芥川龍之介の「ぼんやりした不安」の正体について(前編)
どうも。
40代で、いまだに最初の町をうろうろしているアリアハンです。
朝が来るのが怖いと感じたことがある方は、かなり多いのではないでしょうか。
おそらくその恐怖は、
具体的に何がというものではなく、
何と言うか、漠然としていて、
輪郭のない霧のようなものの場合が多いのではないでしょうか。
「ぼんやりした不安」
約100年前に35歳で自らの人生を終了させた
天才・芥川龍之介が遺したこの言葉に、
僕はどこか救いの様な気持ちを感じていました。
天才の芥川でもそうなんだから、
僕のこの停滞も、高尚な悩みの一種なんじゃないかって。
そんな風に、自分を甘やかしていたのかもしれません。
ですが、調べてみると、
芥川が「ぼんやり」という言葉で包み隠し、
死ぬ瞬間まで守ろうとしたのは、
実は普通の人と同じ、救いようのない生活の泥沼だったことが分かりました。
💡 この記事で掘り下げること
❶ 文豪が死の直前まで隠し通そうとした、醜いトラブルの数々
❷ ぼんやりというオブラートなしには、耐えられなかった現実の重圧
❸ 理由のない不安と呼んでいるものの正体





🏛️ 止まった時計塔の下で、地獄を覗く
町の中央広場にある、
動かない時計塔の影に座っていました。
鳩が石畳を突く、乾いた音だけが響く午後。
僕は、自分の人生がこの時計のように止まっていることへの、
言葉にできない焦燥を、静かに噛み締めていました。

🔴 まゆみん
「……アリアハンさん。
またそうやって、自分の停滞に文学的な結びつきをつけて、悲劇のヒーローのような顔をしていますね」
聞き慣れた、涼やかで少し冷たい声。
まゆみんです。
彼女は僕の隣に腰を下ろし、黒い水晶板を差し出しました。
そこに映しだされたのは、芥川龍之介という男が最晩年に直面していた、
目を背けたくなるほど生々しい具体的な地獄の記録でした。
🔵 アリアハン
「まゆみん……
芥川龍之介は、ぼんやりした不安を苦にして死んだんだろ?
それは、知性が高すぎるゆえの、実存的な悩みだったんじゃないのかい?」
🔴 まゆみん
「それは、彼がかけた魔法に、
アリアハンさんがまんまと引っかかっているだけです。
この文字を見てください。
彼の遺書に記された言葉の裏にある、本当の風景を」
以下は、芥川龍之介が、親友・久米正雄に宛てた遺書として有名な「或旧友へ送る手記」を、現代風に要約したものです。
死ぬ理由は、これといった一つじゃない。
これまでの人生の積み重ね、そのすべてを精算するために死ぬんだ。
世間は、お金がないからとか、病気だからと理由をつけたがるけど、そんな単純な話じゃない。
強いて言うなら、将来に対する、ただ、ぼんやりとした不安。
ああ、それから、29歳の時に人妻(秀しげ子)と不倫したことは、僕の人生で最悪の汚点だった。
僕はもう、自分自身を客観的に眺めることにも、生きることにも疲れてしまったんだ。
🔑 文豪の持っていた地獄とは
水晶板が映し出したのは、
芥川を追い詰めていった3つの具体的な地獄でした。
① 秀しげ子という泥沼
芥川は29歳の時、人妻である秀しげ子と不倫関係になりました。
しかしこの恋は、甘美なものではなく、
執拗なストーカー行為へと変貌していきます。
彼女は、子供の父親は芥川だ、と主張し、
子連れで自宅にまで押し寄せました。

潔癖でプライドの高い彼にとって、
醜い私生活が世間に晒される恐怖は、発狂に近い苦痛だったはずです。
② 家族7人の重圧と義兄の自殺
1927年、追い打ちをかけるような事件が起きました。
義理の兄が放火容疑で自殺し、多額の借金が芥川の肩にのしかかったのです。
さらに彼は、妻や3人の子供、叔母など、大家族7人を養う義務を負っていました。
文豪という華やかなイメージの裏で、
彼は常にお金と、家族の重荷で苦しんでいたのです。
書けど書けど、お金に困り、心身が消耗していく日々。
③ 薬物依存という悲鳴
そんな生活で、慢性的な不眠、胃腸障害、神経衰弱となり、
睡眠薬や、アヘンチンキなしでは、生きられない状態になっていました。
友人の斎藤茂吉が処方を拒否するほど、
既にその身体は内側からボロボロに崩壊していたのです。
💭あなたの「ぼんやり」も逃げ場に過ぎない

🔵 アリアハン
「……不倫に、借金に、薬漬け。
全然、ぼんやりなんかじゃないね。
これ以上ないくらい具体的で、
ドロドロした生活のトラブルそのものじゃないか」
🔴 まゆみん
「その通りです。
松本清張は、こう言っていますよ。
『芥川は、これらの世俗的でカッコ悪いトラブルを死の理由にするのが、耐えられなかった。だから彼は、死の間際まで文豪としてのプライドを守るために、ぼんやりした不安という言葉で現実をコーティングしたんです』って」
まゆみんは僕の目をまっすぐに見据え、言葉を継ぎました。
🔴 まゆみん
「アリアハンさんも同じですよ。
アリアハンさんが、理由がわからないけれど重たい、と言っているその不安の霧を一度丁寧に分析してみたらどうですか?
そこにあるのは、前職で燃え尽きた情けなさや、再就職から逃げ続けている自分、親の期待に応えられなかった負い目といった、直視したくない具体的な事実の集積なんじゃないですか」
🔵 アリアハン
「……ぼんやりさせておいたほうが、
まだ、自分を保っていられる気がしたんだ。
それがただの逃げだとしても」
🔴 まゆみん
「具体的な地獄を認めることは、
自分が、特別な人間ではなく、
ただの泥沼に立つ人間であることを認めることですから。
でもね、アリアハンさん……」
まゆみんの声が、ほんの少しだけトーンを落としました。
彼女は時計塔の影が伸びる石畳の上で、自分の足元をじっと見つめました。

🔴 まゆみん
「……泥沼に立っていることを認めた人間だけが、
泥の感触を知ることができるんですよ。
それは、鏡の中の綺麗な自分を眺めているより、
ずっと孤独で、ずっと人間らしいですよ」
彼女が立ち上がるとき、一瞬だけ僕の肩に手が触れました。
その温度だけを残して、彼女は広場の方へと歩き出しました。
📃 おわりに
芥川龍之介を追い詰めたのは、高尚な哲学ではありませんでした。
それは、僕と同じ、不器用な生き方から生じた生活の重みそのものでした。
けれど、なぜ彼は、これほどの地獄を名指しせず、
あえてぼんやりという言葉を最期に選んで逝ったのでしょうか。
その理由は、単なる見栄ではありませんでした。
そこには、彼の血筋に刻まれた、ある恐ろしい予言と、
知性という刃で自分を切り刻み続けた自意識の暴走があったんです。
この物語は、まだ半分です。
次回、後編では、 芥川が最後に見た、
真の深淵へと足を踏み入れます。
❶ 今、不安という言葉で覆い隠している具体的な不都合は何ですか?
❷ その具体的な地獄を認めるのと、今のまま、ぼんやりし続けるのと、どちらが怖いですか?
コメントで教えてください。
今日も、とりあえずログインだけはしました。
それで今日は十分です。
また、この町で会いましょう。
後編👇
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