【考察】なぜ今、エヴァ新展開なのか。「さようなら、全てのエヴァンゲリオン」の本当の意味とIP防衛戦略
誰もが耳を疑った、エヴァの新展開発表。
つい先日TBSでわざわざ単発枠をとって『シン・エヴァンゲリオン劇場版:||』が地上波放送されたわけだが、放送後これは単なる放送ではなく、かの新展開に向けた計算し尽くされた「プロモーション」であり、再始動の地ならしだったのだと全国民が納得したわけである。先日横浜アリーナで開催されたエヴァ30周年のフェスも、その新展開に向けたプロモーションの一貫、壮大な仕込みだったと納得できる。
尚たまたま情報をキャッチするのが遅かったのもあり、かのフェスには行かなかったわけだが、仮に知っていたとしても私は行かなかっただろう。 なぜなら数年前、『シン・エヴァ』の劇場公開に何度も何度も足を運び、庵野監督を”100億の男”にする一助を担ったことで、私の中ではすっかりエヴァからの「卒業」を迎えてしまっていたからだ。
あんなにちゃんと完結したじゃないか。正直、フェスに行った人たちの気持ちが全く分からん。あんたたちは映画館で何を観ていたのかww

※3/5 謹んで訂正させて頂きます。フェスに参加された方々のSNSやレポを見るに、原画やセル画の展示なんかもあったそうで…ごめんなさい。人の手が創り出したオリジナル原稿や原画、セルは「オーラ」を放っています。それを浴びるのがヘタな美術館に行くよりもよほど素晴らしい体験だと思っている私としては…後悔をし始めています。なぜキャッチできなかったんだ俺。
それはさておき。なぜ今さら新展開なのか
100億の男の本当の気持ちは、本人にしかわからない。だが、自分なりに年表を書き出し(詳細後述)、彼らを取り巻く出来事と照らし合わせていくうちに、強烈なひとつの「答え」にカチリと行き着いた。
「さようなら、全てのエヴァンゲリオン」は、作品の終焉ではない
今更ネタバレでもないでしょう。一応数行空けておきますが…ネタバレありますよここから。
まず改めて『シン・エヴァ』を観て思ったこと。 それは、つくづくこの映画が徹頭徹尾、
「鬱になって壊れたりもしたけれど、嫁のおかげで立ち直ることができたよ、ありがとう」
「俺はエヴァに区切りつけて次に行くよ」
という、極めてパーソナルなメッセージで構成されている事実だ。
ラストシーン、大人になったシンジ君はレイでもアスカでもなくマリ(安野モヨコ夫人)の手を取り、アニメーションの世界から駆け出していく。反対のホームには、愛すべきキャラたち。
あれはエヴァという「作品」の終焉ではなく、あくまで「庵野秀明個人の卒業宣言」だったのだ。
※アスカ曰くシンジくんのことを「バカシンジ」、レイを「七光り」と呼んできたので気づかなかったが、マリを「コネメガネ」と呼ばせているのは、つまりそういうことだ。身内をゴリ押しして作中に登場させることへの自虐であり、予防線だったんだね笑

実際、その前後の彼の足跡を見れば一目瞭然だ。『シン・XXX』というビジネスモデルを確立し、2026年現在名前こそついていないが間違いなく「シン・宇宙戦艦ヤマト」と呼ぶべき作品の制作に心血を注いでいる。彼は本当に、新しい世界へ旅立った。

