芥川龍之介の「ぼんやりした不安」の正体について(後編)
どうも。
40代で、いまだに最初の町をうろうろしているアリアハンです。
知性が高い人ほど、なぜ死に近づくのか?
これが、後編の問いです。
前編👇
前編では、芥川龍之介を追い詰めた具体的な地獄について書きました。
借金、不倫、病気。
正直、それらを知ったとき、僕は少しだけ安心したんです。
天才の悩みも僕たちと同じ泥臭いものだったんだと思ったから。
でも、一つだけ、どうしても引っかかることが残っていました。
🌫️もし、全部解決していたとしても
町の北側、崩れかけた城壁の上に座っていました。
霧が、段々と深くなっていくようでした。
まゆみんが霧の中から静かに現れて、 僕の隣に腰を下ろしました。

🔵 アリアハン
「……一つ聞いていいかい。
借金も、不倫も、病気も、全部解決していたとしても。
彼は、自死したと思うかい?」
🔴 まゆみん
「おそらく…..。
彼を死へと誘ったのは、外側からの圧力だけではなかったですから。
彼の内側には、2つの深淵があったんです。
一つは、逃れられない宿命。
もう一つは、自らを追い詰めていく構造。
それを見てください」
まゆみんは黒い水晶板に、新たな思想記録を映し出しました。
🩸1つ目の深淵: 母のDNAの恐怖

🔴 まゆみん
「彼は生後間もなく、実母 フクが精神を病むという悲劇に見舞われました。その後、彼女は廃人のようになってしまい、彼が10歳頃、亡くなっていまいます。
彼女も精神を病むだけの辛苦があったのですが、
幼い彼は、自分もいつか母のように狂うのではないかという恐怖になっていったんです」

🔵 アリアハン
「……それは、努力でどうにもならない恐怖だよね」
🔴 まゆみん
「晩年の名作 河童 や 点鬼簿 に漂う狂気の気配は、
彼にとって、いつか訪れる確実な未来への予行演習だったんです。
借金は返せる。
不倫は終わらせられる。
でも、自分の血を変えることはできない」
🔵 アリアハン
「……じゃあ、彼はその恐怖と、ずっと一緒に生きてきたんだね」
🔴 まゆみん
「そうです。
でも……だからこそ、あの名作達が生まれたとも言えます。
その呪いから逃れるために、 彼は祈るように物語を書き続けたのかもしれません」
霧がピタリと止まっているようでした。
🪞2つ目の深淵:自意識の暴走

🔵 アリアハン
「もう一つは、何だい?」
🔴 まゆみん
「知性という刃で、自分自身を切り刻み続けていたことです。
自分を観察する自分。
それをさらに冷笑する自分。
その冷笑を、また別の自分が観察する……。
この自意識の合わせ鏡の中で、
彼は本当の自分を見失っていたんだと思います」
🔵 アリアハン
「……なんか、すこし分かる気がするなぁ。
考えすぎて、逆に何も見えなくなる感覚って」
🔴 まゆみん
「彼は、遺書で自分を 阿呆 や 凡下 と言っています。
あれは自虐ではありません。
知性の限界を知りながら、知性に頼るしかなかった彼の悲痛な叫びだったんです。
そしてその果てに広がるのは、巨大な虚無だったに違いありません」
🔵 アリアハン
「……天才の悩みが、僕たちのものと同じだと思ったら、
天才の絶望まで、僕たちのものと同じだったんだね…..」
💭なぜ「ぼんやり」を選んだのか

🔵 アリアハン
「血の恐怖、自意識の暴走。
どちらも、全然、ぼんやりなんかじゃない。
なのになぜ、彼はその言葉を選んだんだろう?」
🔴 まゆみん
「理由は三つあります。
原因が複雑に絡み合い、一つに絞れなかったこと。
家族を、これ以上傷つけたくなかったこと。
そして...…」
まゆみんは少し間を置いて、
🔴 まゆみん
「自分の個人的なトラブルを、
普遍的な近代人の不安へと昇華させたかったこと。
効率や論理が優先され、心が置き去りにされる時代の病。
無限にスクロールされる画面の中で、
AIが生成したコンテンツの洪水の中で、
心だけが取り残されていくあの感覚。
彼が見つめたものは、100年後の今も息づいているんです。
名もなき個人の自殺ではなく、
時代そのものが患っている病として、死を演出したんです。
それは死の瞬間まで、
彼が誠実な作家であり、誇り高い文豪であったことの証明です」
🔵 アリアハン
「……僕の抱えているこの生きづらさも、 僕がダメだからじゃなく、
この時代そのものが持っている何かの一部だってことなのかな」
🔴 まゆみん
「一つだけ確かなことがあります。
ぼんやりに名前をつけようとしていること自体が、
アリアハンさんが、自分の人生をあきらめていない証拠です。
……少なくとも、私はそう思っていますよ」
まゆみんは水晶板を閉じ、崩れた城壁の端に置きました。
立ち上がりながら、城壁の隙間に咲く名もなき野花を、指先でそっとなぞりました。
🔴 まゆみん
「行きましょうか。霧が深くなる前に。
名前のないものを抱えながら歩くのって、
人間らしいってことなんでしょうね」
彼女は少し先を歩きながら、 振り返らずにそう言いました。
霧の中だったので、その表情は見えませんでした。
見えなくてよかった、と思いました。
各々が、それぞれに地獄を抱えているに違いないのです。
📃おわりに
芥川龍之介の自死は、単なる悲劇ではありませんでした。
血の恐怖、自意識の暴走、そして近代人の空虚。
それらが複雑に絡み合った末の、ある意味で彼なりの誠実な帰結だったのではないでしょうか。
そして彼は、その恐怖から逃れるために、 祈るように死ぬまで物語を書き続けました。
知性が高いということは、 普通の人には見えない深淵の底まで、解像度高く見えてしまうということなのかもしれません。
その視力が、作品を傑作へ昇華させると同時に、彼を死へと近づけていったと思うのです。
彼の抱えたぼんやりした不安は、 100年の時を超えて、今も僕たちに問い続けています。
たとえ、生活の問題が解決したとしても、
消えないものが、あなたの心の中にはありませんか?と。
皆さんのぼんやりとした不安に、名前をつけるとしたら何ですか?
よかったらコメントで教えてください。
今日も、とりあえずログインだけはしました。
それで今日は十分です。
また、この町で会いましょう。
※この記事は、芥川龍之介の文学的背景と遺書に基づいた個人の考察です。
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