残月村の異聞│よっつめ
ひくっ、ひくっ。
足の指が勝手に動いた。
慣れない山道だ。
きっと疲労のせいだろう。
ガクッ。
今度は膝がぐらつく。
地面の根に足を取られ、そのまま片膝をついた。
――はぁ……。
――はぁ……。
息が切れる。
長いこと歩いているからだ。
くらっ。
頭を揺さぶられたように視界が大きくぶれた。
ぐらり。
身体が傾き、堪らず両手を地面につく。
そこで気がついた。
爪が薄く青紫色に変色している。
――なんだ……?
霞む視界の中、何度も目をこすった。
だが、焦点はまったく定まらない。
そこで、先ほど蛇に噛まれたことが頭をよぎった。
――まさか、あれは毒蛇だったのか……?
ピクッ、ピクッ。
今度は指先が勝手に震えだした。
――止まれ……!
――止まれよ!
震える手を押さえつける。
だが、今度は全身に寒気が走った。
そこで初めて、自分の身体に熱とだるさがこもっていることを実感した。
――嘘だろう…?
立ち上がろうとした。
だが、足に力が入らない。
――冗談じゃない!
何度も身体に力を込める。
だが、そのたびに身体は地面に叩きつけられた。
ポタッ、ポタッ。
汗が地面へ落ち、黒い染みを作る。
――うぐっ!
顎を地面ヘ強かに打ちつけた。
だが、痛みを感じない。
――嫌だ。
――早く、村に……!
俺は這うように山道を進む。
前へ。
前へ。
爪の間に土が入り込み、ついには剥がれた。
だが、痛みを感じない。
石を掴んだ指先から血が滲む。
それでも前ヘ進んだ。
やがて、指先さえ動かなくなる。
――だ、誰か……。
腹這いのまま俺は、地面越しに自分の鼓動を感じた。
トクン。
トクン。
その時、別の振動が伝わってくる。
点のようになった狭い視界の向こう。
こちらへ向かってくる人影を見つける。
――助かる!
力の限り首をもたげた、その時――。
地面に血が散った。
よっつめ、山に捨てられた人形は、キリキリと大蛇にとぐろを巻かれました
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