かつての仲間との泥沼の闘いと、IPの悲劇
では、完全に「卒業」した彼(らスタジオカラー)が、なぜ残されたエヴァをそのまま終わらせず、わざわざ「新展開」へと動かすのか。
以前、私は自身のNote([GAINAXが法人整理された年末に〜知りたいときに見ていただきたいNote])で、庵野監督のクリエイター人生の後半戦が、実に「かつての仲間(GAINAX)との血みどろの争い」であったことを書いた。年表があるから、ぜひリンク先を観ていただきたいとおもう。エヴァがその争いの元凶のひとつでもあるわけだから、そりゃあ病むわ。
自分が手塩にかけた作品が、IP(知的財産)を管理するシステムを持たないまま巨大化し、やがてコントロールを失う。権利が散逸し、ハイエナに食い物にされ、かつての仲間同士で訴訟合戦になる地獄。 彼はそれを誰よりも近くで、血を流しながら経験してきた。
かねてから彼は、「エヴァがガンダムのように、長い間、そして様々な人が手掛けることができるIPに育ってほしい」と語っていた。 しかし、ただ無防備に手放せば、またあの悲劇が繰り返される。いずれ制作現場を自分が去った後も視野にいれ、この先もエヴァが健康的に生き残るためには、クリエイターの情念やサークル・ギルド的なノリに依存しない、強固な「IP管理と多角展開のシステム」が絶対に必要だった。
プロとして仕事をした原点「風の谷のナウシカ」に参加し、永遠の師として君臨しつづける宮崎駿率いるスタジオジブリ。結局「次」の大黒柱を擁立することができず、迷走しまくった挙げ句、最後の最後まで宮崎駿と高畑勲のためのスタジオなんだなと位置づけられ、静かにその歴史を閉じんとしている。かの制作会社の様子も…間違いなく視ていたはずだ。

『ジークアクス』という壮大なテストケース
ここで、すべての点と線が繋がる。 スタジオカラーとサンライズがタッグを組んで発表した『機動戦士Gundam GQuuuuuuX(ジークアクス)』の存在である。
あれは単なる「エヴァのスタッフがガンダムを作る胸熱企画」などではなかった。東洋経済の記事でも触れられていたが、実際カラーからサンライズ(=バンダイナムコ)へ社員が出向までしている。
つまりジークアクスは、日本で唯一、40年以上にわたってガンダムという巨大IPを戦略的かつシステマチックに管理・運用し続けているサンライズから、「IPの多角展開メソッド」を確固たるビジネスとしてカラー内部にインストールするための、壮大なテストケースだったのだ。
人材交流という生易しいものではない。二度と作品を食い物にさせない、エヴァという「IPを守るという矜持」のための、血の滲むようなビジネス・タッグである。
かつてオタク四天王の一人と呼ばれ、世界最強オタク制作集団ギルドだったガイナックスを自らの手で葬り去り、法的にも業界的にもスタジオカラーをきちんとした力を持つ存在にアップデートする。
生みの親である自分は、嫁に絶大な感謝をし、ヤマトの世界へと旅立つ。
残していく我が子(エヴァ)たちには、ガンダムが築き上げた最強の「システムという名の鎧」を着せ、様々なクリエイターが活躍できる新しい遊び場として世に放つ。

それはパチンコ等の「いやそれはちょっと」的な領域ではなく、きちんとしたクリエイティヴな領域であること。未来永劫ちゃんとスタジオカラーと関連企業と、そして何よりクリエイターにきちんとお金が入る世界をつくること。
誰もが耳を疑ったエヴァの新展開。 それは、ひとりの天才クリエイターが人生の過去を清算し、経営者として作品の永遠の命を保証するために打った、愛と覚悟の最終戦略だったのだ。
劇中で林原めぐみ氏が唄う「VOYAGER〜日付のない墓標」は、ミサトさんの想いでもあり、綾波でありシンジ君の母ユイの想いでもあり、マリの想いでもありアスカの想いでもあり。そして庵野監督やモヨコ夫人の想いそのものでもあり、、、つくづく監督の卒業制作だったんだなぁ、と思うわけです。
堅いのも、柔らかいのも、さまざまな展開が可能なまでに育ち、魅力的なキャラクターを持っているのがエヴァである。これまでのようにどっぷりではないかもしれないが、心の片隅で応援したいと思う。
<おまけ>
私が愛して止まないスーパーポテサラアニメさん。
これが新喜劇エヴァンゲリオンか。
