日は「お参り」を習慣にすることが、子どもたちにもたらすことを心理学の視点から解説をしてみました。これまで息子たちと「お参り」を続けてきて感じている良さは、まだまだありますので、少しずつお伝えしていきます。楽しみにしていてくださいね!

そんな「お参り」ですが、「家に仏壇もないし、近くに『お墓さん』もないからできない…」という声がよく聞こえてきます。でも、「お参り」といっても、特別な準備は必要ありません。ボクが「お参り」の良さを伝える中で、たくさんの方が生活に取り入れてくださっています。そんなみなさんの実践の中から、現代の生活に無理なく取り入れるコツをお伝えします!
「お参り」を子どもたちの習慣にするコツ!
①「形にこだわらない」
お墓さんや仏壇や神棚がなくても大丈夫です。リビングの片隅に、お気に入りの写真や季節の花、あるいは思い出の品を飾る「小さな祈りのスペース」を作るだけで十分です。「お参り」の良さを伝えた方々の多くは、この方法で「お参り」を続けています。手を合わせるといことを続けることで得られることがあることは、続けていただければすぐに理解できると思います。
②「親が背中を見せる!」
「やりなさい」と教えることも1つですが、まずは親がその姿を見せ続けることも1つです。ある方は、子どもにさせようと思っていなかったけれど、ある日突然「一緒にやっていい?」って、子どもの方からスタートした…という事例もあります。朝の準備の前や、夜の寝る前の静かな時間に、親が1分だけ静かに手を合わせる姿を見せてください。子どもは言葉以上に「親の背中の習慣」を敏感に吸収します。
③「シンプルに感謝を伝えるだけでOK!」
難しい願い事は必要ありません。まずは、「ご先祖さま」に感謝を伝えること。それだけで十分です。「家族みんなが元気にすごせています。ありがとうございます。」「今日も見守ってくれてありがとうございます。」そんなシンプルな言葉だけで十分です。
失敗しても、忘れてしまっても、続けていれば大丈夫。
もし、忙しい日々の中で忘れてしまっても、あるいは子どもが遊びに夢中で参加しなくても大丈夫です。「今日はお参りできなかったけど、まあいいか…」そう言って、親が一人で手を合わせればいいのです。子どもはいつか、ふとした瞬間にその場所、その時間の意味に気づく時がやってくるはず…。
失敗しても、忘れてしまっても、その場で全ての結果を出すわけではなく、続けていくことで、親自身も、子どもに教えることを通じて、自分自身の心の視線を再確認し、共に成長していく。そのプロセス全体が、家族の絆を育む大切な時間になるんだと思います。
毎日の「お参り」は、間違いなく、子どもの心に大切な種を蒔いてくれます。「自分」だけの世界から「外」の世界へ向かって視野を広げていく…。子どもの心を育てるために、今日から毎日の「お参り」にチャレンジしてみませんか?
庵治石細目「松原等石材店」3代目 森重裕二
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